基礎から学ぶ「外国語教授法」 Part 1

基礎から学ぶ

なぜ、過去の外国語教授法を学ぶのか?

日本語教育能力検定試験の中でも、「外国語教授法」や「日本語教育史」は丸暗記でもどうにかなってしまう分野です。
なかには、「今は使われていない教授法だし…」とモチベーションが上がらない場合もあるかもしれません。

しかし、過去の教授法で今は使われないものであっても、その時代に生まれた必然性と一定の教育効果は認められます。

「今は使われていない」と一蹴してしまうのではなく、社会的な背景や関連する理論と合わせて理解していくようにしていきましょう。
それが、日本語教師としての言語観・言語学習観を養っていくことにもつながります。

本記事の活用方法

「ゼロから学習スタート!」という方へ

できる限り、内容を端的にした「読み物」として作成しています。
「外国語教授法」は時代背景と流れを理解することが重要なので、まずは読み流してみてください。

最後に、要点をまとめたスライドを掲載しています。
内容がスッと入ってきたら、理解が進んでいる証拠です。
ダメ押しでもう1周読んでいただくと、単なる用語の暗記ではない形での記憶として頭に残るはずです。

「復習として取り組む」という方へ

まず、最後のスライドを見ていただき、全体観を把握するようにしてみましょう。
その後、最初から読み進めていってください。

用語自体は既知のものが多いと思います。
大切なのは、「実際に試験・現場で使える知識になっているか?」「日本語教師としての知見となったか?」です。

自身が「日本語教師を目指す人に伝えるとしたら、どのように話すか?」という観点で取り組むのも、面白いかもしれません。

19世紀半ばまでは「文法訳読法」の一強時代

前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。

ヨーロッパで、グラマー・スクールによる教育が始まったのが16世紀ごろだと言われています。

世界史で16世紀と言えば、ルネサンスと宗教改革ですね。
地動説が発表されるなど、新しい世界観が生まれていった時代です。
(日本は室町時代後期なので、内戦の続く戦国時代でした。)

当時のヨーロッパにおける外国語教授法は、「文法訳読法」と呼ばれるものでした。
英語だと「Grammar Translation Method」、略して「GTM」とも呼ばれます。
(「文法翻訳法」「対訳法」という名称で記載されていることもあります。)

「外国語教授法」といっても最初から様々な言語におけるものだったわけではなく、伝統的に行われていた「ラテン語教育」からスタートしたものです。

16世紀当時は、エリートである宗教家や学者の共通言語が「ラテン語」であり、ラテン語の文献を読んだり、ラテン語での聖職者の演説を聞き取れることがエリートの一員となるための条件だったからです。

…とはいえ、「ラテン語」の天下がずっと続いていたわけではありません。

16世紀当時のグラマー・スクールで行われていたラテン語の授業では、「文学作品や聖書の翻訳による理解」が行われていました。

参考書などで語られる「文法訳読法」は、この時代に注目したものが多いですね。
● 文法規則の説明
● 対訳による単語の理解
● 翻訳による内容理解
といった指導を中心に行っていました。
「辞書を使って翻訳し、読解力をつける」ことが目的です。

時代が進み、18世紀半ばから19世紀半ば頃です。
産業革命の影響で鉄道網が整備され、次第に人の往来が盛んになりました。
(日本は江戸時代中期から後期なので、田沼意次や寛政の改革の頃です。)

この頃になると、ヨーロッパの共通語はラテン語だけでなく、英語・ドイツ語・フランス語などが取り入れられていきます。
それに伴い、ラテン語教育の立ち位置も、翻訳による文書作成といった実用的なものから、文学作品の理解・鑑賞といった教養的なものに移っていきました。
人の往来が盛んになったことで、異なる言語を話す人とのコミュニケーションが増え、外国語学習を必要とするのが限られたエリートたちだけではなくなったのです。

ここで、ようやく「文法訳読法」以外の教授法が台頭してきます。
後に「直接法」と呼ばれる「ナチュラル・メソッド」の登場です。

「ナチュラル・メソッド」については、次回の記事でご案内します。
ここまでの「文法訳読法」について整理しておきましょう。

いかがでしたか…?

ついつい「単語カードによる、一問一答!」でこなしてしまいがちな「外国語教授法」ですが、社会的な背景をセットにすると、より使える知識になった実感が湧いてくるのではないかと思います。

「10分以内で内容を把握できること」を目標としているので、本記事はここまでとします。
次回は、「文法訳読法」への批判から生まれた「ナチュラル・メソッド」について説明していきます。

次の記事はこちら

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