基礎から学ぶ「外国語教授法」 Part 2

基礎から学ぶ

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本記事の活用方法

「ゼロから学習スタート!」という方へ

できる限り、内容を端的にした「読み物」として作成しています。
「外国語教授法」は時代背景と流れを理解することが重要なので、まずは読み流してみてください。

最後に、要点をまとめたスライドを掲載しています。
内容がスッと入ってきたら、理解が進んでいる証拠です。
ダメ押しでもう1周読んでいただくと、単なる用語の暗記ではない形での記憶として頭に残るはずです。

「復習として取り組む」という方へ

まず、最後のスライドを見ていただき、全体観を把握するようにしてみましょう。
その後、最初から読み進めていってください。

用語自体は既知のものが多いと思います。
大切なのは、「実際に試験・現場で使える知識になっているか?」「日本語教師としての知見となったか?」です。

自身が「日本語教師を目指す人に伝えるとしたら、どのように話すか?」という観点で取り組むのも、面白いかもしれません。

「ナチュラル・メソッド」の登場

「翻訳中心の授業では、音声面での能力が身に付かない」という文法訳読法への批判から、「ナチュラル・メソッド」が生まれました。

時代は、19世紀半ば。
産業革命の影響による交通機関の発達で人の往来が盛んになったことにより、異なる言語での対面コミュニケーションが求められていたことが背景にあります。

「ナチュラル・メソッド(Nsatural Method)」とは、外国語習得の1番良いモデルを「幼児の母語習得過程」とする教授法全般のことです。
(「自然主義教授法」という名称で記載されていることもあります。)

「文法訳読法では、会話力が醸成されない」という批判から、「音声」を重視した会話力の習得を目的にしています。

幼児は、母語を「聞く」→「話す」→「読む」→「書く」の順に習得しています。
この4技能のうち、「聞く」「話す」の音声部分の習得過程に注目したのが「ナチュラル・メソッド」です。

代表的な教授法は2つ。
「グアン・メソッド」「ベルリッツ・メソッド」です。
どちらも「音声」を重視した「ナチュラル・メソッド」に分類されるので大枠としては似ているのですが、実際の指導方法を中心に違いが見られます。

それぞれ、内容を確認していきましょう。

「グアン・メソッド」とは?

まずは、1つ目。
「グアン・メソッド」です。
その名の通り、フレランス人のフランソワ・グアンが提唱しました。
(後述しますが、「サイコロジカル・メソッド」「シリーズ・メソッド」と呼ばれることもあります。)

幼児が母語に触れるときと同じように、「聞いて理解する」ところから学習がスタートします。
最終的なゴールは「話せるようになること」です。
幼児が母語を覚えるのと同様に、できる限り自然な状況で目標言語と接触できるようにしていました。
(このように幼児の心理発達に注目することから「サイコロジカル・メソッド」とも呼ばれています。)

特徴は「動詞」を重視しており、一連の動作を順に追って言い表していくことが1番記憶に残りやすいとしていることです。
 ① 机の方へ向かう
 ② 机の近くに立つ
 ③ 椅子を引く
 ④ 椅子に座る
 ⑤ ノートを開く
 ⑥ ペンを持つ
 ⑦ ノートに字を書く
のようなイメージで、全ての出来事は、小さい出来事の連鎖(シリーズ)として記述できるとしています。
実際の授業でも、教師が一連の動作をしながら発音し、学習者がそれを反復する方法を取って覚えていく練習をしていました。
(このように物事を動作の連続体として捉えることから「シリーズ・メソッド」とも呼ばれています。)

「グアン・メソッド」は、日本語教育史の分野でもチラッと出てきます。

台湾などにおける日本語教育において、山口喜一郎が「グアン・メソッド」を年少者向けに改良した「山口式直接法」として実践しました。
この山口喜一郎は日本支配下の植民地や占領地で国語講習員として尽力した人物です。
外国語としての日本語教育に携わりながら、教授法の理論研究と実践を行ったとされています。

また、東京府知事より私立の各種学校の認可を初めて受けた日本語学校は「日語学校」です。
この「日語学校」は松田一橘(いさお)が開いていた日本語学校がモデルとなっています。
松田一橘は「グアン・メソッド」の影響を強く受けており、それをモデルとした「日語学校」もその影響を受けていたと考えられています。

参考はこちら

「ベルリッツ・メソッド」とは?

2つ目、「ベルリッツ・メソッド」です。
幼少期にドイツからアメリカに渡ったマキシミリアン・ベルリッツが提唱しました。

日本にも各地にベルリッツ・スクールがありますね。
ベルリッツがロードアイランド州に設立したドイツ語とフランス語の学校が前身です。

ベルリッツ・メソッドも、外国語習得に母語習得の過程を再現しようとしたのは同じです。
違うのは、ベルリッツ・メソッドでは「教室活動から、母語を徹底的に排除したこと」です。

実際の授業は、母語による文法説明は行わず、語彙や文法の意味理解は
● 絵カード
● レアリア(生教材)
● ジェスチャー
● 目標言語による例文
などで習得していきます。
発音も、教師のモデルをまねさせるだけで、発音方法の説明や矯正は行われませんでした。
「グアン・メソッド」よりも「話す」部分に重点を置いた教授法だと言えます。

より「文法訳読法」への批判色が強いため、翻訳は排除されています。
そのため、訓練を受けたネイティブスピーカーが指導に当たるのが原則です。

「グアン・メソッド」「ベルリッツ・メソッド」ともに母語習得過程をモデルとした口頭言語能力(聞く・話す)の育成を目指す立場であり、20世紀ごろからの各種直接法へ発展しています。

各種直接法については、次の記事でご案内します。
ここまでの「ナチュラル・メソッド」について整理しておきましょう。

いかがでしたか…?

ついつい「単語カードによる、一問一答!」でこなしてしまいがちな「外国語教授法」ですが、社会的な背景やどのような言語観・教授法への批判かをセットにすると、より使える知識になった実感が湧いてくるのではないかと思います。

本記事はここまでとします。
次回は、「ナチュラル・メソッド」への批判から発展した20世紀の各種直接法について説明していきます。

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