
日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド 第5版(赤本)における
第1部 言語一般
第1章 文法体系① 日本語教育における品詞
③
の解説をしていきます。
P194の問題を解いてから、読み進めていってください。
前の問題はこちら
「属性形容詞」と「感情形容詞」
小中学校で習ってきた文法では「形容詞」とは、「美しい」「汚い」「明るい」「暗い」のように「~い」で終わるものだけを指していました。
日本語教育では
「美しい」などの形容詞 → イ形容詞
「きれいだ」などの形容動詞 → ナ形容詞
と呼称しますが、イ形容詞とナ形容詞をひっくるめて「形容詞」と呼ぶこともあります。
この「形容詞(イ形容詞+ナ形容詞)」の分類の1つに、「属性形容詞」「感情形容詞」があります。
「属性形容詞」は、人や物の性質や状態がどのような属性なのかを表す形容詞です。
彼は、明るい性格だ。
(どのようなタイプの性格なのか?)
ここに、きれいな本が2本あります。
(どのような性質の本なのか?)
「感情形容詞」は、人の感情や感覚を表す形容詞です。
彼と過ごした時間は、楽しかった。
彼がどのように過ごしているか、心配だ。
赤本ではP33にさらっと記載があるのですが、
感情形容詞は、主語が一人称でない場合はそのままでは述語に使えない
ことが超重要ポイントです。
◎ 私は、彼に会えてとても嬉しい。
主語が1人称の場合、述語に感情形容詞を使っても違和感はないですね。
× あなたは、私に会えてとても嬉しい。
× 彼は、私に会えてとても嬉しい。
…なんだか、急に傲慢な感じになりました。
感情形容詞は、その名の通り人の感情や感覚を表すため、自分自身のことでないと使えないという制約があるんです。
それでは、主語が一人称でない場合は絶対に感情形容詞は使えないのか?というと、そうではありません。
◎ あなたは、私に会えてとても嬉しそうだ。
◎ 彼は、私に会えてとても嬉しいらしい。
のように、「~そうだ」「~らしい」にすれば文が成立します。
この観点は、令和元年度試験でも出題されているのでチェックしておきましょう。
確認問題の解説
(1) b 感情形容詞
「かゆい」は、「私」が目の状態についてどのように感じているかを表しています。
これは「感情形容詞」です。
(2) b 感情形容詞
「苦手だ」は、「私」が数学に対してどのように感じているかを表しています。
これは「感情形容詞」です。
(3) a 属性形容詞
「華やかだ」は、「店の雰囲気」がどのような属性なのかを表しています。
これは、「属性形容詞」です。
(4) a 属性形容詞
「重々しい」は、「式典の雰囲気」がどのような属性なのかを表しています。
これは「属性形容詞」です。
(5) b 感情形容詞
この問題だけ、微妙なラインをついてきていますね…!!
「まぶしい」は、「太陽」がどのような属性なのかを表している…となるかもしれませんが、これは「感情形容詞」です。
寝不足な「私」が見ているからまぶしいだけであって、睡眠十分な別の人が見たら、穏やかな日の光なのかもしれません。
この「まぶしい」は、太陽の属性ではなく、太陽を見て「私」がどのように感じているかです。
ちなみに、今回の問題は「寝不足で」がなかったら「属性形容詞」「感情形容詞」の区別をつけることはできません。
(4)も「軽い気持ちで参加したら、思っていたよりも式典の雰囲気が重々しい」という文脈であれば、同じ「重々しい」でも「感情形容詞」だと判断することができます。