
今回は、日本語教育能力検定試験の出題範囲の中でも苦手としている方の多い「文法」分野のおススメ学習法をご紹介していきます。
日本語教師たるもの、肴として語ることができる文法カテゴリーの1つや2つは持っていた方が良いですよね。
ちなみに、私は「複文」が大好きです。
日本語教育能力検定試験における「言語」分野
日本語教育能検定試験における「言語(旧:言語一般)」分野は
① 文法
② 音声
③ 一般・対照言語学
に大きく分類することができます。
今回は「① 文法」のおススメ学習法について、ご紹介していきます。
日本語教師を目指す上で、
・ 国語が嫌い
・ 外国語学習が嫌い
という方は少ないかと思います。
それでも、日本語教育能力検定試験の出題範囲の中で苦手な分野を聞くと「文法」を挙げる方が断トツで多いです。
「文法」に苦手意識がある方は、以下のいずれかに当てはまるのではないでしょうか?
・ なんとなく解けるが、言語化できていない
・ 国語教育の文法と日本語教育の文法の差が埋められていない
・ 「ガ格」「従属節」などの文法用語に抵抗感がある
他の出題範囲と違い、「文法」は多かれ少なかれ知識のベースはあるはず…!!
いずれにせよ必要なのは、頭の中でバラバラとしてしまっている知識を体系立てて整理することです。
体系立てるためには、「ガ格」「従属節」などの「用語」が欠かせません。
「用語」そのものを学習者(特に初級学習者)に伝えることはないのですが、効率良く進めていくためにも、抵抗感を持たずに「用語」を使って整理するようにしていきましょう。
【文法編】おススメの問題集
スリーエーネットワークの「考えて 解いて 学ぶ日本語教育の文法」がおススメです。
考えて 解いて 学ぶ日本語教育の文法
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私の母校の先生の本です。
私が日本語教育能力検定試験を受験したのは「2008年」なので、まだ出版されていなかったのですが、できることなら受験時に出会いたかった本です。
「問題を解いて考える」ということに焦点が当たっているので、「わかったつもり」にならずに知識の定着を図ることができます。
各分野満遍なく学習でき、分量もちょうど良いです。
ゼロスタートの方は、この問題集から始めてみましょう。
文法書にありがちな堅苦しい文体ではないため、初学者でも大きな抵抗なく取り組めます。
要望を上げるとしたら……もう少し問題演習の量が増えると良いですね。
個人的には、ゴリゴリと問題で慣れていきたいです。
余談ですが、著者の原沢先生の本は、初学者向けの読みやすいものが多いです。
日本語教師のための入門言語学 演習と解説
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日本人のための日本語文法入門
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また、「考えて 解いて 学ぶ日本語文法」の出版元である「スリーエーネットワーク」は、合格後もお世話になることが多い出版社です。
いろいろな本を渡り歩いてみると「これ、同じ著者だったんだ…!!」「この出版社の本が、個人的に好き」といった気づきもあるので、ぜひ意識してみてください。
【文法編】おススメの参考書
くろしお出版の「現代日本語文法」シリーズがおススメです。
現代日本語文法① 第1部 総論 第2部形態論
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現代日本語文法② 第3部 格と構文 第4部 ヴォイス
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現代日本語文法③ 第5部 アスペクト 第6部 テンス 第7部 肯否
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現代日本語文法④ 第8部 モダリティ
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現代日本語文法⑤ 第9部 とりたて 第10部 主題
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現代日本語文法⑥ 第11部 複文
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現代日本語文法⑦ 第12部 談話 第13部 待遇表現
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△ 日本語を教えるための文法書
ではなく、
〇 日本語教師が地力をつけるための文法書
という位置づけのイメージです。
日本語教育能力検定試験で出題される文法問題は、ほぼこのシリーズで調べれば解決します。
試験合格後もバイブルとして使い続けられる参考書だと言えます。
この参考書が良いのは、例文が豊富にのっていることです。
過去問をやってみると実感できるのですが、「適切な例文を作ることができる」のは非常に強いアドバンテージになります。
1番のネックは、執筆時点で定価(税抜)が1冊2,800円することです。
通信教育などを受けるよりは安く済みますが、全巻一気に揃えるのも勇気がいるかと思います。
シリーズではありますが各巻は独立しているため、1巻から順番に買わなければいけないわけではありません。
1巻が約300ページあるので、律儀に①から順に始めると挫折しやすくなります。
優先順位の例を3つご紹介するので、自身に合うものを選択してみてください。
【パターン1】出題が多い分野から購入していく。
特に「②格と構文」「⑥複文」は出題のバリエーションが多い分野なので、まずはこの2冊から始めてみましょう。
優先度順に並べると、以下のイメージです。
現代日本語文法② 第3部 格と構文 第4部 ヴォイス
https://amzn.to/3Jxq9l5
↓
現代日本語文法⑥ 第11部 複文
https://amzn.to/3zyDV2g
↓
現代日本語文法③ 第5部 アスペクト 第6部 テンス 第7部 肯否
https://amzn.to/3OSsA2V
↓
現代日本語文法⑦ 第12部 談話 第13部 待遇表現
https://amzn.to/3Q3RVrV
【パターン2】目次を見て、ピンとこない分野から購入していく。
すべての巻の最後に「現代日本語文法総目次」が掲載されています。
上の①~⑦全巻の目次が一覧で確認できるので、記載されている題目で苦手意識がある巻から購入していきましょう。
【パターン3】過去問を解いて、間違いの多い分野から購入していく。
1番本質的な学習方法は、このパターンです。
「苦手分野を正確に把握して、それを潰していく」のが試験勉強の王道だからです。
過去問にチャレンジする時期が早ければ早いほど、効率良く学習を進めることができます。
……とはいえ、なかなか過去問に踏み込む勇気がないかも、という方が多いのも事実です。
過去問への取り組みが後ろにズレ込んでしまった場合、パターン3は危険です。
試験が近づいたときに、成果が見えづらい「言語」分野に時間を割くことは不安感を募らせることにつながってしまうからです。
「過去問から取り組む」とできる方はパターン3を、そうでない方はパターン1 or 2をおススメします。
【文法編】おススメの学習スケジュール
① 「考えて 解いて 学ぶ日本語教育の文法」に取り組む。
目安は、1週間です。
ここでは「知識のベースを作って、初見の問題を減らす」ことが目的なので、完璧を目指すことはしません。
「解く→解説を読んで理解する」のスピードを意識していきましょう。
② 過去問に取り組む。
各年度の
・ 試験Ⅰ 問題1 (1)以外
・ 試験Ⅰ 問題2
・ 試験Ⅰ 問題3A~D
を横串で解いていきます。
最低3年、可能であれば5年分にチャレンジしましょう。
ここでは「その答えを選んだ理由」まで完璧に仕上げていきます。
正解できた問題でも、答えに至るまでの過程が適切でなければ本番での「再現性」がないからです。
各年度の解説は、以下を参考にしてみてください。
③ 「現代日本語文法」で知識を整理していく
問題にチャレンジしたタイミングが、1番知識が頭に染み込みやすいです。
パラパラとでも良いので、「現代日本語文法」の該当箇所を読んで理解を深めていきましょう。
「なんとなく問題が解ける」から「これが正解になる理由まで説明できる」にレベルアップすると、どんどん学習が加速していきます。
「文法」は奥が深く、合格したあとも付き合い続けていく分野です。
勉強することが苦痛にならないように、楽しく学習していきましょう。