「文型」の基礎知識【日本語教育能力検定試験 過去問を解くための準備運動】

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「日本語」を基礎から、もう1度

日本語を基礎から学ぶ方・学び直す方向けの講座です。

「こう教えてもらっていればわかったのに…」
を実現してくことを目的としています。

本講座では、主に

言語学全般

日本語文法

について取り扱っていきます。

日本語教育能力検定試験の学習のため

以外にも、

日本語教師としてレベルアップしていきたい

現場知識だけでなく、きちんと土台も固めておきたい

という方は、ぜひご一読ください。

こんなお悩みはありませんか?

例文を挙げられればわかるものの、なんとなく苦手意識がある…

いざ、模擬授業に臨もうとしたときに意外と理解できていないことに気づいた…

今回の記事では…

「文型」の問題を解くために必要な知識を一通り確認すること

を目標に解説していきます。

文型とは何か?

子どもが 大声で 泣いた。

この文の述語は「泣いた」ですね。

述語以外の要素は「子どもが」「大声で」の2つで、どちらも「名詞+格助詞」です。

「子どもが」のガ格は、述語「泣いた」の【主体】を表しています。
また、「大声で」のデ格は、述語「泣いた」の【様態】ですね。

このように、格助詞「が・を・に・へ・と・から・より・で・まで」を使って名詞と述語の間に成り立つ意味関係を表す文法的手段を「格」と言います。

文型を理解する上で知っておかなければならない知識なので、不安がある方は以下の記事を参照してみてください。

話を最初の例文に戻しましょう。

子どもが 大声で 泣いた。

この文の述語は「泣いた」で、それ以外の要素は「子どもが」「大声で」の2つです。

述語「泣いた」から見たときに、どちらかは絶対に外せないですね。
それは「子ども」「大声」のどちらでしょうか?

○ 子どもが 泣いた。

△ 大声で 泣いた。

上の文は問題ないですが、下の文は「え?誰が…?」となりますね。
述語「泣いた」にとって、結びつきが強く、文を作る上で必須となるのは「ガ格の名詞」だけです。
「どんな風に泣いたか?」のような【様態】を表す「デ格の名詞」は必須ではありません。

「必須となる名詞は何か?」は、述語によって異なります。

Aさんが Bさんに 直接 手紙を 送った。

であれば、述語「送った」にとって必須の名詞は
 ガ格の名詞:Aさん
 ニ格の名詞:Bさん
 ヲ格の名詞:手紙
の3つです。

一方で、

昨晩から 急に 吹雪いてきた。

であれば、述語「吹雪いてきた」にとって必須の名詞はありません。

このように、述語にとって必須となる名詞が取る格の組み合わせのこと「文型」と言います。

「送る」であれば、「が・に・を」文型
「吹雪く」であれば、「」文型
です。
(「」は、ゼロを表しています。)

どのような文型になるかは、述語に来る語によって決まります。

日本語で述語に来るのは、
 動詞
 形容詞(イ形容詞・ナ形容詞)
 名詞
の3つですね。

名詞文の文型は「私たちの先生だ」のように限られているので、
 動詞文
 形容詞文
について、解説していきます。

動詞の文型 0項動詞

「∅」文型

先週くらいから、急に春めいてきた

この文の述語は「春めいてきた」ですね。
名詞は「先週(くらい)」だけですが、これはなくても文章が成り立ちます。

このように、自然現象の発生や持続を表す動詞には、必須となる名詞が1つもないものがあります。

「春めく」であれば、その1語だけで「気候が」という主体がわかりますね。
自然現象の発生や持続を表す動詞が、このグループに属します。

自然現象の発生・持続を表す動詞
例:春めく・吹雪く・時雨れる・停電する

これらの動詞は、必要とする名詞の数がゼロなので「0項動詞」と呼びます。
後述しますが、必要とする名詞の数が1つの動詞が「1項動詞」、2つの動詞が「2項動詞」です。

動詞の文型 1項動詞

必要とする名詞の数が1つの動詞が「1項動詞」です。

「が」文型

① おばあさん ゆっくりと 歩いている

② いつのまにか 明けた

③ 横断幕 曲がっている

1項動詞の文型において、「ガ格」は述語の【主体】を表します。

① 「歩く」という動作の【主体】が「おばあさん」
② 「明ける」という変化の【主体】が「夜」
③ 「曲がっている」という状態の【主体】が「横断幕」
です。

それぞれ、

① 「が」が動作の主体を表す
例:歩く・走る・泳ぐ・泣く・笑う

② 「が」が変化の主体を表す
例:明ける・暮れる・壊れる・割れる・開く・閉まる

③ 「が」が状態の主体を表す
例:曲がっている・優れている・劣っている

などが該当します。

動詞の文型 2項動詞

必要とする名詞の数が2つの動詞が「2項動詞」です。

「が・を」文型

① Aさん 雑誌 読んでいる

② Aさん 雑誌 破いた

③ Aさん ついに 事件 起こした

④ 物的証拠 Aさんが犯人であること 示している

⑤ AさんBさんのこと 思い出した

⑥ Aさん 真相 話した

⑦ Aさん 現場 訪れた

⑧ Aさん 現場で 過ごした

「ガ格」はどれも【主体】を表していますが、「ヲ格」が表す内容は動詞によって異なります。

① 「が」が働きかけの主体を・「を」が対象を表し、対象が変化しない
例:読む・触る・叩く

② 「が」が働きかけの主体を・「を」が対象を表し、対象が変化する動詞
例:壊す・倒す・割る

③ 「が」が働きかけの主体を・「を」が働きかけによって出現する対象を表す
例:選ぶ・建てる・作成する

④ 「が」が関係の主体を・「を」が結びつけられる対象を表す
例:表す・意味する・指す

⑤ 「が」が心的活動の主体を・「を」が対象を表す
例:思い出す・尊敬する・嫌う

⑥ 「が」が言語活動や知覚の主体を・「を」が対象を表す
例:話す・聞く・見る

⑦ 「が」が移動の主体を・「を」が移動の目標としての対象を表す
例:訪れる・向かう・狙う

⑧ 「が」が主体を・「を」が経過する空間や時間を表す
例:過ごす・通る

「が・に」文型

① Aさん 観衆 呼びかけた

② 募金額 10万円達した

③ 時刻 8時 なった

④  一連の事件 関係していた。 

「ガ格」はどれも【主体】を表していますが、「ニ格」が表す内容は動詞によって異なります。

① 「が」が動作の主体を・「に」が方向性を持つ対象を表す
例:呼びかける・話しかける

② 「が」が移動の主体を・「に」が移動の着点を表す
例:達する・入る・(地面に)落ちる

③ 「が」が変化の主体を・「に」が変化の結果を表す
例:変わる・なる・戻る

④ 「が」が関係の主体を・「に」が基準としての相手を表す
例:関係する・値する・匹敵する

「が・と」文型

① Aさん Bさん 結婚した

②  なった

③ Aさんの髪型 いつも 違う

「ガ格」はどれも【主体】を表していますが、「ト格」が表す内容は動詞によって異なります。

① 「が」が動作の主体を・「と」がその動作にとって必須の相手を表す
例:結婚する・喧嘩する・別れる

② 「が」が変化の主体を・「と」が変化の結果を表す
例:変わる・なる

③ 「が」が関係の主体を・「と」が基準としての相手を表す
例:違う・異なる

「が・に」文型 「が・と」文型で両用の動詞

× Aさん Bさん 別れた
○ Aさん Bさん 別れた

「別れる」は、「が・に」文型では使用できず、「が・と」文型でのみ文が成り立ちます。

○ Aさん Bさん 会う
○ Aさん Bさん 会う

一方、「会う」は、「が・に」「が・と」のどちらの文型でも文が成り立ちますね。

このように、「が・と」文型をとる動詞には
 この文型しかとれないもの
 「が・に」文型もとることができるもの
の2種類があります。

「が・から」文型

① Aさん 部屋から 出てきた

② プロジェクトチーム 社内の有志から 出来上がった

「ガ格」はどれも【主体】を表していますが、「カラ格」が表す内容は動詞によって異なります。

① 「が」が移動の主体を・「から」が移動の起点を表す
例:出る・取れる・外れる

② 「が」が主体を・「から」が主体を成り立たせている成分を表す
例:できる・なる

「に・が」文型

① 教室 Aさん いる

② 引き出しの中 教科書 ある

③ あなた この問題 解けるだろうか

これまでのガ格は何かしらの【主体】を表してきましたが、「に・が」文型では【主体】を表すガ格は①のみで、②③のガ格は【対象】を表します。

① 「に」が存在の場所を・「が」が存在の主体を表す
例:ある・いる

②  「に」が所有の主体を・「が」が対象を表す
例:ある・いる

③ 「に」が能力や知覚の主体を・「が」能力や知覚の対象を表す
例:わかる・できる・解ける・聞こえる

動詞の文型 3項動詞

必要とする名詞の数が3つの動詞が「3項動詞」です。

「が・に・を」文型

① Aさん Bさん 手紙 送った

② Aさん Bさん メールアドレス 聞いた

③ Aさん 教科書 付箋 貼った

「ガ格」はどれも【主体】を表していますが、「二格」「ヲ格」が表す内容は動詞によって異なります。

① 「が」が主体を・「に」が着点を・「を」が移動する対象を表す
例:送る・やる・渡す

② 「が」が主体を・「に」が起点を・「を」が移動する対象を表す
例:聞く・もらう・教わる

③ 「が」が主体を・「に」が対象を・「を」が対象が移動して接触する場所を表す
例:貼る・取り付ける・掛ける

「が・を・に」文型

部長 Aさん 主任 した

「が」が主体を・「を」が変化する対象を・「に」が変化の結果を表す
例:する・変える・戻す

「が・から・を」文型

① Aさん カバンから 煙草 取り出した

② 審査員 応募作品から 最優秀賞 選んだ

「ガ格」はどれも【主体】を表していますが、「カラ格」「ヲ格」が表す内容は動詞によって異なります。

① 「が」が主体を・「から」が移動の起点を・「を」が移動する対象を表す
例:出す・外す・遠ざける

② 「が」が主体を・「から」が出現の起点を・「を」が働きかけによって出現する対象を表す
例:選ぶ・生む・作る

動詞の文型 4項動詞

必要とする名詞の数が4つの動詞が「4項動詞」です。

「が・を・から・に」文型

① Aさん 荷物 玄関から 教室 移した

② Aさん 論文 英語から 日本語 翻訳した

「ガ格」はどれも【主体】を表していますが、「ヲ格」「カラ格」「ニ格」が表す内容は動詞によって異なります。

① 「が」が主体を・「を」が移動する対象を・「から」が移動の起点を・「に」が着点を表す
例:移す・動かす・選ぶ

② 「が」が主体を・「を」が変化する対象を・「から」が変化前の状態を・「に」が変化の結果を表す
例:直す・変える・翻訳する

形容詞の文型 1項形容詞

「が」文型

部屋の中 寒い
ここから見える景色 きれいだ

「が」が性質・感情の持ち主の主体を表す

形容詞の多くが、この文型を取ります。
ただし、形容詞の場合の主体は「は」で表されることが多く、感情を表す形容詞だと主体を省略することも多々あります。

部屋の中 寒い
部屋の中 寒い

)この部屋にいるのが 辛い。

形容詞の文型 2項形容詞

必要とする名詞の数が2つの形容詞が「2項形容詞」です。

「が・が」文型

Aさん 日本語 好きなことを 知っている。

最初の「が」が心的状態の主体を・2つ目の「が」が対象を表す
例:うれしい・たのしい・大好きだ

「が・に」文型

① 先生 Aさん 甘いことが不満だ。

② 日本語教育能力検定試験の合格 就職 有利だと言われている。

③ 彼の作品 最優秀賞 ふさわしいと思う。

① 「が」が心的状態の主体を・「に」が対象を表す
例:甘い・厳しい・強い・弱い

② 「が」が性質の主体を・「に」がその性質が成り立つ範囲や領域を表す
例:多い・少ない・有利だ・適当だ

③ 「が」が性質の主体を・「に」がその性質が成り立つ際の基準を表す
例:近い・等しい・ふさわしい

「が・から」文型

学校から 遠いので、早起きしなければならない。

「が」が性質の主体を・「から」がその性質が成り立つ際の起点を表す
例:近い・遠い

「が・と」文型

Aさん Bさん 親しいのが うらやましい。

「が」が性質の主体を・「と」がその性質が成り立つ際に必要な相手を表す
例:親しい・そっくりだ・無関係だ

最後に

日本語学校で使われている教科書の多くは、「文型積み上げ式」によるものです。
授業で文型を教え、そこに入れる語彙を変えることで色々な文を作っていきます。

…とはいえ、今回ご紹介した文型を丸暗記する必要はありません。

大切なのは、述語を見たときに
・必須となる名詞は何か?
・↑の格は何を表しているか?
を判別することです。

基本となる文型の知識は、受身文・使役文のような構文へとつながっていきます。
「文型」を学ぶ上で「格」の知識が必要だったのように、受身文・使役文においても「格」を理解していることが前提となります。

「格」に不安がある方は、ぜひ以下の記事も参照してみてください。


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