令和6年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅰ 問題7
の解説です。
執筆時点では、正式解答は公表されていません。
参考の1つとして、ご確認ください。
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問1 プロジェクトワーク
解説 プロジェクト学習(プロジェクトワーク)
「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能を総合的に伸ばし、伝達能力を高めることを重視する「コミュニカティブ・アプローチ」の考え方に基づいています。
解説 シミュレーション
「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能すべてを使うため、基本的には中級レベル以上で実施します。
解説 ディベート
中級以上のクラスで行われることがある「ディスカッション」とは異なるものなので、注意しましょう。
「ディスカッション」は学習者が自身の意見を述べ合う討論形式ですが、「ディベート」は機械的に振り分けられた側の立場で意見を述べ合う討論形式です。
また、テーマに正解がないのはどちらも共通していますが、「ディベート」は制限時間で行った中で何らかの基準で勝敗をつけるというゲーム要素を持っていることも違いの1つです。
解説 再話
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1のように、実際に起こったこと・起こり得ることについて模擬的に当事者として話し合いを行うのは、シミュレーションの活動内容です。
2のように、ある論題に対して聞き手を説得する議論を展開するのは、ディベートの活動内容です。
3のように、見聞きした内容を再現して話すのは、再話の活動内容です。
4のように、何らかの目標を設定し、調査・話合いなどの活動により解決方法を考えるのは、プロジェクトワークの内容です。
これが正解です。
問2 行動心理学に基づく学習観に対する問題意識
解説 行動心理学
声のトーンやしぐさ、表情などの行動パターンから、人間の心理を分析します。
その答えになる理由
「行動心理学の観点から、従来の学習観の●●がダメだよ!」という問題です。
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
従来の学習観では、学習項目が難易度によって段階的に配列されていることが多いですね。
1は、間違いです。
従来の学習観では、文法・文型を順に難易度等の順で取り扱うため、コミュニケーション能力の育成がしにくいことが多いですね。
2は、正しいです。
従来の学習では、学習者の人数やレベルに合わせて授業をすることが多いですね。
3は、間違いです。
従来の学習観では、文法的・音声的な正確さを機械的に身につけさせていくことが多いですね。
4は、間違いです。
問3 エンゲージメント
解説 エンゲージメント
一時的なものではなく、長期的・持続的なものが該当します。
学習であれば、エンゲージメントが高い=学習に没頭して取り組んでいる心理状態です。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1は、「スキャフォールディング」の内容が近いのではないかと思います。
スキャフォールディングとは、「できない」から「できる」に至る上での支援・手助けのことで、ほかの人からの助言などを受けて何かができるようになる段階である「最近接発達領域(ZPD)」とセットで登場することが多いです。
2は、「学習ストラテジー」の内容です。
学習ストラテジーとは、学習を進める上で個人がとる方法のことで、「直接ストラテジー」と「間接ストラテジー」に分類されます。
3が、「エンゲージメント」の内容ですね。
これが正解です。
4は、「学習する状況によって」の部分が間違いです。
エンゲージメントが高い状態では、一時的なものではなく、学習への関心が高くなっています。
問4 初級レベルでの実践を行ううえでの工夫
その答えになる理由
プロジェクトワークは、「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能を総合的に伸ばす内容のため、中上級レベルで実施されることが多いです。
今回は、初級レベルで実践するのであれば…という内容ですね。
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
中上級レベルであれば、言語以外の能力も活用した内容を取り入れることができるのですが、初級だとハードルが高いですね。
1は、初級レベルでプロジェクトワークを行ううえでの工夫として不適当です。
プロジェクトワークは、4技能を総合的に伸ばすことが目的であるため、初級レベルであっても、どれか1つに絞ることはありません。
2は、初級レベルでプロジェクトワークを行ううえでの工夫として不適当です。
タスクの難しさを上げてしまうと、プロジェクトワークの活動自体が成り立たなくなる可能性があります。
3は、初級レベルでプロジェクトワークを行ううえでの工夫として不適当です。
4は、何も問題ありません。
これが正解です。
問5 プロジェクトワークでレベルに関係なく留意すべき点
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
学習者自身が既有の言語知識やストラテジーを駆使することは、レベルに関係なく、プロジェクトワークを円滑に進める要素になりますね。
1は、適当な内容です。
レベルによる難易度の差異はあれど、学習者の問題意識から具体的な目標へと導く流れには、変わりはありません。
2は、適当な内容です。
プロジェクトワークは、学習者に合わせて教える内容が決まるため、後行シラバスに分類されます。
3は、不適当な内容です。
レベルに関係なく、学習者のニーズや興味関心から外れたものをテーマに選んでしまうと、意欲低下につながります。
4は、適当な内容です。