令和2年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅰ 問題9
の解説です。
お手元に、問題冊子をご用意の上でご確認ください。
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問1 臨界期仮説
解説 臨界期仮説
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
臨界期仮説では、大人よりも子どもの方が第二言語の習得が容易だとしているため、1は間違いです。
2は、文章自体は合っています。
敬語であったり場面に合った表現であったりと、大人の方が子どもよりも最終的な到達度は高くなりますね。
ただし、臨界期仮説に関する記述として…という点では的外れなので、今回の正答にはなりません。
3は、引っ掛けの選択肢ですね。
第二言語習得の初期段階において、大人よりも子どもの方が習得速度が早い分野とそうでない分野があります。
英語学習などでイメージするとわかりやすいのですが、
- 発音や簡易な会話 …子どもの方が早いことが多い
- 文章の構造や文法 … 大人の方が早いことが多い
なのが一般的であり、初期段階においても、一概に大人よりも子どもの方が習得速度が速いとは言えません。
3が間違いの理由がわかれば、4が正解だと気づけます。
ほかの問題と違って「臨界期仮説」という用語だけ知っていても解けないので、受験生によって差が出てしまう問題ですね。
問2 バイリテラル
解説 バイリテラル
その答えになる理由
2が「バイリテラル」の説明そのままですね。
これが正解です。
問3 認知的側面
解説 認知的側面
「認知的側面」という用語だけ見ても、一般的な単語過ぎてイメージがわきづらいと思います。
そんなときは傍線部だけでなく、傍線部を含む文全体を読んでみましょう。
- 言語的側面
- 認知的側面
という2つの用語が出てきます。
言語的側面の方がイメージしやすいですね。
日本語の学習であれば、「日本語という言語そのもの」です。
認知とは、事象に対して知識を持っていることを指します。
日本語の学習であれば、「日本文化や文脈理解などの周辺知識」です。
「認知的側面」という単語だけだと難しいのですが、「言語的側面」と対比させるとイメージがつきやすいですね。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
場面に応じてどのよな言語が適切かの知識は、日本語という言語そのものの内容ですね。
1は、言語的側面の構成要素です。
文章理解のための背景知識は、日本語の周辺知識の内容ですね。
2は、認知的側面の構成要素です。
ノートを取る・要約するなどのメタ言語認識は、日本語の周辺知識の内容ですね。
3は、認知的側面の構成要素です。
著者の意図を探るなどの高次の思考は、日本語の周辺知識の内容ですね。
3は、認知的側面の構成要素です。
問4 学習言語能力 CALP
解説 学習言語能力 CALP
実際の場面と完全一致はしないため、文脈から推測するのが難しかったり、背景知識の習得が必要になったりで比較的習得に期間が必要だとされています。
解説 生活言語能力 BICS
文脈の支えがあることが多く、身近な事柄でもあるため「学習言語能力」よりも早く身に付けることができます。
特に、低年齢の言語教育の場合、「生活言語能力」がついたからといって「学習言語能力」が身に付いたとは限らないため、注意が必要です。
その答えになる理由
学習言語能力(CALP)が発揮されるのは、教科学習などの場面を限定した状況です。
生活場面から切り離された具体的な状況が設定されているので、それを正しく認知しなければなりません。
そのため、認知力の必要度は、生活言語能力(BICS)よりも高いです。
また、生活場面から切り離された具体的な状況が設定なので、それを教室内で学ぼうが、自宅で学ぼうが同じレベルでの言語活動を行うことができます。
そのため、場面依存度は、生活言語能力(BICS)よりも低いです。
- 認知力必要度 … 高い
- 場面依存度 … 低い
ですね。
4が正解です。
問5 二言語基底共有説
解説 二言語基底共有説 氷山説 共有基底言語能力モデル CUP
片方の言語で抽象度の高い取り組みができたときに、他方の言語でも近しい取り組みが実現できるイメージです。
これに限らずなのですが、外国語の論文を翻訳する中で日本語表記が複数ある用語があります。
私は、共有基底言語能力モデル(氷山説)で覚えていました。
解説 風船説 分離基底言語能力モデル SUP
脳全体の容量には限界があるため、一方ができるようになると、もう一方が縮小されるイメージです。
解説 敷居仮説 閾仮説 敷居理論
以下の3つに分類されます。
● 均衡バイリンガル
2つの言語習熟度が十分なレベルに達しており、バイリンガルであることが認知的にプラスに働く状態
● 偏重バイリンガル
十分な言語習熟度に達しているのが母語のみのため、バイリンガルであることが認知的にプラスにもマイナスにも働いていない状態
● 限定的バイリンガル
どちらの言語習熟度も十分とは言えず、バイリンガルであることがマイナスに働いている状態
その答えになる理由
選択肢はそれぞれ
1 二言語基底共有説
2 生活言語能力(BICS)
3 敷居仮説
4 二重言語基底分離説
の内容ですね。
1が正解です。