令和3年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅲ 問題3
の解説です。
お手元に、問題冊子をご用意の上でご確認ください。
前の問題はこちら
問1 形態による分類
その答えになる理由
選択肢に出てくる
- 機能
- 形態
- 意味
について、1つずつ確認していきましょう。
イ形容詞・ナ形容詞は、
青い空
素敵な人
のように名詞を修飾したり、
空が青い。
人柄が素敵だ。
のように述語になったり、
美しくありたい。
きれいに掃除する。
のように述語を修飾したりします。
- 名詞を修飾する
- 述語になる
- 述語を修飾する
というすべての機能が共通していますね。
そのため、イ形容詞・ナ形容詞は、機能による分類ではありません。
青い空
素敵な人
のような名詞を修飾する形を見てみると、
- イ形容詞 … 「~い」
- ナ形容詞 … 「~な」
空が青い。
人柄が素敵だ。
のような言い切りの形を見てみると、
- イ形容詞 … 「~い」
- ナ形容詞 … 「~だ」
になっていますね。
同じ機能であっても、イ形容詞・ナ形容詞で形態が異なることがわかります。
【イ形容詞】
大きい
小さい
うれしい
かなしい
を見てみると、
- 大きい・小さい … 事物の性質・状態
- うれしい・かなしい … 人の感情・感覚
の2つに分類できることがわかると思います。
【ナ形容詞】
便利だ
有名だ
好きだ
嫌いだ
も同様に、
- 便利だ・有名だ … 事物の性質・状態
- 好きだ・嫌いだ … 人の感情・感覚
の2つに分類ができますね。
事物の性質・状態を表す形容詞(イ形容詞・ナ形容詞)を「属性形容詞」、人の感情・感覚を表す形容詞(イ形容詞・ナ形容詞)を「感情・感覚形容詞」と言います。
共通した分類方法なので、意味によってイ形容詞・ナ形容詞を分類しているわけではありません。
- 機能
- 形態
- 意味
の中で、イ形容詞・ナ形容詞の分類に該当するのは、「形態」だけですね。
1が正解です。
イ形容・ナ形容詞の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
こちらも合わせてご確認ください。
問2 イ形容詞とナ形容詞の混同により起こった誤用の例
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
○ ビタミンが豊富なので
× ビタミンが豊富だので
のように、ナ形容詞の活用の中で誤用が生じていますね。
イ形容詞とナ形容詞の混同によるものではありません。
1は、例として不適当です。
○ 安くて、おいしいそうです。
× 安い、おいしいそうです。
のように、イ形容詞の活用の中で誤用が生じていますね。
イ形容詞とナ形容詞の混同によるものではありません。
2は、例として不適当です。
○ 肉体的にも苦しかったです。
× 肉体的にも苦しいでした。
のように、イ形容詞「苦しい」を丁寧体の過去形にするときは、「~かったです」の形になります。
この誤用は、
肉体的に苦痛でした。
のようなナ形容詞を丁寧体の過去形にするときのルールを適用させたことによるものですね。
イ形容詞とナ形容詞の混同によるものなので、3が適当な例です。
○ よくありません
× いくありません
のように、イ形容詞「よい」の活用の中で誤用が生じていますね。
イ形容詞とナ形容詞の混同によるものではありません。
4は、例として不適当です。
「いい」は、「よい」の口語体ですが、終止形・連体形にしか用いることができないので、注意しておきましょう。
× 【未然形】仲がいくない
× 【連用形】仲がいくて
○ 【終止形】仲がいい
○ 【連体形】仲がいい友だち
× 【仮定形】仲がいければ
問3 形容詞の活用
その答えになる理由
「同じだ」「いろいろだ」をそれぞれ連体形にしてみると、
同じ本
いろいろな本
ですね。
通常のナ形容詞は、
きれいな湖
自由な人
のように、連体形が「~な」の形になるので、「同じだ」の連体形が例外であることがわかります。
(イ)に入るのは、「同じだ」です。
「多い」「面白い」を名詞の前に置いてみると、
× 多い本
○ 面白い本
のように、「多い」の場合が不自然ですね。
○ 多くの本
のように、名詞化して連体助詞「の」を介す必要があります。
(ウ)に入るのは、「多い」です。
(イ)が「同じだ」・(ウ)が「多い」ですね。
1が正解です。
問4 連体詞
その答えになる理由
連体詞の特徴は、
- 自立語
- 活用しない
- 単独で連体修飾語になる
の3つです。
イ形容詞・ナ形容詞は、
- 自立語
- 活用する
- 単独で述語・連体修飾語になったり、述語を修飾したりする
の3つなので、述語関連以外だと、活用の有無が違いますね。
3が正解です。
連体詞については、以下の記事で詳しく解説しています。
こちらもあわせてご確認ください。
問5 指導の際に注意が必要な形容詞の特性
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
【イ形容詞述語】
美しくないです。
美しくありません。
【ナ形容詞述語】
きれいで(は)ないです。
きれいで(は)ありません。
のように、形容詞述語の丁寧体での否定形は、1つではありません。
1は、間違いです。
地元には、遊ぶ場所がない。
地元にも、遊ぶ場所がある。
のように、イ形容詞「ない」の対義語は、動詞「ある」ですね。
2は、正しいです。
3・4は、例外が浮かびませんでした。。
2が正解だとわかるので良いのですが、ちょっとモヤっとしますね。