平成28年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅲ 問題13
の解説です。
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問1 ノイズなどで音声が正しく伝達されない例
「ノイズ」とは、シャノンとウィーバーが提唱した「伝達型モデル」で出てくる用語です。
解説 伝達型モデル
「伝達型モデル」とは、シャノンとウィーバーが提唱した、情報の伝達者が情報を音声として発信し、相手にそれが伝わったときにコミュニケーションが成立したとする考え方のことです。
口頭・電話・手紙など、伝達型モデルにおいて情報の送り手が情報を発信するための媒体を「チャネル」、情報が話し手から聞き手に届くまでに障害となるものを「ノイズ」と言います。
その答えになる理由
「音声」が正しく伝わらなかったものを探しましょう。
1は音声は伝わった上で、「あの人」から想定する人物が聞き手と話し手が違っていますね。
例として不適当です。
2は音声は伝わった上で、聞き手が「非難」だと受け取っていますね。
例として不適当です。
3は音声(声帯振動の有無)が正確に伝わらず、名前を聞き間違えてしまっていますね。
例として適当です。
4は音声は伝わった上で、同アクセントになる別の語だと聞き間違えてしまっていますね。
例として不適当です。
問2 皮肉の例
その答えになる理由
「皮肉」とは、遠回しに意地悪く言うことですね。
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1はミスをした部下に対して、直接的に注意をしています。
皮肉の例ではありません。
2はけがをした人に対して、「安静にしてほしい」と伝えています。
皮肉の例ではありません。
3は商談の相手に対して、「検討する」旨を伝えています。
皮肉の例ではありません。
4は怠けている子に、「なんでもっと勉強しないんで」という非難を遠回しに伝えています。
これが皮肉の例ですね。
問3 パラ言語に起因する行き違いの例
用語の意味を確認しておきましょう。
解説 パラ言語
「パラ言語」とは、音声で伝わる情報のうち、スピード・声の大きさなどの言語情報以外のもののことです。
イントネーションの一部が含まれることもあります。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
「パラ言語」に該当するのは、「音声」で伝わる情報のうち、言語情報以外のもののことです。
首を左右に振るのは、身体動作で「音声」ではないですね。
1は間違いです。
2は「言語情報」のみで「パラ言語」は使われていないですね。
音声面での伝達に問題があるわけではなく、場面に応じた言語使用ができていない「語用論」的な部分に問題があります。
「パラ言語」に起因する行き違いではありません。
3は「言語情報」のみで「パラ言語」は使われていないですね。
「パラ言語」に起因する行き違いではありません。
4は「先生、どうしてですか」という言語情報と、文末の下降調イントネーションという「パラ言語」の両方が使われています。
疑問文として使うのであれば、上昇調イントネーションが適切ですね。
「パラ言語」に起因する行き違いなので、これが正解です。
問4 メタ言語行動表現
選択肢に出てくる用語を一通り確認しておきましょう。
解説 修辞的表現
「修辞的表現」とは、ことばを巧みに用いて美しく効果的に表現することです。
修飾表現のほか、比喩やオノマトペなども該当します。
解説 行為指示的表現
「行為指示的表現」とは、聞き手に対して何らかの行動を求める表現のことです。
勧め・依頼・命令などが該当します。
解説 交感的言語表現
「交感的言語表現」とは、心や感情を通い合わせるための表現のことです。
挨拶や相づちなどが該当します。
解説 メタ言語的表現
「メタ言語的表現」とは、対象となる表現の内容について述べる際の表現のことです。
「私個人としては…」「弊社の見解について…」などが該当します。
その答えになる理由
次に来る内容についての注釈を添えるのは「メタ言語的表現」ですね。
4が正解です。
問5 行き違いを防いだり修正したりするための意味交渉
「意味交渉」ときたら、ロングの「インターアクション仮説」です。
用語の意味から確認しておきましょう。
解説 インターアクション仮説
「インターアクション仮説」とは、ロングが唱えた第二言語習得の仮説で、理解可能なインプットだけではなく、他者との「インターアクション」をする中で互いに意味交渉することが言語習得を促進するという内容のことです。
解説 確認チェック
「確認チェック」とは、「インターアクション」の1つで、相手の発話を自分が正しく理解しているかを確認することです。
解説 理解チェック
「理解チェック」とは、「インターアクション」の1つで、自分の発話を相手が正しく理解しているかを確認することです。
解説 明確化要求
「明確化要求」とは、「インターアクション」の1つで、相手の発話が不明確で理解できない際に、発言を明確化するように要求することです。
その答えになる理由
自分の理解が正しいのかを確認するのは、インターアクション仮説における「確認チェック」に該当します。
1は例として適当です。
相手が理解できたかを確認するのは、インターアクション仮説における「理解チェック」に該当します。
2は例として適当です。
理解できないことを謝るだけでは、意味交渉になっていません。
行き違いを防いだり修正したりするためには「申し訳ありませんが、もう1度お願いします」などの意味交渉が必要ですね。
3は例として不適当です。
理解のためにさらに情報を求めるのは、インターアクション仮説における「明確化要求」に該当します。
4は例として適当です。