令和5年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅰ 問題11
の解説です。
お手元に、問題冊子をご用意の上でご確認ください。
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問1 術語
解説 術語
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
「原子」の意味が国や地域によって違ったら…論文を出すたびに定義から始めないといけませんね。
術語は、国・地域に関係なく、同分野であれば同じ用語・同じ意味で用いられます。
1は間違いです。
医療用語は、英語がそのままのものが多いですね。
また、術語は「他の術語と同じものがない」ことが前提なので、基本的には新語が使われます。
2は間違いです。
術語は、「他の術語と同じものがない」ことが前提なので、「●●●」の指し示す内容は「▲▲▲」のように1:1で固定されます。
能率的に正確な内容を伝えることができるので、3が正解です。
術語は、「●●●」の指し示す内容は「▲▲▲」のように1:1で固定されます。
「▲▲▲」の部分には一般的な言葉を使った文が来ますが、一般的な言葉を使った単語で表すことはできません。
一般語での単語で表せるのであれば、その内容の術語はそもそも必要ないですね。
4は間違いです。
問2 集団語
解説 集団語
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
「この集団大好き!」という人ほど、その集団での集団語を使って、集団の一員であることを表現していきます。
1が正解です。
他集団に自集団での集団語を使っても、「なんだこいつ…」となるだけで他集団との心的距離は縮まらないですね。
心的距離を縮めたいのであれば、その集団での集団語を使った方が良いはずです。
2は間違いです。
集団語とは、ある特定の集団の中だけで用いられる言葉のことです。
集団語の外に広まったら…それはもう集団語ではないですね。
一般語との境界が曖昧になるので、3は間違いです。
集団語は、ある特定の中だけで用いられます。
そのため、その集団内では意味が通じますが、集団外だと通じにくいですね。
4は間違いです。
問3 職業語に由来する語
解説 職業語
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
じゃがいもの品種の1つである「男爵」は、明治時代に川田男爵がアメリカから導入・栽培したことに由来しています。
特定の職業集団内の言葉に由来するわけではないので、1は間違いです。
「白物家電」は、生活に密着した家電製品の一般名称です。
テレビ・ラジオなどの娯楽家電(黒物家電)に対して筐体の色が白かったことに由来しています。
メーカー内での呼び方に由来しているので、2が正解です。
「青田」とは、稲が生育して青々とした田んぼのことです。
「青田刈り」「青田買い」のベースになっている語で、一般的な用語ですね。
特定の職業集団内の言葉に由来するわけではないので、3は間違いです。
「欠勤」とは、つとめを休むことです。
出勤の対義語で、一般的な用語ですね。
特定の職業集団内の言葉に由来するわけではないので、4は間違いです。
問4 隠語
解説 隠語
警察 → サツ
新聞屋 → ブンヤ
場所 → ショバ
のように、一般語を短縮したり、ひっくり返したりして作られます。
その答えになる理由
「特定の仲間内だけで、共通して通じる言葉」が隠語です。
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
この場合の「遠方に」は、そこで働いている店員には内容がわかりますが、客や他の店で働いている人にはわかりません。
隠語の例なので、1が正解です。
「ぼちぼち」は、わずかであることを表す方言ですね。
隠語ではないので、2は間違いです。
「例の件」が指す内容は、特定の仲間内でだけ通じる共通のものではなく、会話によって異なります。
隠語ではないので、3は間違いです。
「コスパ」は、コストパフォーマンスを省略しているだけで、一般的な言葉ですね。
隠語ではないので、4は間違いです。
問5 一般的な単語が集団内で用いられるうちに起こるアクセントの変化
その答えになる理由
言葉の変化が起こる理由の1つが、コスト削減です。
「コスパ」のように文字数を減らしたり、より発音が楽な方向にシフトしていきます。
日本語は高低アクセントなので、アクセントの下がり目がある場合、語ごとにそれが何拍目なのかを覚えなければなりません。
- 前から1拍目にアクセント核があれば「頭高型」
- 後ろから1拍目にアクセント核があれば「尾高型」
- 頭高型でも尾高型でもなく、語の途中にアクセント核があれば「中高型」
です。
日本語のアクセント型の中で、「平板型」だけはアクセントの下がり目がありません。
1拍目が低く・それ以降は何拍続いても高くなります。
アクセントの観点だと、下がり目のない「平板型」は覚える負担が少なくて楽だと言えますね。
このアクセントの「平板化」は、若者言葉でも見られる現象で
ギター 高低低→低高高
彼氏 高低低→低高高
などが、よく例として挙がります。
4が正解です。