「日本語教育能力検定試験は難しい!」と目にすることが多いと思いますが、具体的な根拠について触れられていることは、ほとんどありません。
この記事では、定量的な情報をもとに、日本語教育能力検定試験の難易度について解説しています。
日本語教育能力検定試験の合格率
見る情報によっては、難易度を強調するために、合格率を「合格者数/応募者数」で表していることがあるので注意しましょう。
① 応募者数 | ② 受験者数 | ③ 合格者数 | 合格率 | ③/②③/① 合格率 | ②/① 受験率 | |
2023(令和5)年度試験 | 10,170 | 8,249 | 2,542 | 30.8% | 25.0% | 80.7% |
2022(令和4)年度試験 | 8,785 | 7,076 | 2,182 | 30.8% | 24.8% | 80.5% |
2021(令和3)年度試験 | 10,216 | 8,301 | 2,465 | 29.7% | 24.1% | 81.3% |
2020(令和2)年度試験 | 11,316 | 9,084 | 2,613 | 28.8% | 23.1% | 80.3% |
2019(令和元)年度試験 | 11,699 | 9,426 | 2,659 | 28.2% | 22.7% | 80.6% |
受験率(受験者数/応募者数)の平均が約80%なので、毎年20%程度が「出願したものの、当日受験していない」ことがわかります。
2023(令和5)年度試験の合格率であれば、分母を「応募者数」にすると25.0%・「受験者数」にすると30.8%です。
日本語教育能力検定試験の合格点・合格ライン
合格点・合格ラインは、一切公表されていない
日本語能力検定試験の得点結果で公表されているのは、総合および試験区分ごとの平均点・標準偏差・最高点・最低点のみです。
2023(令和5)年度試験は、
平均点(総合) | 167.9 |
標準偏差 | 15.5 |
最高点 | 219 |
最低点 | 136 |
という結果でした。
受験生の得点が上記のグラフのようにきれいにバラける「正規分布」であれば、平均点と標準偏差を使って合格点の推測が可能です。
しかし、受験資格がなく、過去の合格者が何回も受験していることもある本試験において、受験者の得点が正規分布である可能性は非常に低いのではないかと考えられます。
正規分布だと仮定できない以上、精度の低い合格点を推測することに意味はありません。
なぜ、得点率7~8割が合格の目安だと言われているのか?
日本語教育能力検定試験の合格者には、大きな封筒で合格証書が届きます。
ここには、「合格したよ!」という情報しか載っておらず、
- 実際の得点は、何点だったか?
- 得点が受験者の中で、どれくらいに位置していたか?
などは、把握することができません。
また、不合格者には、葉書サイズの通知が届きます。
ここには、
- 実際の得点は、何点だったか?
は載っていませんが、
- 得点が受験者の中で、どれくらいに位置していたか?
は載っています。
A判定 | 得点上位から、約30%まで |
B判定 | 得点上位から、約30~40% |
C判定 | 得点上位から、約40~50% |
D判定 | 得点上位から、約50~60% |
E判定 | 得点上位から、約60~70% |
F判定 | 得点上位から、約70~80% |
G判定 | 得点上位から、約80~90% |
H判定 | 得点上位から、約90~100% |
のような「全体の位置」が記載され、得点が高い順にA・B・C…と並んでいます。
「得点率7~8割程度が合格の目安」というのは、ギリギリ不合格となったと考えられるA・B判定の受験生の得点率が●割だったから…という情報の集合体によるものです。
なお、満点240点のうち記述式問題が20点含まれるため、合格者・不合格者ともに自身の正確な得点を把握することはできません。
この「7~8割の得点率」もあくまで目安として、より高い得点を狙っていく姿勢が大切です。
なぜ、日本語教育能力検定試験の合格が難しいと言われるのか?
出題範囲が広い
2022(令和4)年度試験から、文化庁の「必須の教育内容」に基づいて出題されるようになりました。
出題範囲は、以下の通りです。
出典元:公益財団法人 日本国際支援協会HP 令和 5 年度日本語教育能力検定試験実施要項
これだけ見ても、「???」ですよね。
日本語教育能力検定試験は、「●●のテキストから出題される」「●●の法律から出題される」といったタイプの出題範囲ではありません。
ざっくりとした出題範囲でしかないため、全体像を把握した上で、
- ●●の分野では、▲▲という用語が■■の形式で出題される
という内容を1つずつ押さえていく必要があります。
網羅的に学習できる参考書がない
2021(令和3)年度試験までの旧出題範囲を網羅的にカバーしている参考書は、「赤本」と呼ばれる以下の書籍です。
ただし、最新である「第5版」は、2022(令和4)年度試験からの新出題範囲に対応していません。
執筆時点で新出題範囲に対応しているのは、
の3冊の問題集のみです。
受験生全員が同じスタートラインではない
合格率30%程度…と聞くとなんだかいけそうな気がしてきますが、この数値の背景には注意が必要です。
日本語教育能力検定試験には受験資格がないため、
- 過去に合格している人が何回も受験している
- すでに日本語教師として活躍している人も受験している
ことがあります。
2023(令和5)年度試験では
初回 | 5,636人(受験生の68.6%) |
2回目 | 1,462人(受験生の17.8%) |
3回目 | 622人(受験生の7.6%) |
4回目以上 | 491人(受験生の6.0%) |
のように、初回受験68.6%に対して、2回目以降の受験が31.4%
大学院生(日本語教育学専攻) | 76人(受験者の0.9%) |
大学院生(その他) | 96人(受験者の1.2%) |
大学・短大生等(日本語教育学専攻) | 305人(受験者の3.7%) |
大学・短大生等(その他) | 345人(受験者の4.2%) |
学校教員 | 478人(受験者の5.8%) |
日本語教員(常勤) | 448人(受験者の5.5%) |
日本語教員(非常勤・個人教授) | 878人(受験者の10.7%) |
会社員等 | 2,911人(受験生の35.5%) |
主婦/主夫 | 1,002人(受験生の12.2%) |
退職者 | 604(受験生の7.4%) |
その他 | 1,068人 |
のように、日本語教育関係者が10.8%という結果でした。
これらの人たちは、当然「ゼロベースで勉強を始めて、今回が初受験!」の受験者よりも合格点までのハードルが低いはずです。
また、独学・養成課程受講中などの学習スタイルによっても、合格までのハードルは違います。
学習スタイル別の統計は公表されていませんが、養成課程受講者の合格率は6~7割程度であることが多いようです。
養成課程受講者が一定数いることを考えると、独学での合格率は30%程度よりも低いことが想定されます。
※3 2022年度/全国合格率30.8%(受験者7,076名中合格者2,182名)に対し、ヒューマンアカデミー合格率70・6%(合否調査アンケートに回答した数 201名中合格者142名)
ヒューマンアカデミー株式会社 HP
日本語教育能力検定試験は、何を使って学習を進めていけば良いのか?
どのような学習スタイルでも必ず使うのが、「過去問」です。
最新の過去問は、例年3~4月に出版されます。
ただし、問題と解答しか載っていないので、「なぜ、その答えになるのか?」は冊子から把握することができません。
また、過去問だけでは弱点部分の克服が難しいため、適宜+αの問題集・参考書を選択していかなければなりません。
以下の記事で、おススメの問題集・参考書のほか、具体的な学習の進め方について解説しているので、こちらも合わせてご確認ください。
最後に
この記事では、
- 日本語教育能力検定試験の合格率
- 日本語教育能力検定試験の合格点・合格ライン
- 日本語教育能力検定試験が難しいと言われる理由
- 日本語教育能力検定試験合格に必要なもの
について、解説してきました。
これ以外にも、日本語教育能力検定試験の記事を多数掲載しています。
ぜひ、あわせてご確認ください。
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