
日本語を基礎から学ぶ方・学び直す方向けの講座です。
「こう教えてもらっていればわかったのに…」
を実現してくことを目的としています。
本講座では、主に
・言語学全般
・日本語文法
について取り扱っていきます。
・日本語教育能力検定試験の学習のため
以外にも、
・日本語教師としてレベルアップしていきたい
・現場知識だけでなく、きちんと土台も固めておきたい
という方は、ぜひご一読ください。
「アスペクト」=「~している」という覚え方をしていませんか…?
アスペクトとは?
「アスペクト」とは「動きの時間的局面の取り上げ方」を表す文法カテゴリーのことです。
…イメージが付きづらいですよね。
ここはしっかりと概念を理解していただきたい部分なので、もう少しお付き合いください。
述語にくる品詞のうち、動きを表すのは「動詞」ですね。
そのため、アスペクトは”主に”動詞述語文で出てきます。
「時間的局面」は、例文で考えた方がわかりやすいです。
以下の例文は「読む」という動きの「時間的局面」を表しています。
下線部は、すべて「アスペクト」の例です。
Aさんは本を読みはじめた。
Aさんは本を読んでいる。
Aさんは本を読みつづけている。
Aさんは本を読みおわった。
アスペクトは、大きく「状態を表すもの」「状態以外を表すもの」に分類されます。
「状態」を表すアスペクト形式
アスペクトの代表例として出てくるのは「~ている」ですね。
Aさんは本を読む。
であれば「動き」を表しますが、
Aさんは本を読んでいる。
だと「状態」を表します。
同様に「状態」を表すアスペクト形式には、
「~してある」
「~しつつある」
などがあります。
「~してある」は「動きの結果の状態」を表します。
冷蔵庫に麦茶を冷やしてある。
「~しつつある」は「変化を含む動きが一定の方向に進んでいる状態」を表しています。
山から生き物が消えつつある。
「状態」以外を表すアスペクト形式
「状態」以外を表すアスペクト形式は、大きく3つに分類されます。
複合動詞
① 動きの時間的推移の局面を細かく表し分ける形式
「~しかける」
「~しはじめる」
「~しだす」
「~しつづける」
「~しおわる」 など
Aさんに話しかける。
Aさんが話しはじめる。
Aさんが話しだす。
Aさんが話しつづける。
Aさんが話しおわる。
「話す」という動きの「開始の局面」「動きの持続」「終結の局面」などを表しています。
② 量的に限定のある動きを完遂することを表す形式
「~しつくす」
「~しきる」
「~しとおす」 など
Aさんは、カラオケでミスチルの曲を歌いつくした。
Aさんは、カラオケでミスチルの新曲を歌いきった。
Aさんは、ミスチルのメドレーを最後まで歌いとおした。
テ形+補助動詞
「補助動詞」とは、動詞本来の意味と独立性を失って、付属語として用いられるもののことです。
テ形+補助動詞のアスペクト形式には
「~してくる」
「~していく」
「~してしまう」
などがあります。
① 動きの時間的推移をある視点から取り上げた形式
「~してくる」
「~していく」 など
この町も過疎化が進んできた。
過去問に取り組むことで、飛躍的に知識が体系化されていく。
② 単なる動きの終結 or 望ましくない事態であるという話し手の捉え方を表す形式
「~してしまう」
【単なる動きの終結】課題を終わらせてしまった。
【望ましくない事態】野菜を腐らせてしまった。
③ その行為の結果の維持 or 事前の処置を表す形式
「~しておく」
【行為の結果の維持】換気のため、窓を開けておいた。
【事前の処置】あらかじめ野菜を切っておいた。
形式名詞+「だ」
形式名詞+「だ」のアスペクト形式には
「~ところだ」
「~ばかりだ」
「~最中だ」
などがあります。
① 動きの直前 or 直後 or 進行中を表す形式
「~ところだ」
【動きの直前】朝食を食べるところだ。
【動きの直後】朝食を食べたところだ。
【動きの進行中】朝食を食べているところだ。
② 動きが終わってからほとんど時間が経過していないことを表す形式
「~した」+「~ばかりだ」
朝食を食べたばかりだ。
③ 動きがまさに進行中であることを表す形式
「~している」+「~最中だ」
朝食を食べている最中だ。
【+α】アスペクトに関わる副詞的成分
「アスペクト」は「動きの時間的局面の取り上げ方」を表す文法カテゴリーのことです。
そのため主に動詞部分に現れる形式ですが、一部の副詞が関わることもあります。
8時過ぎなのに、まだ朝食を食べている。
6時前なのに、もう朝食を食べている。
使われる副詞によっては、アスペクトの意味が変わることもあります。
【進行中の動作】Aさんは、ゆっくりと制服を着ている。
【動作の結果】Aさんは、きちんと制服を着ている。
「ゆっくりと」だと「着る」という動作が進行していることを表していますが、「きちんと」だと「着る」という動作がどのように行われたかの結果を表しています。
【1回の動作】セミが死んでいる。
【繰り返しながら進行する動作】汚染により、次々と魚が死んでいる。
副詞がない状態だと1回の動作を表しますが、「次々と」がつくことで「死ぬ」という動作が繰り返し行われていることを表します。
参考書籍
今回は、以下を参考にしています。