平成30年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅰ 問題6
の解説です。
お手元に、問題冊子をご用意の上でご確認ください。
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問1 帰納的アプローチ
解説 帰納的アプローチ
「帰納」とは、個々の事実からそこに共通するものを取り出し、一般的な法則を導き出すことです。
日本語教育における「帰納的アプローチ」とは、場面や例文の提示により、学習者に意味や用法を捉えてもらう方法などが該当します。
解説 演繹的アプローチ
関連する用語もあわせて整理してしまいましょう。
「演繹」とは、一般的な原理や法則を利用して、結論を導き出すことです。
日本語教育における「演繹的アプローチ」とは、先に文法規則を示し、学習者に発話や例文作成を促す方法などが該当します。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1 文法規則の指導から入るのは「演繹的アプローチ」の例です。
2 例文からところだけ見ると合っていそうなのですが、「無作為」の部分が違います。
例文から文法規則を導き出させるのが「帰納的アプローチ」なので、「無作為」では目的を達成できません。
3 これが「帰納的アプローチ」の例として、最も適当です。
例文から文法規則を導き出すために、選ぶ例文は適切なものである必要があります。
4 このタイプの学習者が好むのは「演繹的アプローチ」です。
3が正解です。
問2 初級における媒介語の使用
解説 媒介語
「媒介語」とは、外国語学習において、学習者の理解を深めるために使われる目標言語以外の言語のことです。
必ずしも、学習者の母語であるとは限りません。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
「経済性」とは、最小のコストで行われているかの視点のことです。
より効率的・効果的に学習が進められるのであれば、媒介語を使用すべきです。
1は間違いではありません。
1の観点から媒介語の使用は「アリ」なのですが、媒介語に依存してしまうのでは本末転倒です。
2は間違いではありません。
教室でよく使用する表現は、全員に・確実に伝える必要があります。
そのために、指示のわかりやすさを重視するのはもちろんですが、通常は学習言語を用います。
3が間違いです。
社会的・文化的背景の説明は、内容が長くなってしまうことも多くあり、1の観点から媒介語を使用した方が良いです。
4は間違いではありません。
問3 文型練習
解説 オーディオ・リンガル・メソッド
「オーディオ・リンガル・メソッド」とは、フリーズが提唱した教授法で、行動主義心理学・構造主義言語学を背景としています。
● 音声言語の優先
●入門期から、話すことを重視
● 語彙数を制限して、文法の習得に重点を置く
● ミムメム練習(新しく提示された語彙・文型を、教師に従って正しい発音で模倣する練習)
● パターン・プラクティス
など、反復や文型習得のための練習を多く取り入れたことに特徴があります。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
新しい項目の導入の際は、最初に全体練習で正確さを身につけてから、個別練習に移ります。
1が正解です。
オーディオ・リンガル・メソッドでは、細かい誤りであっても逐次修正していきます。
2は間違いです。
オーディオ・リンガル・メソッドでは、書く練習よりも口頭練習が重視されます。
3は間違いです。
オーディオ・リンガル・メソッドでは、学習者同士での練習も行われます。
4は間違いです。
問4 応答練習
解説 応答練習
「オーディオ・リンガル・メソッド」における「応答練習」とは、
寿司は好きですか? → はい、好きです。
納豆は好きですが? → いいえ、好きではありません
のように、教師の質問やキューに対して、指定した文型で答える練習のことです。
解説 代入練習
関連する用語もあわせて整理してしまいましょう。
「オーディオ・リンガル・メソッド」における「代入練習」とは、
日本語を勉強します。数学。 → 数学を勉強します。
寿司を食べます。納豆。 → 納豆を食べます。
のように、該当箇所を教師が提示した語や表現に入れ替える練習のことです。
解説 反復練習
関連する用語もあわせて整理してしまいましょう。
「オーディオ・リンガル・メソッド」における「反復練習」とは、
日本語 → 日本語
本を読む → 本を読む
のように、教師が提示した語や表現をそのまま繰り返させる練習のことです。
解説 変形練習
「オーディオ・リンガル・メソッド」における「変形練習」とは、
食べます → 食べました
泳ぎます → 泳ぎました
のように、教師が提示した内容を指定された表現に変形させていく練習のことです。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1 「応答練習」の例です。
2 「代入練習」の例です。
3 「反復練習」の例です。
4 「変形練習」の例です。
1が正解です。
問5 コミュニケーション能力の養成
解説 ラポート・トーク
「ラポート・トーク」とは、相手の情緒に働きかけることで共感を得ようとする話し方のことです。
解説 シナリオ・プレイ
「シナリオ・プレイ」とは、あらかじめしておいた筋書き通りに会話等を進めていく練習のことです。
解説 フォローアップ・インタビュー
「フォローアップ・インタビュー」とは、タスク終了後に学習者に対して追加調査等を目的として行うインタビューのことです。
解説 ディクテーション
「ディクテーション」は、音声教材等から聞き取った音を文字化していく聞き取り練習のことです。
その答えになる理由
コミュニケーション能力の養成としては「シナリオ・プレイ」が最適です。
2が正解です。