
日本語を基礎から学ぶ方・学び直す方向けの講座です。
「こう教えてもらっていればわかったのに…」
を実現してくことを目的としています。
本講座では、主に
・言語学全般
・日本語文法
について取り扱っていきます。
・日本語教育能力検定試験の学習のため
以外にも、
・日本語教師としてレベルアップしていきたい
・現場知識だけでなく、きちんと土台も固めておきたい
という方は、ぜひご一読ください。
今回は、言語音をつくるための器官を1つずつ確認していきましょう。
前の記事はこちら
調音点

声門を通った呼気は、咽頭に進みます。
咽頭は、鼻と口の奥あたりから喉にかけての空間です。
咽頭を通った呼気は、2のコースどちらかに進みます。
1つは「鼻腔」と呼ばれる鼻の中の空間、もう1つは「口腔」と呼ばれる口の中の空間です。
(鼻腔へ呼気が流れてるつくられる音を「鼻音」と言います。)
上顎の部分をもう少し細かく見ていきましょう。
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音声学では、呼気をせき止めたり、通り道を狭めたりして音をつくることを「調音」と言います。
また、「調音」が行われる場所を「調音点」と呼んでいます。
・唇
・歯
・歯茎
あたりは大丈夫ですね。
注意するのは、医学では「歯」「歯茎」とはすべての「歯」「歯茎」ですが、音声学では「調音に関わる部分だけ」であることです。
具体的には、「歯」は上顎の前歯2本、「歯茎」は上顎の前歯2本の歯茎を指しています。
舌を歯の裏に当ててそのまま下げていくと、出っ張っている部分がわかると思います。
この出っ張っている部分が「歯茎硬口蓋(しけいこうこうがい)」です。
そこから後ろに行くと、口の中と鼻の中を隔てる壁である「口蓋(こうがい)」があります。
「口蓋」は頭骨の一部が通っていて硬さのある「硬口蓋(こうこうがい)」と、骨が通っておらず柔らかい「軟口蓋(なんこうがい)」に分かれています。
調音点としては出てきませんが、軟口蓋の後半の上下動する部分が「口蓋帆(こうがいはん)」です。
口蓋帆が下がると鼻腔への通路が確保され、上がると閉ざされて呼気が口腔に流れます。
口蓋帆の終端から垂れ下がっている小さな肉片を「口蓋垂(こうがいすい)」と言います。
いわゆる「のどびこ」「のどちんこ」のことです。
「口蓋帆」自体は調音点として出てきませんが、「口蓋垂」は語末の「ン」の音の調音点として出てきます。
唇は上唇と下唇で調音ができますが、歯・歯茎などはその器官だけで呼気を止めたり、通路を狭めたりすることはできないですね。
そこで登場するのが「舌」です。
医学では「した」と読みますが、音声学では「ぜつ」と読みます。
「舌(ぜつ)」は先端から「舌尖(ぜっせん)」「舌端(ぜったん)」「前舌(ぜんぜつ)」「中舌(ちゅうぜつ)」「後舌(こうぜつ)」「舌根(ぜっこん)」に分かれます。
これらは語からイメージできるので、図がなくても大丈夫ですね。
国際音声記号(IPA)で認められている調音点(調音位置)は、つぎの11種類です。
1つずつ確認していきましょう。
① 両唇音
・日本語では「マ行」「パ行」「バ行」「フ・ファ・フェ・フォ」の子音
・上唇と下唇とで調音される
② 唇歯音(しんしおん)
・日本語の子音にはない音
・下唇と上歯とで調音される
・fix や van の最初の子音が該当
③ 歯音(しおん)
・日本語の子音にはない音
・舌尖あるいは舌端と上歯の裏とで調音される
・thank や that の最初の子音が該当
④ 歯茎音
・日本語では「ナ・ヌ・ネ・ノ」「タ・テ・ト」」「ダ・デ・ド」の子音
・舌端と歯茎とで調音される
⑤ そり舌音
・日本語の子音にはない音
・舌尖と歯茎の後部とで調音される
⑥ 後部歯茎音
・日本語の子音にはない音
・舌端と歯茎の後部とで調音される
・ship の最初の子音が該当
⑦ 硬口蓋音
・日本語の「ヒ・ヒャ・ヒュ・ヒョ」の子音
・前舌と硬口蓋とで調音される
⑧ 軟口蓋音
・日本語の「カ行」「ガ行」の子音
・後舌と軟口蓋とで調音される
⑨ 口蓋垂音
・日本語の「語末のン」の子音
・後舌と口蓋垂とで調音される
➉ 咽頭音
・日本語の子音にはない音
・舌根と咽頭壁とで調音される
⑪ 声門音
・日本語の「ハ・へ・ホ」の子音
・左右の声帯で調音される
日本語の子音に出てくるものに赤線を引いたので、最低限その部分だけは覚えておきましょう。
「あれ…?歯茎硬口蓋音がない…!!」と気づいた方は、さすがです。
実は「歯茎硬口蓋」は日本語の音声を記述する上では超重要なのですが、国際音声記号(IPA)では基本的な調音位置としての地位を与えられていないんです。
上記と同じように記載するのであれば、
歯茎硬口蓋音
・日本語の「ニ・ニャ・ニュ・ニョ」「チ・チャ・チュ・チョ」「シ・シャ・シュ・ショ」「ジ・ジャ・ジュ・ジョ」の子音
・舌端と歯茎および硬口蓋とで調音
となります。
今回はここまでにしましょう。
次回は、どのように呼気の流れをコントロールして言語音を作るかについてご案内します。
参考書籍
今回は、以下を参考にしています。