【2023年8月18日時点】日本語教員試験とは?日本語教育能力検定試験とは違うの?

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学習コラム

この記事は、執筆時点(2023年8月18日時点)での情報を基に作成しています。

参考資料がわかるようにした上で細心の注意を払っていますが、齟齬なくお伝えできるか……というと100%の自信はありません。

皆さんが情報収集する際の「どの資料を確認すれば良いか?」の参考としてご活用ください。

最新の情報が出た際は、加筆・修正していきます。

日本語教員試験とは?

「日本語教員試験」とは、令和6年(2024年)4月1日に施行される「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」で定められた「登録日本語教員」になるために必要な試験のことです。

「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」とは?

日本で暮らす外国人学習者が、日常・社会生活を円滑に送るのに必要な日本語能力を身につけてもらうためには、日本語教育の適性かつ確実な実施が必要だよね

そのために、一定の要件を満たした教育機関を「日本語教育機関」として認定し、そこで働く教師の資格を創設しよう!

という内容です。

執筆時点で成立している内容なので、全文はこちらで確認できます。

この法律は、日本語に通じない外国人が我が国において生活するために必要な日本語を理解し、使用する能力を習得させるための教育(以下「日本語教育」という。)を行うことを目的とした課程(以下「日本語教育課程」という。)を置く教育機関(以下「日本語教育機関」という。)のうち一定の要件を満たすものを認定する制度を創設し、かつ、当該認定を受けた日本語教育機関において日本語教育を行う者の資格について定めることにより、日本語教育の適正かつ確実な実施を図り、もって我が国に居住する外国人が日常生活及び社会生活を国民と共に円滑に営むことができる環境の整備に寄与することを目的とする。

令和五年法律第四十一号
日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律
第一章 総則
第一条

ここでの「日本語教育」で対象となる学習者は、

外国人旅行者
海外で働いていて、日本語を勉強する外国人

等ではなく、

日常の生活で必要な日本語を聞き取ったり・話したりするのが難しい、日本で暮らす外国人

だと読みとることができます。

この法律は、上記のような外国人学習者に対して

① 一定の要件を満たす教育機関を「日本語教育機関」として認定する

② 「日本語教育機関」で教師として働く者の資格を定める

という手段によって

日本語教育の適性かつ確実な実施を図る

↑により「日本語で暮らす外国人が日常生活・社会生活を日本人と共に円滑に行うことができる環境」を整備する

という目的を達成することを目的に制定されています。

「認定日本語教育機関」とは?

上記の法律の内容に基づき、文部科学大臣の認定を受けた教育機関を「認定日本語教育機関」と言います。

日本語教育機関の設置者は、当該日本語教育機関について、申請により、日本語教育を適正かつ確実に実施することができる日本語教育機関である旨の文部科学大臣の認定を受けることができる。

令和五年法律第四十一号
日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律
第二章 日本語教育機関の認定
第二条

上記の法律の内容に基づき、文部科学大臣の認定を受けた教育機関を「認定日本語教育機関」と言います。

日本語教育能力検定試験における時事問題の勉強の中で「法務省告示日本語教育機関」というワードが出てきたかと思います。

これまでは「出入国管理及び難民認定法」という法律の中で、規定に準じた教育機関が公表されていました。
これを管理していたのが、法務省 出入国在留管理庁です。

今回の「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」では、新たな基準により、文部科学省がこの管理を行うことになります。

「登録日本語教員」とは?

日本語教員試験に合格し、かつ、実践研修を修了して文部科学大臣の登録を受けた日本語教師を「登録日本語教員」と言います。

認定日本語教育機関において日本語教育課程を担当する教員は、第十七条第一項の登録を受けた者でなければならない。

令和五年法律第四十一号
日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律
第二章 日本語教育機関の認定
第七条

日本語教員試験(日本語教育を行うために必要な知識及び技能を有するかどうかを判定するために行う試験をいう。以下この章において同じ。)に合格し、かつ、実践研修(認定日本語教育機関において日本語教育を行うために必要な実践的な技術を習得するための研修をいう。以下この章において同じ。)を修了した者は、文部科学大臣の登録を受けることができる。

令和五年法律第四十一号
日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律
第三章 認定日本語教育機関の教員の資格
第一節 登録日本語教員
第十七条

この法律により文部科学省から認定を受けた「認定日本語教育機関」で日本語教師として働くためには、「登録日本語教員」である必要があります。

「登録日本語教員」は、420時間講座を修了していたり・日本語教育能力検定試験に合格したりしていれば自動でなれる…というものではなく、文部科学省での登録が必要です。

「登録日本語教員」になるためには、

① 「日本語教員試験」に合格する

② 「実践研修」を修了する

という2つの要件をクリアしなければなりません。

「○○の条件であれば、試験の一部を免除」「●●の条件であれば、実践研修を免除」といった様々な資格取得ルートがあるのですが、この記事では「日本語教員試験とは、どのようなものなのか?」に絞って解説していきます。

「日本語教員試験」の試行試験は、どのような内容?

日本語教員試験試行試験 試験実施委員会による「令和5年度日本語教員試験試行試験 実施概要(案)(R5.6.28))を参考にしています。

「日本語教員試験」の試行試験とは?

「日本語教員試験」は、

令和6年(2024年)

からの実施です。

そのための準備として、

令和5年(2023年)12月10日

全国5か所にて「試行試験」が実施されます。

この試行試験は誰でも受験できるものではなく、「現職日本語教師、大学等日本語教師養成課程在籍者等のうち、必須の教育内容をおおむね習得したと考えられる者」のうち、委託業者から依頼があった人が対象です。

「日本語教員試験」試行試験の形式

「試行試験」は、

① 基礎試験

② 応用試験

の2つで構成されます。

「基礎試験」は、

言語そのものや言語教育、世界や日本の社会と文化等、日本語教育を行うために必要
となる3領域5区分15下位区分及び50項目の必須の教育内容に含まれる基礎的な
知識及び技能を有するかどうかを測定する試験とする。

令和5年度日本語教員試験試行試験 実施概要(案)
119 回日本語教育小委員会(R5.6.28)

「応用試験」は、

出題範囲が複数の領域・区分にまたがる横断的な設問により、実際に日本語教育を行
う際の現場対応や問題解決を行うことができる基礎的な知識及び技能を活用した問題
解決能力を測定する試験とする。

令和5年度日本語教員試験試行試験 実施概要(案)
119 回日本語教育小委員会(R5.6.28)

という内容です。

どちらも「選択式」の試験で、

配点と出題数試験時間
基礎試験1点
×
100問
= 100点
120分
応用試験2点
×
音声による出題 50問
文章題 60問
音声による出題 45分
文章題 120分

とされています。

実施背景が異なるので一概には言えないのですが、日本語教育能力検定試験と比べてみると…

配点と出題数試験時間
日本語教員試験
(試行試験)
基礎試験
1点
×
100問
= 100点
120分
日本語教育能力検定試験
試験Ⅰ
1点
×
100問
= 100点
90分

のように、基礎知識を問われる部分では

問題数は変わらず、「日本語教員試験(試行試験)」の方が試験時間が長い。

ことから、「日本語教員試験」の方が問題の難易度が高いのではないかと思います。

配点と出題数
日本語教員試験
(試行試験)
応用試験
音声による出題
2点
×
50問
= 100点
45分
日本語教育能力検定試験
試験Ⅱ
1点
×
40問
= 40点
30分

のように、音声面の部分では

「日本語教員試験(試行試験)」の方が配点・出題数が多く、試験時間も長い。

ことから、音声面をより重視していることがわかります。

配点と出題数試験時間
日本語教員試験
(試行試験)
応用試験
文章題
2点
×
60問
= 120点
120分
日本語教育能力検定試験
試験Ⅲ
※ 選択式+記述式
1点×
80問
= 80点

+
記述式 20点
120分

のように、応用知識を問われる部分では

試験時間はどちらも変わらないが、問題数は「日本語教員試験(試行試験)」の方が少ない。

1問ごとの配点は、「日本語教員試験(試行試験)」の方が高い。

ことから、基礎試験と同様に、「日本語教員試験(試行試験)」の方が問題の難易度が高いことが想定されます。

なお、「日本語教員試験(試行試験)」に記述式問題が含まれるかは、執筆時点では確定していません。

「文化審議会国語分科会日本語教育小委員会(第119回)議事録」のP30より、記述試験をやめて教壇実習でカバーしていく…というのが現状のようです。
(議事録以外で記載されているのを見た記憶があるのですが、見つかりませんでした。。資料をご存じの方は、ぜひ教えてください。)

「日本語教員試験」試行試験の出題範囲

「基礎試験」「応用試験」それぞれで確認していきましょう。

まずは、「基礎試験」からです。

基礎試験では、日本語教育を行うために必要となる基礎的な知識及び技能を区分ごと
に出題する。したがって、「必須の教育内容」から網羅的に出題する。

令和5年度日本語教員試験試行試験 実施概要(案)
119 回日本語教育小委員会(R5.6.28)

となっており、各区分の出題割合は以下が想定されています。

区分おおよその出題割合(約1割)
(1)社会・文化・地域約1割
(2)言語と社会約1割
(3)言語と心理約1割
(4)言語と教育(教育実習を除く)約4割
(5)言語約3割
令和5年度日本語教員試験試行試験 実施概要(案)
119 回日本語教育小委員会(R5.6.28)

一問一答などで用語の意味だけを単純に覚えている受験生を一掃するような出題割合ですね…!!

「言語と教育」「言語」の2分野で約7割なので、より本質的な学習になっていないと、合格は難しそうです。

「応用試験」は、

応用試験では、基礎的な知識及び技能を活用した問題解決能力を測定する。

ここでいう問題解決能力は、教育実践において発揮されるものと捉えられることから、応用
試験は、教育実践と関連させて出題することとする。

区分を横断する出題のため、領域ごとの出題割合は示さない。

応用試験の一部は、日本語学習者の発話や教室での教師とのやりとりなどの音声を
用いて、より実際の教育実践に即した問題を出題し、問題解決能力や現場対応能力等
を測定する。

令和5年度日本語教員試験試行試験 実施概要(案)
119 回日本語教育小委員会(R5.6.28)

となっており、実践的な教育内容と関連させるために、区分を横断して出題されます。

初回の試験問題を作るの大変そう…(‘Д’)

この「応用試験」と「実践研修」が上手くかみ合うかが肝なので、どのような問題になるのか、今から楽しみです。

「日本語教員試験」試行試験の参考基準

令和6年に実施される「日本語教員試験」そのものとは基準が異なるかもしれませんが、「試行試験」では基礎的な知識・技能が網羅的に備わっているかを判断する目安として、以下の参考基準が設定されています。

「基礎試験」では、

必須の教育内容で定められた5区分において、各区分で約7割程度の得点があり、か
つ総合得点で約8割程度の得点があること

令和5年度日本語教員試験試行試験 実施概要(案)
119 回日本語教育小委員会(R5.6.28)

なので、どの分野も満遍なく点数を取る必要があります。

日本語教育能力検定試験だと、私のような「ほぼ言語分野の一点突破型」がいるのですが、「日本語教員試験(試行試験)」では通用しないようです。。

総合得点では8割程度が目安になっているので、

各分野、8割以上の得点を目指す。

と合格圏内にいけそうですね。

「応用試験」では、

総合得点で約6割の得点があること

令和5年度日本語教員試験試行試験 実施概要(案)
119 回日本語教育小委員会(R5.6.28)

とされています。

日本語教育能力検定試験の合格ラインは「得点率が7~8割程度」なので、「日本語教員試験(試行試験)」は、

① 問題の難易度が高い
② 問題に対して、試験時間が短い
③ ①②の両方

のいずれかになりそうですね。

配点も1問2点なので、点数が取れる人・取れない人で大きな差になることも想定できます。

最後に

今回は、執筆時点(2023年8月18日時点)でわかっている「日本語教員試験(試行試験)」の概要について解説しました。

また、新しい情報が公開されたら、サイト内にてお知らせしていきます。

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