今回は、
✅ 「に対して」「のに対して」の意味・使い方
✅ 対象を表す複合格助詞「に対して」
✅ 割合を表す複合格助詞「に対して」
✅ 対比を表す等位節「のに対して」
について、一緒に勉強していきましょう。
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例文で学ぶ 日本語文法
「に対して」「のに対して」の意味・用法
「に対して」は、複数の語で1つの格助詞のような働きをする複合格助詞です。
通常の格助詞と同じように、名詞のあとについて用いられます。
「のに対して」は、1つの文の中で複数の述語が現れる複文で用いられます。
動詞・形容詞(イ形容詞)・形容動詞(ナ形容詞)・名詞述語のあとについて用いられます。
① 対象を表す複合格助詞「に対して」
対象とは?
本を読む。
小説が好きだ。
小説家にあこがれる。
「を・が・に」は、対象の用法がある格助詞です。
例文では、
「本」は、「読む」という動作の対象
「小説」は、「好きだ」という心的状態の対象
「小説家」は、「あこがれる」という心的活動の対象
を表しています。
対象を表す「に対して」の用法
彼の意見に対して賛成した。
での「(彼の)意見」は、「賛成する」という働きかけのめあてとしての対象を表しています。
彼の意見に賛成した。
のような格助詞「に」でも表すことができる意味をさらに明示化していますね。
父親に対して反抗してばかりいた。
での「父親」は、「反抗する」という働きかけのめあてとしての対象を表しています。
これも
父親に反抗してばかりいた。
のような格助詞「に」でも表すことができる意味をさらに明示化していますね。
述語が動詞の場合は、働きかけのめあてとしての対象を明確化していますが、イ形容詞・ナ形容詞の場合は、
彼は、女性に対して優しい。
この本は、子どもに対して有害だ。
のように、その適用する領域を限定する意味を持つことがあります。
② 割合を表す複合格助詞「に対して」
割合とは?
1週間に1冊は本を読むようにしましょう。
日本人の3人に1人が、80歳までに帯状疱疹にかかると言われています。
「に」は、割合の用法がある格助詞です。
例文では、
- 「1週間」という基準となる期間
- 「3人」という基準となる人数
を提示し、そのうちの部分量を続けて表しています。
割合を表す「に対して」の用法
生徒2人に対して講師1人の割合で指導を行います。
この例文は、生徒2:講師1の割合であることを表しています。
生徒が4人の場合は講師が2人・生徒が10人の場合は講師が5人ですね。
受験者数100名に対して20名の割合で合格した。
この例文は、合格率が20%であることを表しています。
受験生が50名の場合は合格者が10名・受験者数が1,000名の場合は合格者数が200名ですね。
「の割合で」がない場合、「割合」ではなく「特定の数量」を表します。
受験者数100名に対して20名が合格した。
だと、受験者数は100名で固定ですね。
受験者数が1,000名だと合格者数は200名…のような割合の意味は持たなくなります。
③ 対比を表す等位節「のに対して」
対比とは?
対比を表す「のに対して」の用法
アリは真面目に働いていたのに対して、キリギリスは遊んでばかりいた。
だと、アリとキリギリスの行動についての対照的な側面が対比されていることがわかります。
この「のに対して」は、「が」「けれど」に置き換えが可能です。
アリは真面目に働いていたが、キリギリスは遊んでばかりいた。
アリは真面目に働いていたけれど、キリギリスは遊んでばかりいた。
意味は同じですが、「のに対して」の方がかたい印象になりますね。
また、より対比の意味を前面に出して、両者の違いを強調する表現だと言えます。
「に対して」「のに対して」の使い方
「に対して」は、対象・割合を表す複合格助詞
「複合格助詞」は、名詞と述語のあいだに成り立つ意味関係を表す「格」という文法カテゴリーで登場します。
彼の曖昧な態度にイライラした。
の格助詞「に」が接続する「(彼の曖昧な)態度」が「イライラした」という述語の対象になっているのと同じように、
彼の曖昧な態度に対してイライラした。
の複合格助詞「に対して」が接続する「彼の曖昧な態度」が「イライラした」という述語の対象になっていますね。
また、
10人に1人が当選します。
10人に対して1人の割合で当選します。
のように、割合を表す格助詞「に」と同じ働きをすることもできます。
どちらの用法も複合格助詞なので、通常の格助詞と同じように、前に来るのは「名詞」です。
「のに対して」は、対比を表す等位節をつくる
「等位節」は、2つ以上の述語を持つ「複文」という文法カテゴリーで登場します。
Aさんが英語を勉強しているのに対して、Bさんは数学を勉強している。
「節」とは、1つの述語とそれに従属するいくつかの成分のことです。
上の文であれば、「Aさんは英語を勉強しているのに対して」という従属節(メインでない節)と「Bさんは数学を勉強している」という主節(メインの節)があります。
主節・従属節という名称ではあるものの、両者の関係は対等ですね。
このような関係の従属節を「等位節」と呼びます。
この場合は、「に対して」だけでは使えず、「のに対して」の形で使用します。
また、「節」なので、前に来るのは述語を作る「動詞・イ形容詞・ナ形容詞・名詞」です。
「のに対して」の接続
【動詞】
Aさんは毎日運動したのに対して、Bさんは週1回しか運動しなかった。
【イ形容詞】
この料理はとてもおいしいのに対して、あちらの料理はあまりおいしくない。
【ナ形容詞】
姉の部屋はきれいなのに対して、妹の部屋はきれいではなかった。
【名詞】
兄はフリーターなのに対して、弟は弁護士だ。
最後に
今回は、
✅ 「に対して」「のに対して」の意味・使い方
✅ 対象を表す複合格助詞「に対して」
✅ 割合を表す複合格助詞「に対して」
✅ 対比を表す等位節「のに対して」
について、解説してきました。
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