今回は、
✅ 「音声学」と「音韻論」
✅ 「音声学」で取り扱う内容
✅ 「音韻論」で取り扱う内容
について、一緒に勉強していきましょう。
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基礎から学ぶ 音声分野
「音声学」と「音韻論」
人間は、言語を使ってコミュニケーションを行います。
言語を使って複雑な情報を伝え合うことができるのが、人間という動物の大きな特徴です。
人間によるコミュニケーションには、
- 音声
- 文字
- ジェスチャー
という3つの主要な手段があります。
その中でも重要なのが「音声(音声言語)」です。
「音声(音声言語)」は、単に音を出すだけ…ではありません。
話し手(Aさん)は、
- 伝えたい内容「Bさんと映画に行きたい」を
- 「映画に行きませんか?」のように記号化して、
- 「映画に行きませんか?」と音声にすることで
音波としてBさんに伝えています。
また、聞き手(Bさん)は、
- 音波を受け取り、
- それを「映画に行きませんか?」のように記号化して
- そこから「Aさんに映画に誘われている」
とい流れで内容を理解していますね。
なんだか複雑に見えてしまうかもしれませんが、音声言語によるコミュニケーションは、このような「話し手による記号化と聞き手による解読」の繰り返しによって行われています。
「音声学」は、話し手による音声を作り出す過程と、聞き手による音声の知覚の過程を探る分野です。
音声実験で詳細な音声データを収集・分析します。
上の図であれば、「映画に行きませんか?」という音波を話し手がどのように産出し、聞き手がどのように知覚したかの部分です。
物理的に言語音を研究する分野なので、音声学を物理学の一部だと見なして、言語学の外側にある分野として扱うこともあります。
一方の「音韻論」は、音声現象の背後にある音韻規則や原理を研究する分野です。
人間が頭の中で行っている操作を明らかにしようとします。
上の図であれば、Aさんが頭の中で考えている「映画に行きませんか?」の部分です。
「音声学」で取り扱う内容
「調音音声学」では、発音に関わる器官を使って、個々の音声がどのように作り出されるかを分析します。
上の図では、「映画に行きませんか?」を発音する部分です。
「音響音声学」では、空気の振動や気圧の変化によって、どのように音が伝播するかを分析します。
上の図では、「映画に行きませんか?」を発音した際のAさんとBさんの間の空気の振動部分ですね。
コンピュータを使って分析するので、より工学に近づくイメージです。
「聴覚音声学」では、聞き手に伝わった音がどのように知覚されたかを分析します。
上の図では、Bさんに音波が伝わったところからの部分ですね。
人間による音声の認識がどのような過程で実行されているかを対象としており、鼓膜や聴覚神経・脳などの意缶が音声の認識においてどのような役割を果たすのかを研究する医学・生理学に近づいた分野です。
「調音音声学」は、日本語教育能力検定試験でも
- 試験Ⅰ問題1 (1)の音声記号
- 試験Ⅱ 問題3の口腔断面図
などで出題されているので、イメージがつきやすいのではないでしょうか?
「音韻論」で取り扱う内容
イメージがつきにくいと思うので、例で見ていきましょう。
膝(ひざ) [hiza]
財(ざい) [ʣai]
[ ]で示したのが、国際音声記号(IPA)です。
同じ「ざ」でも、
- [z]
- [ʣ]
のように、記号が異なることがわかりますね。
音声学では、両者を区別して扱います。
のように、音声器官の使われ方が異なるからです。
一方、音韻論だと、
膝(ひざ) /hiza/
財(ざい) /zai/
のように、両者の「ざ」の発音上の違いを区別しません。
意味上の違いがなく、日本語ではどちらも同じ音の働きをしているからです。
このように、同じ音として認められる単位を「音素」と言います。
音声が [ ] で表されたのに対し、音素は / /で表されます。
音声 | 音素 | |
膝(ひざ) | [hiza] | /hiza/ |
財(ざい) | [ʣai] | /zai/ |
音素を認定し、その配列の仕方や変種・体系などを明らかにする研究が音韻論で扱われる内容です。
参考書籍
今回は、
✅ 「音声学」と「音韻論」
✅ 「音声学」で取り扱う内容
✅ 「音韻論」で取り扱う内容
について、解説してきました。
を主に参考にしています。
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