【令和元年度 日本語教育能力検定試験 過去問】試験Ⅲ 問題12の解説!

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日本語教育能力検定試験

令和元年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における

 試験Ⅲ 問題12

の解説をしていきます。

お手元に、以下をご用意の上で読んでいただければ幸いです。

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問1 協調の原理

解説 協調の原理

「協調の原理」とは、哲学者であるグライスが提唱した、会話を進める上での一般的な原則のことです。
話し手は、会話の目的や話の流れを無視したような矛盾した発言をすることはなく、聞き手は、話し手の言うことを脈絡のない推論により解釈しているわけではないとしています。

「協調の原理」は、具体的には4つの「会話の公理」から成り立っています。

解説 会話の公理 量の公理

「量の公理」とは、会話において、必要な量の情報を提供し、過小・過剰の情報を与えないことを指しています。

「何で駅まで行きますか?」
◎ 「自転車で行きます」
△ 「2年前に買った赤色の自転車で行きます」

解説 会話の公理 質の公理

「質の公理」とは、会話において、自身が真実でないとわかっていることや、確信していないことっは言わないことを指しています。

「今年の日本語教育能力検定試験では、●●が出題されますか?」
△ 「はい、出題されるはずです」
…と答えにくいのは、「質の公理」に違反したくないという心理が働くためです。

解説 会話の公理 関係の公理

「関係の公理」とは、会話の内容に関係あることだけを話すことを指しています。

「今日の分の作業は終わりそうですか?」
→ 「別の仕事が忙しくて…」
は一見すると「関係の公理」に違反しているようですが、この発話は会話に関係しているはずなので、聞き手は「忙しくて、今日の分の作業は終わりそうにない」ということを意図したものだと解釈できます。

解説 会話の公理 様式の公理

「様式の公理」とは、会話において、曖昧な言い方や不明瞭な言い方はせず、簡潔に話すことを指しています。

「日本語教育能力検定試験の勉強は進んでいますか?」
△ 「進んでいるような、進んでいないような…」

その答えになる理由

選択肢を1つずつ見ていきましょう。

1は「様式の公理」に違反している例です。
2は「量の公理」に違反している例です。
3は「様態の公理」に違反している例です。
4が「関係の公理」に違反している例です。

問2 間接発話行為

解説 間接発話行為

「間接発話行為」とは、相手に何かの発話意図を伝えるときに、直接的ではなく、間接的な別の発話をすることです。

「寒いですね」は、辞書的な意味では「発話者が寒さを感じている」ことを述べているだけです。
ここに「窓が開いていて、冷たい風が入ってきている」という状況が加わると、「窓を閉めてほしい」と伝える文になります。

【令和2年度試験 試験Ⅲ 問題3 問2】でも出題されています。

その答えになる理由

2は「時計を持っているか」ではなく「時計を持っていたら、時間を教えてほしい」が主題です。
聞き手も、それを踏まえて時間を答えているので「間接発話行為」の例であることがわかります。

問3 ポライトネス理論

解説 ポライトネス理論

「ポライトネス理論」とは、ブラウン&レビンソンが提唱した「ポライトネス」「フェイス」を鍵概念として、コミュニケーションにおいて人間関係を円滑にするための言語的な工夫・方法を考察する理論のことです。

【令和2年度試験 試験Ⅲ 問題14 問2】でも出題されています。

解説 ポライトネス

「ポライトネス」とは、会話の参加者が心地よくなるようにするなど、人間関係を円滑にするための言語活動のことです。

解説 フェイス

「フェイス」とは、人と人との関わり合いに関する基本的な欲求を指します。
他者に近づきたい・好かれたいという「ポジティブ・フェイス」と、他者と離れていたい・立ち入られたくないという「ネガティブ・フェイス」に分類されます。

解説 FTA face-threatening act

「FTA」とは、人間の基本的欲求であるフェイス(ポジティブ・フェイス / ネガティブ・フェイス)を他者が脅かすような言語的な行動のことです。
(ファイスを脅かさないようにすることが「ポライトネス」であると言えます。)

その答えになる理由

2と4は、明らかに間違いですね。
FTAの度合いが大きいと判断される場合は、直接的ではなく間接的な表現が選ばれます。
また、FTAになるかどうかは言語圏や文化によって異なります。

1と3で迷うところですが、「ポライトネス」「フェイス」の意味がわかっていれば、正解である3にたどり着くのはそこまでむずかしくありません。

引用の通り、「FTAの度合い」は
特定の行為の負荷の度合い(Rank)
相手との社会的距離(Distance)
だけでなく、
相手との相対的権力(Power)
の3つの総和によって決まるとされています。
そのため、1は間違いです。

数式自体が出ることは考えにくいため、「FTAの度合いは、上記の3つの総和で決まる」レベルまで覚えておけば良いと思います。

FTA度合いの見積もり公式:Wx=D(S,H1)+P(H,S)+Rx

Wx:ある行為xが相手のフェイスを脅かす度合い(Weight)
D(S,H):話し手と聞き手の社会的距離(Distance)
P(S,H):話し手と聞き手の相対的権力(Power)
Rx:ある行為xの、ある文化における押しつけがましさの程度の絶対的な順位付け(Rank)

大塚 生子 「ポライトネス理論におけるフェイスに関する一考察」

問4 ポジティブ・ポライトネス・ストラテジー

解説 ポライトネス・ストラテジー

「ポライトネス・ストラテジー」とは、他者の「フェイス」を侵害しないように配慮するための方法のことです。
ポジティブ・フェイスに訴える方法を「ポジティブ・ポライトネス・ストラテジー」、ネガティブ・フェイスに訴える方法を「ネガティブ・ポライトネス・ストラテジー」と言います。

【令和2年度試験 試験Ⅲ 問題14 問2】でも出題されています。

その答えになる理由

1・2は相手の「ネガティブ・フェイス」を確保しようとしているので「ネガティブ・ポライトネスストラテジー」の例です。

3は相手の「ポジティブ・フェイス」に配慮しているため「ポジティブ・ポライトネス・ストラテジー」の例です。
これが正解です。

4は、相手のフェイスに配慮することなく発言しています。
このような例を「ボールド・オン・レコード・ストラテジー(直言)」と言います。

問5 待遇表現

その答えになる理由

選択肢を1つずつ見ていきましょう。

1は「マイナスの待遇表現行動」と呼ばれるものです。
「貴様」のような相手を低く位置付ける表現が該当します。
これが正解です。

古典語では天皇の自敬表現として「朕」が使われていましたが、現代語では使われていません。
2は間違いです。

3は「素材敬語」と「対者敬語」が逆です。
聞き手に丁寧な気持ちや態度を表すのは「対者敬語」で「謙譲語Ⅱ(丁重語)」「丁寧語」が該当します。
話題の人物への敬意を表すのは「素材敬語」で「尊敬語」「謙譲語Ⅰ」が該当します。

4は「ウチ・ソトの関係」と「上下関係」が逆です。
現代では「ウチ・ソトの関係」を重視して敬語が運用されています。

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