令和元年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅲ 問題2
の解説です。
お手元に、問題冊子をご用意の上でご確認ください。
前の問題はこちら
問1 東京方言
解説 連濁
「連濁」とは、2語を組み合わせて1語を作るときに、あとに来る語の初めの清音が濁音に変わる現象のことです。
「ときどき」「みかづき」「いけばな」などが、例として挙げられます。
解説 狭母音
「狭母音」とは、舌が中央よりも上の状態で発音される母音のことです。
日本語では[i][u]が該当します。
解説 連母音
「連母音」とは、その名の通り、連続する2つの母音のことです。
「あい [ai]」「えい [ei]」などが該当します。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
「重箱(じゅうばこ)」「道具箱(どうぐばこ)」のように、「箱」などの語は複合語の後部要素になったときに「連濁」を起こします。
1は間違っていません。
「白い」のようなイ形容詞の連用形は、東京方言では「~く」です。
ウ音便になって「白うて」となるのは、京都などの方言で見られる現象です。
2が間違いです。
●無声子音に挟まれたとき
●文末にきたとき
などの場合に、狭母音[i][u]の声帯振動がなくなって母音が聞こえにくくなる現象を「母音の無声化」と言います。
3は間違っていません。
「わかい」が「わけー」のように、連母音/ai/が[e(:)]となるのは、東京方言の特徴の1つです。
4は間違っていません。
2が正解です。
問2 現在も進行中である長期的な歴史変化
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
動詞の活用の型数は、
●文語文法…未然形・連用形・終止形・連体形・已然形・命令形の6種
●口語文法…未然形・連用形・終止形・連体形・仮定形・命令形の6種
で数に変化はありません。
1は間違いです。
「唇音退化」とは、音韻上の変化の1つで、[p]や[b]などの唇音が、より緩い音である摩擦音 [f] [ɸ] や [v] [w] などへと「退化(子音弱化)」することを言います。
日本語では、当初子音が両唇音[p]だったハ行が、摩擦音[Φ]を経て変化していった現象が例として挙げられます。
「拗音」でも、以前は「くゎ」→「か」等で見られた現象ですが現代ではないため、2は間違いです。
動詞における受身形と可能形の分化は、いわゆる「ら抜き言葉」です。
「彼に、私のケーキを食べられた(受身形)」
「今なら、ケーキをたくさん食べられる(可能形)」
のように、受身形・可能形が両方とも「~られる」だったのが
「彼に、私のケーキを食べられた(受身形)」
「今なら、ケーキをたくさん食べれる(可能形)」
のように、可能形が「~れる」の形に分化して区別されるようになった現象を指します。
3が正解です。
イ列におけるニ種の仮名の使い分けとは「い」「ゐ」のことです。
「ゐ」は現在使われていないため、4は間違いです。
問3 調音時の各部位の動き
その答えになる理由
「ひ」 [ç] 無声硬口蓋摩擦音
硬口蓋と舌で狭い通路を作り、その隙間に呼気を通すことで音を作る摩擦音です。
1が正解です。
「や」 [j] 有声硬口蓋接近音
調音点は「軟口蓋」ではなく「硬口蓋」のため、2は間違いです。
「く」 [k] 無声軟口蓋破裂音
調音点は「硬口蓋」ではなく「軟口蓋」のため、3は間違いです。
「ち」 [ʨ] 無声歯茎硬口蓋破擦音
調音点は「歯」ではなく「歯茎硬口蓋」のため、4は間違いです。
問4 負の転移
解説 転移
「転移」とは、学習言語の習得過程において、母語の言語規則を母語に当てはめることです。
学習言語の習得にプラスに働く場合を「正の転移」、マイナスに働く場合を「負の転移」と言います。
母語と学習言語に共通点が多い場合は「正の転移」、異なる点が多い場合は「負の転移」が出やすくなります。
その答えになる理由
外国語の知識がなく、わかりませんでした。。
正解は、1です。
問5 発音の区別の手がかり
その答えになる理由
「せっし」を「せし」と発音してしまったのであれば、手で拍子をとらせることで、学習者が自ら間違いに気づくことができます。
今回は
「し」 [ɕ] 無声歯茎硬口蓋摩擦音
「ち」 [ʨ] 無声歯茎硬口蓋破擦音
と「調音法」の間違いのため、手で拍子を取らせても、学習者は間違いに気づけません。
1は間違いです。
「ひょう」と「ひよう」は拍が違います。
選択肢1のように手で拍子を取らせることで、学習者が自ら間違いに気づくことができます。
2は間違いです。
[Φ] 無声両唇摩擦音
[x] 無声軟口蓋摩擦音
調音点が異なるので、鏡で学習者の唇の形を観察させることで、学習者自ら間違いに気づくことができます。
3が正解です。
[u] 狭後舌円唇母音
[ɯ] 狭後舌非円唇母音
唇の形が異なるので、選択肢3のように 鏡で学習者の唇の形を観察させることで、学習者自ら間違いに気づくことができます。
4は間違いです。