【令和5年度 日本語教育能力検定試験 過去問】試験Ⅰ 問題13の解説!

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令和5年度 過去問解説

令和5年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における

 試験Ⅰ 問題13

の解説をしていきます。

お手元に、問題冊子をご用意の上で読んでいただければ幸いです。

※ 執筆時点では、公式からの解答は出ていません。参考程度にご確認ください。

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問1 協調の原理

解説 協調の原理

「協調の原理」とは、哲学者であるグライスが提唱した、会話を進める上での一般的な原則のことです。
話し手は、会話の目的や話の流れを無視したような矛盾した発言をすることはなく、聞き手は、話し手の言うことを脈絡のない推論により解釈しているわけではないとしています。

「協調の原理」は、問2で解説する4つの「会話の公理」から成り立っています。

その答えになる理由

「協調の原理」において、聞き手は「話し手の言うことを脈絡のない推論により解釈しない」とされています。
耳に入ってくる情報がすべてなので、情報発信元である話し手には「会話の目的や話の流れを無視したような矛盾した発言をしないこと」が求められており、それを守るためのガイドラインが問2の会話の公理です。

選択肢を1つずつ見ていきましょう。

協調の原理では、話し手は「会話の目的や話の流れを無視したような発言をしない」ので、聞き手も「話し手の言うことを脈絡のない推論により解釈しない」とされています。
話し手・聞き手で協力しながら内容を理解していくわけではないですね。
1は間違いです。

本文に記載がある通り、協調の原理で説明されているのは「円滑な意思疎通」までであり、そこから先の影響にまでは言及されていません。
2は間違いです。

話し手が配慮するのは「会話の目的や話の流れを無視したような発言をしない」ことであって、聞き手との人間関係ではありません。
協調の原理で説明されているのは「円滑な意思疎通」までですね。
3は間違いです。

4は協調の原理で話し手が守るべきこととして、何も問題ありません。
これが正解です。

問2 会話の公理に違反した発話

解説 量の公理

「量の公理」とは、会話において、必要な量の情報を提供し、過小・過剰の情報を与えないことを指しています。

「何で駅まで行きますか?」
◎ 「自転車で行きます」
△ 「2年前に買った赤色の自転車で行きます」

解説 質の公理

「質の公理」とは、会話において、自身が真実でないとわかっていることや、確信していないことは言わないことを指しています。

「今年の日本語教育能力検定試験では、●●が出題されますか?」
△ 「はい、出題されるはずです」
…と答えにくいのは、「質の公理」に違反したくないという心理が働くためです。

解説 関係の公理

「関係の公理」とは、会話の内容に関係あることだけを話すことを指しています。

「今日の分の作業は終わりそうですか?」
→ 「別の仕事が忙しくて…」
はあえて「関係の公理」に違反することで、聞き手の「忙しくて、今日の分の作業は終わりそうにない」ということを表しています。

解説 様式の公理

「様式の公理」とは、会話において、曖昧な言い方や不明瞭な言い方はせず、簡潔に話すことを指しています。

「日本語教育能力検定試験の勉強は進んでいますか?」
△ 「進んでいるような、進んでいないような…」

その答えになる理由

選択肢を1つずつ見ていきましょう。

1は、QとAが噛み合っていないですね。
「会話の内容に関係あることだけを話す」という関係の公理に違反しています。

2は、「やりたくもない仕事」と「すごく楽しかった」が矛盾していますね。
「すごく楽しかった」が真実でない情報なので、質の公理に違反しています。

3は、時間を聞かれているのに、早朝とだけ答えていますね。
情報量が足りていないので、量の公理に違反しています。

4は、「どこで・何を」の2つ聞かれているのに、1つしか答えていないですね。
情報量が足りていないので、量の公理に違反しています。

2が正解です。

問3 文脈化

その答えになる理由

問1・2で出てきたグライスが言語学のどの分野の人物なのかを知っていれば、楽勝ですね。
知らなかったとしても、「発話がどう解釈されるべきか」でピンと来るはずです。

グライスは、オースティンやサールとともに「語用論」の基盤を作りました。
「語用論」とは、言語表現話し手/聞き手文脈の関係を研究する分野です。

「この部屋、暑いね」と聞いたときに、文法分野である統語論では「この『ね』は終助詞で…」ですが、統語論では「『窓を開けて』という解釈では…」と捉えます。

(ア)に入るのは、「文脈化」ですね。
4が正解です。

問4 参加者が発話の順番を交代していくシステム

その答えになる理由

選択肢を1つずつ見ていきましょう。

A「出身はどちらですか?」
A「私は●●なんですが、▲▲が有名で…」

のように、相手に質問したのに話し続けていたら、スムーズに発話の順番が交代できないですね。
質問後は自分が話すのをやめた方が良いので、1が正解です。

A「●●出身なんですよ~」
B「そうなんですね」
A「………」
B「………」

相づちは「聞いていますよ」のサインなので、相づちを聞くたびに話すのをやめていたら、スムーズに発話の順番が交代できないですね。
2は間違いです。

A「私の出身は●●で、」
B「私は▲▲なんですよ~」

相づちであれば良いのですが、相手が話している最中に自分も話し始めてしまうと、スムーズに発話の順番が交代できないですね。
3は間違いです。

A「~が楽しかったですね。」
B「………」
C「………」
B「Aさん、他には…」

無言になったら、最後の話し手が話さなければならないって………
できるだけ聞き手にまわりたい私のようなタイプには、地獄みたいなルールですね。
スムーズどころか発話の順番自体が交代できていないので、4は間違いです。

問5 隣接ペア

解説 隣接ペア

「隣接ペア」とは、2つの発話で、それぞれがペアになっているもののことです。
「おはよう」→「おはよう」
「今何時?」→「9時だよ」

解説 優先応答

「優先応答」とは、隣接ペアにおける相手の期待に沿った返答のことです。
「これから買い物に行かない?」→「いいよ」

解説 非優先応答

「非優先応答」とは、隣接ペアにおける相手の期待に沿っていない返答のことです。
「これから買い物に行かない?」→「勉強するんじゃなかったの?」

その答えになる理由

隣接ペアは、必ずしも連続しているわけではないので注意しましょう。

「ありがとう」→「どういたしまして」のような挨拶表現であれば連続していますが、「●●は何ですか?」→「▲▲です」のような疑問文・答えの場合は、間に別の表現が入ることもあります。

ア~カを見てみると、「このお魚、いくらですか?」「1尾500円です。」が隣接ペアにおける優先応答ですね。
2が正解です。

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