【令和5年度 日本語教育能力検定試験 過去問】試験Ⅰ 問題15の解説!

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令和5年度 過去問解説

令和5年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における

 試験Ⅰ 問題15

の解説をしていきます。

お手元に、問題冊子をご用意の上で読んでいただければ幸いです。

※ 執筆時点では、公式からの解答は出ていません。参考程度にご確認ください。

前の問題はこちら

問1 1980年代に始まった日本語教育に関する事業

問題15、受験生の方は面食らったかもしれませんが、本質的な良い問題だと思います。
特に、問2~問4の流れは秀逸ですね。
「登録日本語教育」関連の情報を順次追っていた方であれば、ピンとくる部分が多かったはず…!!

日本語教員養成のターニングポイントは、

昭和60年・文部省「日本語教員養成について

平成12年・日本語教員の養成に関する調査研究協力者会議「日本語教育のための教員養成について」

平成31年・文化審議会「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)改訂版」

です。

問1で①を受けての事業が・問2以降で②の内容が問われています。
②③は新制度で大きく絡んでくるので、↓も合わせてご確認ください。

その答えになる理由

選択肢を1つずつ見ていきましょう。

1の参考はこちら

第1回の日本語教育小委員会が開催されたのは、平成19年(2007年)7月25日です。
設置日=第1回の開催ではないですが、さすがに1980年代に設置→2007年に第1回は考えにくいですね。
1は間違いです。

2の参考はこちら

日本語教員養成学科が設置されたのは、昭和60年(1985年)の筑波大学が第1号です。
筑波大学は国立なので、内容・事業開始のタイミングともに正しいですね。
2が正解です。

2の内容は、昭和60年の文部省「日本語教育施策の推進に関する調査研究会」報告を受けたものですね。
問2以降で取り扱われている「平成12年指針」のP4~5にも記載があります。

 一方,これまで日本語教員養成を進めるに当たっての基本的な方針と
されていたものに,昭和60年5月に文部省の日本語教育施策の推進に
関する調査研究会から出された報告「日本語教員の養成等について」が
ある。
 この報告では,国内外の日本語学習者の増加への対応,特に我が国へ
の留学生の着実な増加が予想され,留学生が日本語学習者総数の増加の
重要な要因になると予想された昭和60年の当時において,将来の目安
として国内において必要となる日本語教員数を試算し,それに対応した
日本語教員養成の量的・質的な整備・充実を図ることを提言している。

日本語教育のための教員養成について
平成12年3月30日
日本語教員の養成に関する調査研究協力者会議

3の参考はこちら

地域日本語教育コーディネーター研修が開始されたのは、平成22年(2010年)です。
3は間違いです。

4の参考はこちら

学校教育におけるJSLカリキュラムの刊行は、小学校編が平成15年度(2003年)・中学校編が平成19年(2007)年です。
カリキュラムの刊行=課程開始ではないですが、小学校編のカリキュラムが刊行された2003年よりも前の課程開始はありえないですね。
4は間違いです。

問2 教員養成で扱うべき4領域と標準時間数(単位数)

その答えになる理由

出典元はこちら

P29「4 日本語教員養成のための標準的な教育内容」の表を見てみましょう。

「教員養成で扱うべき4領域」とは、

1-(1) 日本語の構造に関する体系的、具体的な知識
1-(2) 日本人の言語生活等に関する知識・能力
2 日本事情
3 言語学的知識・能力
4 日本語の教授に関する知識・能力

のことで、これらが選択肢になっています。

表の「一般の日本語教員養成機関」の列を見てみると、

1-(1) 日本語の構造に関する体系的、具体的な知識 150時間
1-(2) 日本人の言語生活等に関する知識・能力 30時間
2 日本事情 15時間
3 言語学的知識・能力 60時間
4 日本語の教授に関する知識・能力 165時間

となっています。
1-(1)と1-(2)を足すと180時間となり、最も多くの時間数が設定されていることがわかりますね。

1が正解です。

問3 日本語教育のための教員養成について

その答えになる理由

昭和60年・文部省「日本語教員養成について

平成12年・日本語教員の養成に関する調査研究協力者会議「日本語教育のための教員養成について」

平成31年・文化審議会「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)改訂版」

の①→②で「標準的な教育内容」から「基礎から応用に至る選択可能な教育内容」へ変化しました。

・ 養成する日本語教員の主な活躍の場や専攻に応じて組み合わせ可能な選択的な教育内容の指針を提示
・ 主専攻・副専攻の別や標準単位数は示さない
・ 各大学の創意工夫により,他の関連領域を含めた多様な教育課程の編成

概要はこちらがわかりやすいと思います。

出典元はこちら

P8を見てみましょう。

各養成機関においてどのような教育課程を編成するかは,今回新たに示す教育内容を参考としてそれぞれの日本語教員養成機関の自主的な判断に委ねようとするものである。したがって,教育課程編成に際しての枠組みとなる標準単位数や,従来設けられていた主専攻・副専攻の区分は設けず,今後は,各大学等の教育目的がより一層実現しやすいようにするものである。

日本語教育のための教員養成について
平成12年3月30日
日本語教員の養成に関する調査研究協力者会議

1の内容の記載がありますね。
「今回新たに示す教育内容を参考として」とあるので、この指針から変化した点だとわかります。
1は適当な内容です。

同じく、P8を見てみましょう。

② 各養成機関においてどのような教育課程を編成するかは,今回新たに示す教育内容を参考としてそれぞれの日本語教員養成機関の自主的な判断に委ねようとするものである。したがって,教育課程編成に際しての枠組みとなる標準単位数や,従来設けられていた主専攻・副専攻の区分は設けず,今後は,各大学等の教育目的がより一層実現しやすいようにするものである。

日本語教育のための教員養成について
平成12年3月30日
日本語教員の養成に関する調査研究協力者会議

2の内容の記載がありますね。
「今後は…」とあるので、この指針から変化した点だとわかります。
2は適当な内容です。

ちなみに、問2で出てきた P29「4 日本語教員養成のための標準的な教育内容」で主専攻・副専攻の必要単位数が示されていますが、これは本文にもある通り、昭和60年の「日本語教員の養成等について」の内容が再掲されているだけです。
「平成12年指針にも主専攻・副専攻の区別がある」という内容ではないので注意してください。

選択肢3は、問2がヒントになっています。
P29「4 日本語教員養成のための標準的な教育内容」において、一般の日本語教員養成機関における標準的な教育内容と必要な時間が

1-(1) 日本語の構造に関する体系的、具体的な知識 150時間
1-(2) 日本人の言語生活等に関する知識・能力 30時間
2 日本事情 15時間
3 言語学的知識・能力 60時間
4 日本語の教授に関する知識・能力 165時間

「4区分・計420時間」あることが示されています。
ただし、選択肢2で解説した通り、この内容は「平成12年指針」で新しく出たものではなく、昭和60年の「日本語教員の養成等について」で既に提示されているものです。

(注) 4及び5は,「日本語教員の養成等について」(昭和60年5月 文部省日本語教育施策の推進に関する調査研究会報告)による。

日本語教育のための教員養成について
平成12年3月30日
日本語教員の養成に関する調査研究協力者会議

の記載がありますね。

「平成12年指針で変化した点」ではないので、3は不適当な内容です。

問2・問3の選択肢3の解説の通り、昭和60年の「日本語教員の養成等について」で提示された標準的な教育内容は「4区分」でした。

「平成12年指針」のP13では、

社会・文化・地域に関わる領域
教育に関わる領域
言語に関わる領域

という「3領域」

社会・文化・地域
言語と社会
言語と心理
言語と教育
言語

「5区分」が提示されています。

「平成12年指針」で内容が変化していますね。
4は適当な内容です。

3が正解です。

問4 平成12年指針における教育内容に関する課題

その答えになる理由

出典元はこちら

P9を見てみましょう。

(1)「平成12年教育内容」について指摘されている課題

「平成12年教育内容」については、様々な課題が指摘されているが、主として

① 多様な教育内容や学習者のニーズ等に対応する幅広い教育内容が示されているが、様々な活動分野や役割に応じた資質・能力や教育内容は示されていない。

② 三つの教育領域・五つの区分とそれに対応する教育内容の例等を示しているが、必ず学習すべき内容が明確に示されていない。

③ 提示以来18年が経過していることから、大学等における教育・研究の進展や社会情勢の変化に対応できていない。

日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)改訂版
平成31年3月4日
文化審議会国語文化会

とあり、②の内容が選択肢2と合致しますね。
2が正解です。

③の内容と選択肢3が少し引っかかったので調べてみたのですが、これは平成12年指針で示されている昭和60年報告の課題ですね。

(2)日本語教員養成の教育内容の課題について
 昭和60年に上記の報告が出され,日本語教員養成が着実に推進されてきた現在,日本語教員養成における最も大きな問題として,「標準的な教育内容」に示された主専攻・副専攻の区分やそこに掲げられている教育事項が,現在の日本語教育において求められている課題に対して,次に述べるように適切に対応したものとなっていないことがあげられる。

 まず,第一点として,日本語教育の内容については,昭和60年以降の社会状況の変化や日本語教育学をはじめとした関係学問の成果を踏まえ,例えば社会言語学やコミュニケーション学,情報メディアの活用などに関する教育内容を取り入れたり,実践的な教育能力の育成を図るなど,日本語学習者の多様な学習需要に適切に対応した教育内容へと改善を図っていくことを検討する必要に迫られている。

日本語教育のための教員養成について
平成12年3月30日
日本語教員の養成に関する調査研究協力者会議

問5 日本語教育人材の役割

その答えになる理由

出典元はこちら

P20を見てみましょう。

日本語教師は、その段階に応じて「養成」「初任」「中堅」の3つに区分されています。

養成日本語教師を目指して、日本語教師養成課程等で学ぶ者。
初任日本語教師養成段階を修了した者で、それぞれの活動分野に新たに携わる者。
※ 当該活動分野において0~3年程度の日本語教育歴にある者。
中堅日本語教師として初級から上級までの技能別指導を含む十分な経験(2,400単位時間以上の指導経験)を有する者。
※ 当該活動分野において3~5年程度の日本語教育歴にある者。
日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)改訂版
平成31年3月4日
文化審議会国語文化会

1が正解です。

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