令和5年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅲ 問題17
の解説です。
お手元に、問題冊子をご用意の上でご確認ください。
前の問題はこちら
アウトラインの作り方
何について、どのように書かなければならないかを整理する
「高齢者の運転免許の返納」に関する文章を読む場合、どのような授業を展開するとよいと思うか?
- 中級の読解クラス
- 初級のクラスでは、あまりトップダウンの読み方を練習してこなかった
- ピア・ラーニングを取り入れて授業を行っている
- 400字程度
- ピア・ラーニングの良さを生かす
- トップダウンの読み方を促すことができる
- 50分の授業1回分
- 「スキーマ」「仮説」「能動的な読み」「相互作用」のキーワードを複数使用する
- トップダウンでの読み方を促す意義も説明
「中級の読解クラス」の具体的なイメージが湧かない…
「中級であれば、このレベル!」ではなく、
- 1つ1つの語彙・文型を丁寧に説明する必要がある「初級レベル」の導入まではいらない
- 読解内容を議論するような「上級レベル」のタスクまでは求められていない
というような極端な難易度のものを避けることができれば、それで問題ありません。
今回は、「ピア・ラーニング」という指定があるので
- 初級レベルに多い、読んで個々が発表するだけの授業内容
- 上級レベルに多い、読んだあとにディベートなどを実施する授業内容
は自然と避けられるようになっています。
また、「読解クラス」なので、
- 読むのはそこそこにして、ペアの会話練習へGO!
という内容は求められていません。
これも、トップダウンの読み方について触れなければならない設定上、自然と避けれるはずです。
「400字程度」ってどれくらいまでが許容範囲?
記述式問題の解答用紙は、20字×21行=420字でマス目が印刷されています。
±1行以内として、400字よりも少ない場合は380字以上・多い場合は420字以内に収めるようにしましょう。
採点基準は公表されていませんが、極端に字数の不足・過多がある場合は、そもそも採点されないこともありえます。
キーワードの確認
解説 ピア・ラーニング
解説 トップダウン処理
前後の文脈から語の意味を類推したり、聴解の際に聞こえてくる音から場面を想像したりすることなどが該当します。
読解(聴解)で、あらかじめタスクを与えておき、必要な情報を探し出す「スキャニング」や、全体の大意をつかむ「スキミング」によってそれに答えさせる「タスク・リーディング(リスニング)」などが、トップダウン処理の練習につながります。
解説 ボトムアップ処理
解説 スキーマ
…ピンとこないですよね。
動詞の「タ形」であれば、
食べる → 食べた
見る → 見た
の事例から「語幹+タ」のスキーマが抽出できる…といったイメージです。
具体的な事例から、抽象的な法則や枠組みを抽出した際の「法則」や「枠組み」がスキーマに当たります。
「形式スキーマ」と「内容スキーマ」に分類することができます。
解説 形式スキーマ
解説 内容スキーマ
書きやすいキーワードの組み合わせを考える
どの受験生も、授業の大きな流れは
- 「高齢者の運転免許の返納」に関する文章をトップダウン処理で読む
- 読んだ内容について、ピア・ラーニングとなるように、何らかの学習者の協同作業を実施する
で共通するはずです。
読解自体をピア・ラーニングで行うこともできますが、「初級クラスであまり行ってこなかったトップダウンの読み方の練習」なので、①②は分けた方が良いですね。
今回、満たさなければならない条件は、
- 400字程度
- ピア・ラーニングの良さを生かす
- トップダウンの読み方を促すことができる
- 50分の授業1回分
- 「スキーマ」「仮説」「能動的な読み」「相互作用」のキーワードを複数使用する
- トップダウンでの読み方を促す意義も説明
でした。
- スキーマ
- 仮説
- 能動的な読み
- 相互作用
のキーワードを「ピア・ラーニング」「トップダウンの読み方」にどう絡めるかがポイントです。
「なぜ、高齢者の運転免許の返納が必要なのか?」
「どれくらい高齢者の運転免許が返納されているのか?」
などの質問事項を学習者に提示することで、文章の展開についてのスキーマが活性化し、トップダウンによる能動的な読みにつなげることができる。
「高齢者の運転免許の返納が求められているのは、交通事故の多さからではないか?」
「車が必要な地域では、返納が進んでいないのではないか?」
などの仮説を考えてから読むことで、トップダウンによる能動的な読みにつなげることができる。
だと、トップダウンに絡めて2つのキーワードを消化できて書きやすそうですね。
- トップダウンの読み方を促すことができる
- トップダウンでの読み方を促す意義も説明
をキーワードを使いながらクリアすることができます。
また、
読んだ内容を発表しあうピア・ラーニングの活動を実施することで、1人で読んだだけでは把握できなかった内容を学習者同士で補完する相互作用が期待できる。
であれば、
- ピア・ラーニングの良さを生かす
をキーワードを使いながらクリアすることができます。
個人的には、「スキーマ×能動的な読み」「仮説×能動的な読み」あたりで早めにキーワードを消化しておくのが、文字数の調整がしやすくておススメです。
段落構成を考える
時系列で段落分けする場合
この段落構成の場合、1段落目・2段落目ともに200字程度が目安になります。
授業内容・意図で段落分けする場合
この段落構成の場合、1段落目が100字程度・2段落目が300字程度が目安になります。
書きながらチェックする内容
満たしていない条件はないか?
今回の条件は、
- 400字程度
- ピア・ラーニングの良さを生かす
- トップダウンの読み方を促すことができる
- 50分の授業1回分
- 「スキーマ」「仮説」「能動的な読み」「相互作用」のキーワードを複数使用する
- トップダウンでの読み方を促す意義も説明
でした。
問題文に線を引いていっても良いのですが、上記のように箇条書きにしてみると、漏れなくチェックすることができます。
本文を書き終えてからだと修正が難しいため、書きながら項目を1つずつ消していきましょう。
誤字・脱字はないか?
漢字が間違っていた場合は減点対象ですが、漢字で書けそうなところがひらがなになっていても減点されることはありません。
不安になるくらいであれば、ひらがなにしたり、漢字を使わない表現にしましょう。
最後に
記述式問題は、1回解いて終わりではなく、複数回取り組むのがおススメです。
やっていくうちに、やり方がパターン化できていくので、
- 日にちを空けて、再チャレンジしてみる
- 前回とは違う立場で書いてみる
- 前回とは違うキーワードを使って書いてみる
など、自身の勝ちパターンを増やしていきましょう。