令和5年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅲ 問題7
の解説です。
お手元に、問題冊子をご用意の上でご確認ください。
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問1 教師が母語話者と接触する活動の利点
解説 フォリナー・トーク
ゆっくり話す
簡単な語彙を使用する
などが該当します。
解説 ティーチャー・トーク
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
教師であれば「フォリナー・トーク」「ティーチャー・トーク」で学習者に配慮することがありますが、インタビューの相手が学習者のレベルに合わせて日本語を調整してくれるかは、その相手次第です。
4にもあるように、学習者に合わせて調整されていない日本語に触れられることが、この活動の利点ですね。
1は間違いです。
日本人学生へのインタビューに限らずですが、母語話者が話したいことと学習者が聞きたいことは必ずしも一致するわけではありません。
その環境下で上手く意義のある情報を得られるかが、この活動の肝ですね。
2は間違いです。
文法構造や使用上のルールなどの解説を受けるのは教室内での活動・それらを使ってインタビューしてみるのが教室外での活動です。
インタビュー相手の母語話者から細かな解説を受けることはありません。
3は間違いです。
4は何も問題ありません。
これが正解です。
問2 インタビューの際の留意点
質問を「答え方の自由度」で分類したのが「オープン・クエスチョン」「クローズド・クエスチョン」です。
解説 オープン・クエスチョン
「●●について、どう思いますか」
「●●を選んだのは、なぜですか」
などが該当します。
解説 クローズド・クエスチョン
「赤色は好きですか → はい/いいえ」
「赤色と青色はどちらが好きですか → 赤色が好きです」
などが該当します。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
質問形式は、インタビューそのものの内容や相手の答えやすさに応じて変えていった方が良いですね。
ある程度方向性が決まっているのであればクローズド・クエスチョン、ざっくばらんに始めるときはオープン・クエスチョン、相手が答え方に迷っているときはオープン・クエスチョンからクローズド・クエスチョンのように変えてみるのが有効だと思います。
オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンの順番が固定されているわけではありません。
1は間違いです。
インタビューで大切なのは、相手への失礼にならないようにしながら、最大限有意義な情報を得ることです。
「答えやすい場の雰囲気」も大切な要素の1つなので、話し方を工夫するのはアリですね。
2は間違いです。
質問が多岐に渡っていたり・飛躍していたりすると、相手も上手く答えることができません。
事前に質問項目を整理し、どのような順番で聞いていくのが良いかを決めておくのが良いですね。
3が正解です。
日本人学生へのインタビューに限らずですが、母語話者が話したいことと学習者が聞きたいことは必ずしも一致するわけではありません。
限られた時間の中で有意義な情報を得る必要があるので、回答がテーマから外れた場合は修正が必要ですね。
4は間違いです。
問3 アポイントを取るメールで、相手への配慮の観点から問題となる語用論的な誤りの例
その答えになる理由
「語用論」とは、言語表現・話し手/聞き手・文脈の関係を研究する分野です。
「この部屋、暑いね」と聞いたときに、文法分野である統語論では
「この『ね』は終助詞で…」
ですが、統語論では
「『窓を開けて』という解釈では…」
と捉えます。
「相手への配慮の観点から問題となる語用論的誤り」なので、
- 文法的には間違っていないが
- 相手に失礼な内容になっている
ものが正解です。
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1は、「答えてくだされば」とすべきところが「答えてくださったら」になっています。
明日学校が終わったら、すぐにここに来てください。
この戦いが終わったら、結婚しよう。
のように、「~たら」の後ろに続くのは意志・勧誘・命令などの表現です。
今回は「とてもありがたいです」なので、「~ば」でないと不自然ですね。
文法的な誤りなので、1は間違いです。
2は、「就職活動についての」とすべきところが「就職活動に対する」になっています。
質問に対する答え
投稿に対する反響
のように、「対する」が意味しているのは「こたえる・応じる」です。
今回は「就職活動」という特定のテーマについての内容なので、複合格助詞の「について」が自然ですね。
文法的な誤りなので、2は間違いです。
3は、「やらせていただけませんか」とすべきところが「やらさせていただけませんか」になっています。
いわゆる「さ入れ言葉」ですね。
また、口頭であればギリギリOKかもしれませんが、メールのような文面であれば「やらせていただけませんか」よりも「させていただけませんか」の方が無難です。
前半が文法的な誤り・後半が語用論的な誤りなので、3は間違いです。
4は、「○○さんのご都合に合わせます」などが良さそうですね。
「○○さんが決めてもいいです」が文法的に間違っているわけではありませんが、母語を直訳した上から目線の失礼な内容になってしまっています。
語用論的な誤りなので、4が正解です。
問4 配布資料を作成する際の留意点
その答えになる理由
フォントの統一は、資料作成の基本です。
見出しと本文で変えることはありますが、使っても2種類までですね。
1は間違いです。
数値の羅列ではわかりにくい割合や順位は、グラフを活用することでイメージしやすくなります。
2が正解です。
配布資料と発表内容で用語や順番が異なると、聞いている側は資料のどの部分を説明しているかがわからないですね。
3と4は間違いです。
問5 振り返りシートを用いた学習者参加型評価の利点
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
決めておいた順でインタビューできましたか?
できた 5・4・3・2・1 できなかった
のように振り返りを数値化することはできますが、あくまで学習者の主観によるものなので序列化まではできません。
1は間違いです。
教師側に評価の知識と経験が必要なように、学習者の自己評価もいきなりできるようにはなりません。
2は間違いです。
自己評価のデメリットは、学習者ごとに評価の仕方・結果がバラついてしまうことです。
最終的な評価は教師側でする必要があるため、教師だけの評価よりも時間がかかります。
3は間違いです。
4は何も問題ありません。
これが正解です。