令和6年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅰ 問題12
の解説です。
執筆時点では、正式解答は公表されていません。
参考の1つとして、ご確認ください。
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問1 東西対立分布
解説 東西対立分布
買った ⇔ 買うた
のような撥音便⇔ウ音便の対立や、
しろく ⇔ しろう
のような非音便⇔ウ音便の対立などが例として挙げられます。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見てみましょう。
1の
見よ
は、主に京都などので見られる方言
見い
は、主に大阪などで見られる方言ですね。
西同士での対立なので、東西対立分布の例ではありません。
2の
山じゃ
は、主に中国地方で見られる方言
山や
は、主に近畿地方で見られる方言ですね。
西同士の対立なので、東西対立分布の例ではありません。
3の
散っとる
は、主に山口県で見られる方言
散りよる
も、主に山口県で見られる方言ですね。
西同士の対立なので、東西対立分布の例ではありません。
4の
白く
は、主に東日本で見られる方言
白う
は、主に西日本で見られる方言ですね。
これが東西対立分布の例です。
問2 方言コンプレックス
解説 方言コンプレックス
その答えになる理由
方言コンプレックスとは、「自身の方言で話すのが恥ずかしいので、あまり使いたくない」という感情を表します。
2がピッタリですね。
これが正解です。
問3 気づかない方言
解説 気づかない方言
解説 方言コスプレ
解説 新方言
解説 ネオ方言
方言の
けーへん
と共通語の
こない
が混交した
こーへん
などが例として挙げられます。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1のように、特定の地域の出身者を想起させるような言葉遣いを用いるのは、方言コスプレの内容です。
2のように、くだけた場面で用いられる共通語・伝統方言の両者に共通しない新しい方言は、新方言の内容です。
3のように、共通語と同じ語形ではあるものの、特定の地域では意味が異なるのは、気づかない方言の内容です。
4のように、共通語と地域方言の中間的な語形を用いるのは、ネオ方言の内容です。
問4 待遇表現における共通語には見られないが方言には見られる用法
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
関西地方の方言には、
母が家にいてはる。
のように、他者に自分の身内のことを話すときに用いられる尊敬語があります。
1は、正しいです。
昔は敬意が高かった言葉が、時間の経過とともに度合いが薄まっていく現象のことを「敬意逓減の法則」と言います。
お前
貴様
などが代表例です。
これは、方言に限定されたものではないですね。
2は、間違いです。
「尊大語」とは、
俺様
のように、話し手自身を高く位置付けて話すもののことです。
これも、方言に限定されたものではないですね。
3は、間違いです。
お味噌汁
ご飯
のような食べものや
お体
お耳
のような身体の部分のことを話すのに「美化語」を用いることはありますが、これも方言に限定されたものではないですね。
4は、間違いです。
問5 共通語の発音の特徴
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
「肩」が「カダ」になるように、語中のタ行音が濁音化するのは、共通語ではなく、東北地方の方言に見られる現象ですね。
1は、間違いです。
「ごま」のような語頭の「ご」は、
[ɡ] 有声軟口蓋破裂音
ですが、
「りんご」のような語中の「ご」は、
[ŋ] 有声軟口蓋鼻音
のように、鼻濁音化します。
2は、間違いです。
共通語では、
お体を大事にしてください。
の「お」と「を」は、いずれも[o] 円唇後舌中母音で発音されます。
『都道府県別全国方言辞典』(三省堂)によれば、「お」と「を」を明確に区別するのは、愛媛県の方言だそうです。
3は、間違いです。
私の職業は、日本語教師です。
を発音したときに、文末の「す」が無声音化するのがわかると思います。
4は、正しいです。