
令和4年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅰ 問題5
の解説をしていきます。
お手元に、以下をご用意の上で読んでいただければ幸いです。
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前の問題はこちら
問1 ディベート
解説 ディベート
「ディベート」とは、あるテーマに対して自信の信念・意見とは関係なく「賛成派」「反対派」に分かれて、一定のルールのもとに論争する討論形式の活動のことです。
中級以上のクラスで行われることがある「ディスカッション」とは異なるものなので、注意しましょう。
「ディスカッション」は学習者が自身の意見を述べ合う討論形式ですが、「ディベート」は機械的に振り分けられた側の立場で意見を述べ合う討論形式です。
また、テーマに正解がないのはどちらも共通していますが、「ディベート」は制限時間で行った中で何らかの基準で勝敗をつけるというゲーム要素を持っていることも違いの1つです。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1は、「直感で決めた自分の立場」が間違いです。
ディベートでは機械的に「賛成派」「反対派」に振り分けられ、その立場固定で論争を行います。
2は、「中立で客観的な立場」が間違いです。
ディベートでは機械的に「賛成派」「反対派」に振り分けられ、その立場固定で論争を行います。
3は、「勝敗の判定は不要」が間違いです。
基準は様々ですが、何らかの形で勝敗をつけるのがディベートの特徴の1つです。
4は、何も問題ありません。
「賛成派」「反対派」に分かれるため、ディベートで複数のテーマを取り扱うことはできません。
問2 メタ言語
解説 対照言語学
私は大学で言語学の基礎は一通り履修したのですが、「対象言語」という用語が単独で出てきたことはなかった…はずです。
「対照言語学」のことを指しているかと思いますので、そちらの解説をします。
「対照言語学」とは、言語学の下位分類で、複数の言語における言語上の類似点や相違点を明らかにしようとする分野のことです。
複数の言語を比べる際は、歴史的に同系であることを問わないという前提があります。
似た名称で「比較言語学」という分野があります。
「比較言語学」には、同系である複数の言語を歴史的観点から比べるという前提があります。
ここまで試験で聞かれることはないと思いますが…
「対照言語学」は同系であるかは前提とせずに複数言語を歴史的観点を交えることなく比べる分野、「比較言語学」は同系である複数言語を歴史的な観点から比べる分野だと言えます。
解説 照会言語
この用語は、日本語教育も言語学も全く関係ないですね。。
私はプログラミング関連が好きなので偶然知っていましたが、ほとんどの方は初見だったと思います。
「照会言語」とは、データベースの管理に用いられる言語のことです。
データベースから情報を照会・抽出・並べ替えなどを行うときに使われます。
代表的なものとして挙げられることが多いのは、SQLです。
出題されたので解説しましたが、覚えなくて大丈夫です…!!
解説 パラ言語
「パラ言語」とは、音声で伝わる情報のうち、スピード・声の大きさなどの言語情報以外のもののことです。
イントネーションの一部が含まれることもあります。
解説 メタ言語
「メタ言語」とは、ある言語について記述するために用いられる言語のことです。
よく例として挙がるのは、辞書です。
その答えになる理由
「言葉の意味を説明するために用いられる言語」は「メタ言語」の説明そのままですね。
4が正解です。
問3 コロケーション
解説 コロケーション
「コロケーション」とは文や句における語の慣用的なつながりのことです。
「連語法」とも言います。
「将棋を指す」「囲碁を打つ」とは言うが「将棋を打つ」とは言わないのは、コロケーションの影響によるものです。
その答えになる理由
コロケーションの誤用例なので、語と語の慣用的なつながりに間違いがあるものを探しましょう。
そもそもの語選択や文法の間違いではなく、「意味的には合っているが、言い方がしっくりこない…」がヒントです。
1は、「関心する人」ではなく「関心を持つ人」の方が自然ですね。
文法的な間違いなので、コロケーションの誤用例ではありません。
2は、「未来」ではなく「遠い未来」「将来」などの方が自然ですね。
語選択の間違いなので、コロケーションの誤用例ではありません。
3は、「許可を聞く」よりも「許可を得る」「許可を取る」などの方が自然ですね。
「意味的には合っているが、言い方がしっくりこない…」間違いなので、コロケーションの誤用例として適当です。
4は、「了解」ではなく「推測」「想像」などの方が自然ですね。
語選択の間違いなので、コロケーションの誤用例ではありません。
3が正解です。
問4 支持文
その答えになる理由
「パラグラフ」は直訳すれば「段落」ですが、レポートや論文の場合はそのままの意味ではありません。
小中学生あたりの国語で、「形式段落」と「意味段落」を習ったかと思います。
「形式段落」は1マス空けて書かれているパッと見でわかる段落、「意味段落」は文章の内容で分けられた複数の形式段落の集まりのことです。
レポートや論文における「パラグラフ」は、「形式段落」よりも「意味段落」に近いイメージです。
今回はレポートや論文を「読む側」ではなく、「書く側」の内容ですね。
どのようなパラグラフ構成にすれば「読む側」が1つの内容として理解しやすいか…そのために必要なのが「中心文」と(ア)だとされています。
1番大切なことは、1つのパラグラフで言及するテーマは1つに絞ることです。
また、テーマを絞った上で、まずは結論を述べてから補足していくと「読む側」が理解しやすくなります。
(と卒業論文の作成時に、指導教官から熱くご指導いただきました…!!)
これは、ビジネス文書でも同様ですね。
「●●と考えています。その理由は…」といった形です。
本文では、上記の「結論」を「中心文」として述べています。
(ア)は「結論(=中心文)」を補足する内容なので、「支持文」が良いですね。
1が正解です。
問5 文章評価の方法
その答えになる理由
来ました!サービス問題です!
大問の中の小問は、難易度順に並んでいるわけではありません。
前の問題4でも同様でしたが、「きちんと読めば正解できる問題」が後半に配置されているのは日本語教育能力検定試験あるあるです。
観点が分かれているのであれば、総合評価だけでなく、それぞれについても評価した方が良いですね。
1は間違いではありません。
減点方式の場合、誤字脱字のようなミスと構成の誤りのようなエラーでは配点を分けた方が良いですね。
2は間違いではありません。
「学習者の産出を見てから評価基準を決めて評価する」というのは、「今回は全員出来が悪かったから、評価基準を下げよう…!!」といったケースです。
評価基準がブレブレなのは良くないですね。
3が間違いです。
加点式・減点式のような尺度ではなく「●段階評価」の場合、「A先生の採点だと3だけど、B先生の採点だと4…」といったケースが考えられます。
その場合は、複数の採点者の点数を平均化する…などの評価方法が良いですね。
4は間違いではありません。