平成29年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅲ 問題10
の解説です。
お手元に、問題冊子をご用意の上でご確認ください。
前の問題はこちら
問1 談話構成
解説 新旧レトリックアプローチ
「新旧レトリックアプローチ」とは、オーディオリンガル・メソッドの流れで考案された、談話の構造や談話のパターンを学ばせる教授法のことです。
解説 ナチュラル・アプローチ
「ナチュラル・アプローチ」とは、テレルによって提唱・クラッシェンによって理論化された成人のための外国語教授法のことです。
● 学習者が自然に話し出すまで、発話を強制しない
● 学習者の発話に誤りがあっても、不安を抱かせないために直接的な訂正は行わない
● 学習者が話し始める前の段階では聴解のみ行い、動作による反応や「はい」「いいえ」のみで理解を確認する
といった特徴があります。
解説 制限作文アプローチ
「制限作文アプローチ」とは、既習項目の定着・正確な運用を目的として、特定の文型や表現を使って書かせる教授法のことです。
何が書かれているかという内容面よりも、文型や表現が正しく使われているかという形式面が重視されます。
フリーズが提唱した「オーディオ・リンガル・メソッド」の考え方がベースになっています。
解説 プロセス・アプローチ
「プロセス・アプローチ」とは、学習者が作文を仕上げていく過程を重視した教授法のことです。
文章を書く行為における推敲・修正の繰り返しにより思考が深まり、文章が改善されていくとされています。
教師が一方的に添削するのではなく、学習者自身がテーマ設定して構想した内容を文章として具現化できるように、草稿段階からサポートしていくのが特徴です。
また、推敲段階で教師だけでなく、他の学習者による助言を受けることもあります。
その答えになる理由
設問にある「様々なジャンルの談話構成パターンを指導する」が「新旧レトリックアプローチ」の内容にあたります。
1が正解です。
問2 ライティングプロセスの認知モデル
解説 ライティングプロセスの認知モデル
「ライティングプロセスの認知モデル」とは、フラワーとヘイズにより提唱された、「書く」過程におけるどのように認知が進むと説明した理論のことです。
「書く」過程は、「計画を立てる」「書く」「推敲する」の3つの段階を行き来しており、それぞれの段階でその過程が適切に行われているかを書き手がモニターする仕組みがあるとされています。
また、モニターには長期記憶とワーキングメモリが関係しており、長期記憶から必要な情報を取り出して書いたり、モニターに役立てたりする。ワーキングメモリにはこれまでに書き上げた内容が記憶されているとされています。
その答えになる理由
「ライティングプロセスの認知モデル」では、3つの段階を行き来しながら認知が進んでいくとされています。
1は間違いです。
文章を書くにあたって必要な知識は「長期記憶」から取り出されます。
2と3は間違いです。
4は何も問題ありません。
これが正解です。
問3 熟練した書き手と未熟な書き手の違い
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
未熟な書き手は、文章の全体観よりも、表記の正しさなどの形式面を注視する傾向にあります。
1は間違いではありません。
未熟な書き手は、文章全体ではなく、一文ごとに考えを練る傾向にあります。
2は間違いではありません。
熟練した書き手は、未熟な書き手よりも継続的・複線的に文章を書き進める傾向にあります。
3は間違いではありません。
熟練した書き手は、未熟な書き手よりも「構想」に時間をかけて文章化を書き進める傾向にあります。
4が間違いです。
問4 ライティングプロセスを考慮した指導の方法
その答えになる理由
問2の解説より、ライティングプロセスを考慮した指導では、学習者自身がテーマ設定した内容について推敲を重ねていきます。
3が正解です。
問5 ピア推敲
解説 ピア推敲
「ピア推敲」とは、個人学習や教師からの一方的な指導ではなく、学習者同士で作文を読み合い推敲していく活動のことです。
その答えになる理由
1が明らかに間違いですね。
これが正解です。