令和元年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅰ 問題3C
の解説です。
お手元に、問題冊子をご用意の上でご確認ください。
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(11) 助詞
その答えになる理由
1 「彼はやりとげたのだ」
準体助詞「の」+断定の助動詞「だ」
2 「もう暖かくなった」
副詞「もう」
3 「赤より青が好きだ」
比較の起点を表す格助詞「の」
4 「私の趣味は本を読むことです」
(形式)名詞「こと」
3が正解です。
解説 準体助詞
「準体助詞」とは、体言や活用語の連体形などについて、体言のようになる助詞のことです。
「このカバンは私のです」「音楽を聴くのが好きだ」
解説 形式名詞
「形式名詞」とは、その語の表す実質的意義が薄れて、常に連体修飾語を受けて使用される名詞のことです。
「漢字を書くことが苦手だ」「お休みのところ、失礼します」
(12) 取り立て助詞
解説 取り立て助詞
「取り立て助詞」とは、文中の要素の中からある単語を取り立てて、特別な意味を加える助詞のことを言います。
「赤色も好きです」であれば、
● 「赤色が好き」という明示
● 「他にも好きな色がある」という暗示
を表しています。
その答えになる理由
1は「並列助詞」の説明です。
「赤と青が好きです」
2は「モダリティ」の説明です。
「彼が犯人かもしれない」
3は「格助詞」の説明です。
「古い本を読む」
「古い本」という名詞句と「読む」という述部を結びつけ、意味的・統語的関係を表しています。
4が「取り立て助詞」の説明です。
(13) 「も」の基本的な用法
解説 「も」の基本的な用法
取り立て助詞「も」は、
「赤も青も好きです」
「私も日本語を勉強しています」
のように、他の事柄と同様であるという「並立」「付加」が基本的な用法です。
解説 共起
「共起」とは、2つの別の語が1つの文や句の内部で同時に用いられる現象のことです。
品詞の用法の名称として…というよりも、
「『●●』という語は他のどんな語と一緒に使われることが多いか」
→「『●●』は『〇〇』と共起することが多い」
と使う用語です。
例文を考えるときに使う考え方です。
※ 共起の例を調べるのは、以下が便利です。
国立国語研究所 コーパス
その答えになる理由
1がそのままですね。
これが正解です。
(14) 命題の取り立て
解説 命題
文は「命題」と「モダリティ」から成り立っています。
「命題」は文の骨格とも言える事柄を表し、「モダリティ」は話し手の心的態度を表します。
「彼が犯人のようだ」であれば
● 彼が犯人だ → 文の骨格となる「命題」
● ようだ → 話し手の心的態度を表す「モダリティ」
です。
その答えになる理由
直前の要素だけでなく、命題を取り立てている選択肢を探します。
「早くも」「来年にも」
直前の要素を取り立てているので、1は間違いです。
「日本でも」「海外でも」
直前の要素を取り立てているので、2は間違いです。
「来ても」「来なくても」
直前の要素を取り立てているので、3は間違いです。
「頭も冷やしたし」 → 頭以外も冷やしたわけではない
「薬も飲んだし」 → 薬以外も飲んだわけではない
「『頭を冷やす』『薬も飲む』以外も色々と試みた」という内容が取り立てられているので、4が正解です。
(15) 「意外さ」の用法
その答えになる理由
「たとえ子どもでも、ルールは理解できる」
意外性を表す場合でも「たとえ」と共起できています。
1は間違いです。
「数量+も」は、想定よりも数量が多かったことを表します。
2が正解です。
「交通ルールは、子どもさえ知っている」
意外性を表す場合でも特別な文脈を必要としないので、3は間違いです。
「子どもまで駆り出される」
「子ども」と連続性のある「大人」も駆り出されていることが暗示されています。
4は間違いです。