令和元年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅲ 問題10
の解説です。
お手元に、問題冊子をご用意の上でご確認ください。
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問1 談話能力
解説 談話能力
「談話能力」とは、会話の切り出し方や、発話の順番の取り方等の「発話を理解し構成する能力」のことです。
伝達能力を構成するものの1つで、文よりも上のレベルに位置付けられています。
カナルが唱えた伝達能力の1つで、談話能力以外は以下の通りです。
● 文法能力 … 語や文法などを正確に使用できる能力
● 社会言語学的能力 … 相手や場面に応じて、適切な表現を使用できる能力
● ストラテジー能力 … コミュニケーションを円滑に行うための能力
今回のように、同じ設問内の選択肢で聞かれることが多い分野なので、まとめて覚えてしまいましょう。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
目上の人に「すごい」は不適切です。
相手や場面に応じて、適切な表現を使用できる能力(=社会言語能力)が欠如しています。
「談話能力」ではないので、1は間違いです。
目上の人に「聞きたいですか」は不適切です。
相手や場面に応じて、適切な表現を使用できる能力(=社会言語能力)が欠如しています。
「談話能力」ではないので、2は間違いです。
「面白かったです」とすべきところを「面白いでした」の間違いですね。
話や文法を正確に使用できる能力(=文法能力)が欠如しています。
「談話能力」ではないので、3は間違いです。
「天気」の話題から、急に「論文」の話題に変わっています。
発話を理解して構成することができていないので、談話能力の欠如です。
4が正解です。
問2 談話標識 ディスコースマーカー
解説 談話標識 ディスコースマーカー
「談話標識(ディスコースマーカー)」とは、談話において、その後内容がどう続くかを知る手がかりとなる言葉のことです。
ところで … 話題が変わる合図
しかし … 逆の内容が来る合図
その答えになる理由
2のみ、そこで話が終わったと判断できます。
これが正解です。
問3 スクリプトを考慮したモデル会話
解説 スクリプト
「スクリプト」とは、時系列に沿った連続する具体的な場面による知識構造のことです。
「シナリオ」「シーン」と同様のイメージです。
その答えになる理由
4が「スクリプト」の説明そのままですね。
これが正解です。
問4 トップダウン的な会話活動の例
解説 トップダウン処理
「トップダウン処理」とは、既に持っている背景知識を利用し、予測や推測をしながら理解していく言語処理方法のことです。
タイトルから内容を推測したり、前後の文脈から語の意味を推測したりすることなどが例として挙げられます。
解説 ボトムアップ処理
関連する用語もあわせて整理してしまいましょう。
「ボトムアップ処理」とは、文字や音から単語の意味を理解し、そこから文章全体の理解をする…というように、細かい部分から理解を進めていく言語処理の方法のことです。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
モデル会話に出てくる語や定型表現から理解を進めていくのは、「ボトムアップ」的な会話活動の例です。
1は間違いです。
モデル会話に出てくる文型から理解を進めていくのは、「ボトムアップ」的な会話活動の例です。
2は間違いです。
モデル会話の状況を先に把握させて理解を進めていくのは、「トップダウン」的な会話活動の例です。
3が正解です。
モデル会話に出てくる語や表現の発音から理解を進めていくのは、「ボトムアップ」的な会話活動の例です。
4は間違いです。
問5 語用論的転移(プログラマティック・トランスファー)
解説 語用論的転移(プログラマティック・トランスファー)
「 語用論的転移(プログラマティック・トランスファー) 」とは、文法的な間違いではなく、母語の影響を受けた不適切な表現使用のことです。
先生に対して「この本を読みたいですか」と言ってしまうように、文法的に間違っているわけではないが、それぞれの社会において適切な表現にちがいがあるために起きる誤用を指します。
その答えになる理由
3が「語用論的転移」の説明そのままですね。
これが正解です。