令和6年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅲ 問題5
の解説です。
執筆時点では、正式解答は公表されていません。
参考の1つとして、ご確認ください。
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問1 シャドーイングの留意点
解説 シャドーイング
イントネーションやアクセントなどの「プロソディ」の習得に有効だとされています。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1は、何も問題ありません。
これが正解です。
2は、「学習者のレベルよりも何度の高い教材」が違います。
シャドーイングでは、すべての言葉を繰り返す必要があるため、それができるレベル感の教材を選ぶべきです。
3は、「区切りごとに」が違います。
シャドーイングでは、区切りを設けずに、すべての言葉を繰り返して発話していきます。
4は、「区単位で」が違います。
シャドーイングでは、区切りを設けずに、すべての言葉を繰り返して発話していきます。
問2 ビルド・アップ練習法
解説 ビルド・アップ練習法
行きました。
↓
行きました。
図書館に行きました。
↓
図書館に行きました。
自転車で図書館に行きました。
↓
自転車で図書館に行きました。
友だちと自転車で図書館に行きました。
↓
友だちと自転車で図書館に行きました。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1では、
テニス
↓
テニスを
映画
↓
映画を
のように、格助詞を補って発話させていますね。
これは、パターン・プラクティスにおける代入練習の例です。
2では、
テニス
↓
買い物
買い物
↓
食事
のように、補語となる語を入れ替えて発話させていますね。
これも、パターン・プラクティスにおける代入練習の例です。
3では、
一緒にテニスをしませんか?
↓
一緒にテニスをしませんか?
一緒にテニスをしませんか?
のように、教師が提示した語や表現をそのまま繰り返して発話させていますね。
これは、パターン・プラクティスにおける発話練習の例です。
4では、
しませんか?
↓
しませんか?
テニスをしませんか?
↓
テニスをしませんか?
のように、文末から始めて、徐々に文を長くして繰り返しの発話をさせていますね。
これは、ビルド・アップ練習法の例です。
問3 パターン・プラクティスを行う際の留意点
解説 パターン・プラクティス
- 応答練習
- 代入練習
- 反復練習
- 変形練習
などがあります。
解説 応答練習
寿司は好きですか?
↓
はい、好きです。
納豆は好きですが?
↓
いいえ、好きではありません
解説 代入練習
「代入練習」とは、該当箇所を教師が提示した語や表現に入れ替える練習のことです。
日本語を勉強します。
数学。
↓
数学を勉強します。
寿司を食べます。
納豆。
↓
納豆を食べます。
解説 反復練習
「反復練習」とは、教師が提示した語や表現をそのまま繰り返させる練習のことです。
日本語
↓
日本語
本を読む
↓
本を読む
解説 変形練習
食べます
↓
食べました
泳ぎます
↓
泳ぎました
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
パターン・プラクティスは、単調な練習になりやすいです。
学習者が飽きてこないように、あまり長時間にならないようにする必要がありますね。
1は、パターン・プラクティスを行う際の留意点として適当です。
パターン・プラクティスは、簡単な文型の定着には向いていますが、複雑な文型には応用しづらいです。
文型項目ごとに、練習方法を変えた方が良いですね。
2は、パターン・プラクティスを行う際の留意点として適当です。
パターン・プラクティスは、単調な練習になりやすいです。
代入練習だけ…変形練習だけ…にならないように、練習方法をときどき変えて、学習者の適度な緊張感を保てると良いですね。
3は、パターン・プラクティスを行う際の留意点として適当です。
パターン・プラクティスは、あくまで簡単な文型における機械的な練習です。
学習者が意味を考えて行う練習ではなく、文型自体の定着には向いていますが、それ以外の効果を望むのであれば、パターン・プラクティス以外の練習方法を取り入れる必要がありますね。
4は、パターン・プラクティスを行う際の留意点として不適当です。
問4 ラポート・トーク
解説 ラポート・トーク
「ラポート」とはフランス語で「橋をかける」を意味します。
ラポート・トークの対義語は、「リポート・トーク」です。
情報のみを淡々と伝える話し方を指します。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1では、学習者の発言に対して、教師が情報のみを淡々と話しています。
これは、リポート・トークの例です。
2では、学習者の発言に対して、教師が話を掘り下げて話しています。
これは、ラポート・トークの例です。
3では、学習者の発言に対して、教師が情報のみを淡々と話しています。
これは、リポート・トークの例です。
4では、学習者の発言に対して、教師が情報のみを淡々と話しています。
これは、リポート・トークの例です。
問5 選択権
その答えになる理由
<資料>を見てみると、Bの学習者の回答内容となる四角の部分は、自由に語を入れられるようになっていますね。
回答内容には、学習者に選択権があることがわかります。
ただし、あくまで四角に入れられる語が自由なだけであって、文全体をどのように答えるかは固定されていますね。
言語形式については、学習者に選択権がないことがわかります。
- 回答内容 … 選択権あり
- 言語形式 … 選択権なし
なので、2が正解です。