平成28年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅰ 問題2
の解説です。
お手元に、問題冊子をご用意の上でご確認ください。
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(1)声帯振動の有無
試験Ⅰ 問題2は、「○ 学習者の誤用と異なる種類のもの」を選ぶ問題です。
「× 学習者の誤用と同じ種類のもの」ではないので、注意しましょう。
その答えになる理由
例文では「じゃ」と発音すべきところが「しゃ」になっています。
子音を音声記号で表すと、
【○】[ʑ] 有声歯茎硬口蓋摩擦音
【×】[ɕ] 無声歯茎硬口蓋摩擦音
のように「声帯振動の有無」が違いますね。
それでは、選択肢を見ていきましょう。
1は「うらない」と発音すべきところが「うなない」になっています。
子音を音声記号で表すと
【○】[ɾ] 有声歯茎弾き音
【×】[n] 有声歯茎鼻音
のように「調音法」が違いますね。
「声帯振動の有無」の誤用ではないので、これが正解です。
2は「だいがく」と発音すべきところが「たいがく」になっています。
子音を音声記号で表すと
【○】[t] 無声歯茎破裂音
【×】[d] 有声歯茎破裂音
のように「声帯振動の有無」が違いますね。
例文と同じ種類の誤用なので、2は間違いではありません。
3は「がんばって」と発音すべきところが「かんばって」になっています。
子音を音声記号で表すと
【○】[k] 無声軟口蓋破裂音
【×】[ɡ] 有声軟口蓋破裂音
のように「声帯振動の有無」が違いますね。
例文と同じ種類の誤用なので、3は間違いではありません。
4は「あるばいと」と発音すべきところが「あるぱいと」になっています。
子音を音声記号で表すと
【○】[p] 無声両唇破裂音
【×】[b] 有声両唇破裂音
のように「声帯振動の有無」が違いますね。
例文と同じ種類の誤用なので、4は間違いではありません。
(2)イ形容詞・ナ形容詞の混同
その答えになる理由
例文は、「寒くなりました」とすべきところが「寒くになりました」になっています。
「~になりました」は「掃除をして、部屋がきれいになりました」のようにナ形容詞に接続します。
「寒い」はイ形容詞なので、イ形容詞とナ形容詞を混同してしまった誤用ですね。
それでは、選択肢を見ていきましょう。
1は「無くなりました」と発音すべきところが「寒いになりました」になっています。
イ形容詞の「寒い」をナ形容詞と混同してしまった誤用ですね。
1は間違いではありません。
2は「良くなりました」と発音すべきところが「良いになりました」になっています。
イ形容詞の「良い」をナ形容詞と混同してしまった誤用ですね。
2は間違いではありません。
3は「細くなりました」と発音すべきところが「細いになりました」になっています。
イ形容詞の「細い」をナ形容詞と混同してしまった誤用ですね。
3は間違いではありません。
4は「緊張しました」と発音すべきところが「緊張になりました」になっています。
動詞「緊張する」をナ形容詞と混同してしまった誤用ですね。
この選択肢だけ、誤用の種類が異なります。
4が正解です。
(3)たくさん
その答えになる理由
例文は「よく」とすべきところが「たくさん」になっています。
選択肢を見ていきましょう。
1 × たくさん → ○ よく
2 × たくさん → ○ たくさんの
3 × たくさん → ○ よく
4 × たくさん → ○ よく
2だけ、「たくさん」が名詞を修飾するときの形の誤用ですね。
これが正解です。
(4)そうです
その答えになる理由
例文は「寒そうです」とすべきところが「寒いそうです」になっています。
意味が変わってしまっていますね。
「~の様子だ」と「様態」を表す場合は「寒い」の語幹に「そう」を接続します。
「~らしい」と「伝聞」を表す場合は「寒い」の普通形に「そう」を接続します。
今回は「様態」と「伝聞」を混同してしまった誤用ですね。
それでは、選択肢を見ていきましょう。
1は「難しそうです」とすべきところが「難しいそうです」になっています。
「様態」と「伝聞」を混同してしまった誤用ですね。
1は間違いではありません。
2は「降りそうな」とすべきところが「降るそうな」になっています。
「様態」と「伝聞」を混同してしまった誤用ですね。
2は間違いではありません。
3は「帰ってきたようです」とすべきところが「帰ってきたようです」になっています。
これだけ「様態」と「伝聞」の混同ではないですね。
様態の「そう」と推測の「よう」の混同による誤用です。
3が正解です。
3は「寂しそう」とすべきところが「寂しいそう」になっています。
「様態」と「伝聞」を混同してしまった誤用ですね。
4は間違いではありません。
(5)よ
その答えになる理由
例文は「大学生ですよ」とすべきところが「大学生ですね」になっています。
「よ」は、聞き手が知らないことに注意を向けさせるために使います。
一方「ね」は、聞き手が知っていると思われる事柄を述べるときに使います。
「よ」と「ね」を混同していない選択肢を探していきましょう。
1は「ええ」が不自然ですね。
「ええ」は自分が知っている場合に使うので、なんだか偉そうな感じになってしまっています。
この場合は、「あっ、そうですね」などの方が自然です。
1が正解です。
2は「こちらですよ」とすべきところが「こちがですね」になっています。
「よ」と「ね」の混同による誤用ですね。
2は間違いではありません。
3は「ヤンですよ」とすべきところが「ヤンですね」になっています。
「よ」と「ね」の混同による誤用ですね。
3は間違いではありません。
4は「とんでもありませんよ」とすべきところが「とんでもありませんね」になっています。
「よ」と「ね」の混同による誤用ですね。
4は間違いではありません。