平成28年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅲ 問題8
の解説です。
お手元に、問題冊子をご用意の上でご確認ください。
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問1 ディクトグロス
選択肢に出てくる用語を一通り確認しておきましょう。
解説 ディクトコンボ
「ディクトコンボ」とは、文章の一部をディクテーションさせた後に、続きを作文させる練習のことです。
解説 ディクトグロス
解説 ディクトグロス
「ディクトグロス」とは、「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能を組み合わせた練習のことです。
個人学習とピア・ラーニングを同時に行うことができる統合的な学習指導法です。
① 教師が短めの文章を複数回読み、学習者はキーワードなどを聞き取ってメモを取る。
② 学習者が各自、メモをもとに文章を復元する。
③ グループで話し合いながら、元の文章を完成させていく。
解説 ディクテーション
「ディクテーション」とは、音声教材等から聞き取った音を文字化していく聞き取り練習のことです。
解説 ディクタカンバセーション
「ディクタカンバセーション」は、会話の一方だけを聞いて書き取らせた後、内容に
合わせて返答を書く活動のことです。
その答えになる理由
今回の活動は、
① 教師がテクストを読み上げる
② 学習者がそれを聞き取る
③ 学習者をグループに分け、協同で内容を再構築する
ですね。
教師が読み上げたテクストを聞き取ってメモを取り、グループ内で他の学習者がメモした内容を読んだ上で話し合いを行います。
「聞く」「書く」「読む」「話す」の4技能を組み合わせた活動ですね。
「ディクトグロス」に該当するので、2が正解です。
問2 「テクスト」を選ぶ際の留意点
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
注意深く聞かなくても理解できるような簡単な文章では、学習者が聞き取りを行った段階で文章が完成できてしまいますね。
後半の活動につながらなくなってしまうため、1は間違いです。
1と同じく、簡単に字句を記憶できるような簡単な文章では、学習者が聞き取りを行った段階で文章が完成できてしまいますね。
後半の活動につながらなくなってしまうため、2は間違いです。
今回は「文法・読解クラス」であるため、新出語が20%も含まれてしまうと読解に影響が出てきます。
3は間違いです。
今回は「文法・読解クラス」なので、学習対象の文法項目が含まれていることは必須ですね。
4が正解です。
問3 「活動の流れ」の中での留意点
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
「初級学習者」であれば習熟度をグループ分けに反映させた方が良いのですが、「中級前半レベル」であればそこまで気にする必要はありません。
1は間違いです。
テクストを読み上げるスピードは、通常母語話者が話すスピードが良いですね。
2は間違いです。
今回の活動のゴールは「聞き取った文章を再構築すること」です。
話し合いの段階でつまづいてしまうと本来の目的が果たせなくなってしまうため、必要に応じて母語使用を認めることは問題ありません。
3が正解です。
今回に限らずですが、グループ活動を行う際は固定グループではなく、シャッフルした方が良いですね。
固定化してしまうと、発言の多い学習者が限定されてしまったり、ある程度以心伝心で伝わってしまうことが出てきてしまうので、グループ活動をさせる効果が薄まってきてしまいます。
4は間違いです。
問4 文法に関する産出上の問題
その答えになる理由
資料2と資料3を比べてみましょう。
細かなミスではなく、文法的に問題がある点を拾っていきます。
「含まれていない」→「入られていない」
「だまされた」→「だましたから」
「ネズミに…教えられました」→「ねこにおしえられました」
「怒られ」→「おこったので」
の部分が文法上問題がありますね。
受動表現が該当するので、1が正解です。
問5 この活動において期待される効果
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
②で学習者が聞き取ったメモから文章を復元する際に既習の語彙や文法を自然と意識するのが「暗示的指導」、④で教師が文法項目について説明するのが「明示的指導」に当たります。
1は、この活動から期待できる効果として適当です。
①の聞き取りが「インプット」、①のメモと②の内容が「アウトプット」に当たります。
2は、この活動から期待できる効果として適当です。
①でメモを取る際に既習の語彙や文法は自然と意識しますが、自動化とまでは言えないですね。
自動化を狙いとするのであれば、ディクトグロスではなく、文型の反復練習等の方が良いと思います。
3は、この活動から期待できる効果として不適当です。
「中間言語」とは、セリンカーによって唱えられた第二言語学習者独自の発展途上にある言語体系のことです。
目標言語に近づいていく過程における、学習者のその時点での言語能力を指します。
資料2が「目標言語」での文章、資料3が「中間言語」での文章ですね。
この活動によって、学習者の「目標言語」と「中間言語」の認知比較を促すことができます。
4は、この活動から期待できる効果として適当です。