令和4年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅰ 問題10
の解説です。
お手元に、問題冊子をご用意の上でご確認ください。
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問1 モニターモデル
解説 文化変容モデル
目標言語を持つ文化との社会的距離・心理的距離が大きいと目標言語の習得が進みにくく、小さいと進みやすいとされています。
解説 モニターモデル
教授法では、ナチュラル・アプローチとして具現化されています。
解説 処理可能性理論
学習者は指導があったとしても、段階を飛ばして知識習得していくことはできないとされています。
解説 アコモデーション理論
現地の人との距離を縮めるために、その地方の方言を使用する。
距離を遠ざけるために、自分の出身地の方言を使用し続ける。
などが例として挙げられます。
また、
- 相手との距離を近づける行為を「言語的収束(コンバージェンス)」
- 相手との距離を遠ざける行為を「言語的分岐(ダイバージェンス)」
と言います。
その答えになる理由
具体化された教授法として、ナチュラル・アプローチが挙げられています。
ナチュラル・アプローチが基盤としているのは、クラッシェンによる「モニターモデル」ですね。
2が正解です。
問2 インテイク
解説 インプット
解説 インテイク
その答えになる理由
「インプットから、インテイクになる必要がある」とは「受動的な知識習得から、能動的な知識習得になる必要がある」ということです。
3が上記内容にピッタリですね。
これが正解です。
問3 ティーチャー・トーク
解説 ティーチャー・トーク
その答えになる理由
参考はこちら
おそらく原書が出典元ですが、この論文が読みやすいです。
原書で挙げられているティーチャー・トークの特徴として、以下の7つが記載されています。
音声面では,
教室内の言語調整の練習を支援するシステムの開発
(1)発話速度が遅くなる
(2)ポーズの頻度が増加し,時間も長くなる
(3)発音が強調され,単純化される.
語彙・統語面では,
(4)基本的な単語が使用される
(5)文の複雑さが低い
(6)疑問文よりも平叙文,陳述が多く使用される
相互行為的構造面では,
(7)自分の発話の繰り返しが頻繁となる
――実習生の意識と言語使用に注目した評価――
歌代崇史・須藤むつ子
北海学園大学
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
(7)より、ティーチャー・トークでは、自分の発話の繰り返しが頻繁になります。
1は正しいです。
(6)より、ティーチャー・トークでは、質問文(疑問文)よりも平叙文の方が多くなります。
2は間違いです。
(5)より、ティーチャー・トークでは、従属節を使った複文のような文構造が複雑になる表現よりも、単純な文構造の方が多くなります。
3は間違いです。
(2)より、ティーチャー・トークでは、ポーズの頻度・時間が長くなります。
4は間違いです。
問4 インプット仮説への批判
解説 アウトプット仮説
アウトプットすることによって、自身のコミュニケーション方法についての気づきが得られるとされています。
解説 インターアクション仮説
その答えになる理由
下線部Cだけ読んでもよくわからないですね。
後ろに、例として「アウトプット仮説」「インターアクション仮説」とあるので、インプットに偏ることへの批判だと捉えることができます。
「アウトプット仮説」「インターアクション仮説」に共通して言えることは、スタートが「そもそもアウトプットがないこと自体がダメだよね」ということです。
アウトプットやインターアクションによって、コミュニケーション能力を伸ばせることはその通りなのですが、この場合はインプット偏重への批判が焦点になっています。
「アウトプットされないと、合っているかどうかわからない」ものが適当ですね。
1が正解です。
問5 アウトプット仮説
その答えになる理由
問4の解説より、アウトプット仮説で求められているのは、「相手に理解されるアウトプットを試みること」です。
3だけ相手が存在していないですね。
これが正解です。