この記事では、
✅ 日本語教師の国家資格化
✅ 認定日本語教育機関・登録日本語教員とは?
✅ 登録日本語教員の資格取得ルート
✅ 現職者が資格取得するための経過措置
について解説しています。
この記事は、執筆時点(2023年11月6日)での情報を基に作成しています。
確認した資料がわかるようにした上で細心の注意を払っていますが、齟齬なくお伝えできるか……というと100%の自信はありません。
皆さんが情報収集する際の「どの資料を確認すれば良いか?」の参考としてご活用ください。
最新の情報が出た際は、加筆・修正していきます。
「登録実践研修機関及び登録日本語教員養成機関の登録手続き等の検討に関するワーキンググループ(第5回)(令和5年11月2日)」の内容を踏まえて、資料等を更新しています。
日本語教師は、いつから国家資格になるのか?
日本語教育機関認定法が2024年4月に施行

日本語教師を「登録日本語教員」として国家資格化する「日本語教育機関法」が2024年(令和6年)4月1日に施行されます。

「日本語教育機関法」の正式名称は、「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」と言います。
2023年5月26日に国会で成立しており、全文はこちらから確認可能です。
内容は、文部科学省のHPにある資料がわかりやすいので参考にしてみてください。
ファイル名:日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律案(概要) (PDF:265KB)

この法律が施行されるのは、2024年(令和6年)4月1日です。

ただし、現職の日本語教師が自動で「登録日本語教員」になるわけでないので注意しましょう。
ここで定められているのは、大きく2つです。
① 日本語教育機関の認定制度の創設【認定日本語教育機関】
② 認定日本語教育機関の教員の資格の創設【登録日本語教員】
1つずつ確認してきましょう。
認定日本語教育機関とは?

この法律の内容に基づき、文部科学省から認定を受けた教育機関を「認定日本語教育機関」と言います。

日本語教育機関の設置者は、当該日本語教育機関について、申請により、日本語教育を適正かつ確実に実施することができる日本語教育機関である旨の文部科学大臣の認定を受けることができる。
令和五年法律第四十一号
日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律
第二章 日本語教育機関の認定
第二条
細かな要件は、ワーキンググループにて検討されています。
ワーキンググループの設置について
認定日本語教育機関の認定基準等の検討に関するワーキンググループ(第1回)(令和5年6月21日)
認定日本語教育機関の認定基準等の検討に関するワーキンググループ(第2回)(令和5年7月21日)
認定日本語教育機関の認定基準等の検討に関するワーキンググループ(第3回)(令和5年8月29日)
日本語教育能力検定試験における時事問題の勉強の中で「法務省告示日本語教育機関」というワードが出てきましたね。
これまでは「出入国管理及び難民認定法」という法律の中で、規定に準じた教育機関が公表されていました。
これを管理していたのが、「法務省 出入国在留管理庁」です。
今回の「日本語教育機関認定法」では、新たな基準により、文部科学省がこの管理を行うことになります。
登録日本語教員とは?

日本語教員試験に合格し、かつ実践研修を修了して文部科学大臣の登録を受けた日本語教師を「登録日本語教員」と言います。

認定日本語教育機関において日本語教育課程を担当する教員は、第十七条第一項の登録を受けた者でなければならない。
令和五年法律第四十一号
日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律
第二章 日本語教育機関の認定
第七条
日本語教員試験(日本語教育を行うために必要な知識及び技能を有するかどうかを判定するために行う試験をいう。以下この章において同じ。)に合格し、かつ、実践研修(認定日本語教育機関において日本語教育を行うために必要な実践的な技術を習得するための研修をいう。以下この章において同じ。)を修了した者は、文部科学大臣の登録を受けることができる。
令和五年法律第四十一号
日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律
第三章 認定日本語教育機関の教員の資格
第一節 登録日本語教員
第十七条
この法律により文部科学省から認定を受けた「認定日本語教育機関」で日本語教師として働くためには、「登録日本語教員」である必要があります。
「登録日本語教員」は、
● 現役の日本語教師であったり
● 現行の420時間講座を修了していたり
● 日本語教育能力検定試験に合格していたり
すれば自動でなれる…というものではなく、文部科学省での登録が必要です。
「登録日本語教員」になるためには、
① 「日本語教員試験」に合格する
② 「実践研修」を修了する
という2つの要件をクリアしなければなりません。
「○○の条件であれば、試験の一部を免除」「●●の条件であれば、実践研修を免除」といった様々な資格取得ルートがあるのですが、これらについては↓で解説していきます。
また、「登録日本語教員」は、この法律により文部科学省から認定を受けた「認定日本語教育機関」で日本語教師として働くための資格です。
「認定日本語教育機関」以外で勤務する場合や、オンライン等で個別指導する場合には関係ありません。
ただ、
● 書類選考上の有利・不利
● 学習者が、教師のプロフィールを見て受講判断する際の材料
に関係してくるので、可能であれば取得しておいた方が+αになることが多いのではないかと思います。
現行では、日本語教師になるには何が必要か?
2024年4月1日からの新制度の内容ではないのですが、現行の要件も確認しておきましょう。
法務省告示日本語教育機関で、日本語教師として働くためには?
在留資格の1つである「留学」が付与される留学生を受け入れることができる日本語教育機関は、「法務省 出入国在留管理庁」が定めた
を満たすことが求められており、「日本語教育機関の告示基準」には、教員について以下の記載があります。
十三 全ての教員が、次のいずれかに該当する者であること。
出入国在留管理庁 日本語教育機関の告示基準
イ 大学(短期大学を除く。以下この号において同じ。)又は大学院において日本語教育に
関する教育課程を履修して所定の単位を修得し、かつ、当該大学を卒業し又は当該大学
院の課程を修了した者
ロ 大学又は大学院において日本語教育に関する科目の単位を26単位以上修得し、かつ、
当該大学を卒業し又は当該大学院の課程を修了した者
ハ 公益財団法人日本国際教育支援協会が実施する日本語教育能力検定試験に合格した者
ニ 学士の学位を有し、かつ、日本語教育に関する研修であって適当と認められるものを
420単位時間以上受講し、これを修了した者
ホ その他イからニまでに掲げる者と同等以上の能力があると認められる者
大きくは、
① 大学で日本語教育を専攻する
② 日本語教育能力検定試験に合格する
③ 「学士」以上の学位があり、文化庁に認められた420時間以上の養成課程を修了する
の3つですね。
多くの日本語学校で日本語教師をするためには、この3つの要件のうちのいずれかを満たす必要があります。
それぞれについて、簡単に解説していきます。
① 大学で日本語教育を専攻する

◎ 各言語学や理論をより深く学ぶことができます。
△ 3つの方法の中で、1番お金と時間がかかります。

大学・大学院で日本語教育に関する規定単位を取得することで、卒業時点で要件を満たすことができます。
時間とお金はかかるのですが、基礎知識を学ぶには、1番確実性の高いルートです。
日本語教師養成課程を実施している大学の一覧は、文化庁のHPで確認できます。
② 日本語教育能力検定試験に合格する

◎ かかる費用を抑えることができます。
△ 出題範囲が広く、専門的な知識が必要です。

日本語教育能力検定試験は、公益財団法人日本国際教育支援協会(JEES)が実施している検定試験です。
受験資格が設けられていないため、誰でも受験できます。
令和4年度試験(2022年10月23日実施)では、
受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
7,076人 | 2,182人 | 30.8% |
となっており、難易度は高めです。
③ 「学士」以上の学位があり、文化庁に認められた420時間以上の養成課程を修了する

◎ 模擬授業があり、実践的な力を身につけることができます。
△ 地方だと通える範囲に校舎がないことも…

大学に通うほどのお金と時間はないが、独学で日本語教育能力検定試験に合格するのは自信がない…というときの有効な選択肢です。
何より、模擬授業ができるのが良いですね。
「日本語教育能力検定試験に合格したが、実際の授業をどう進めていけば良いかわからない」というよくある問題をクリアすることができます。
注意するのは、「文化庁に認められた420時間以上の養成課程を修了する」だけではなく、「学士以上の学位(=4年制大学の卒業)」が必要であることです。
最終学歴が4年制大学でない方が法務省告示日本語教育機関での日本語教師になるためには、
① 大学で日本語教育を専攻する
② 日本語教育能力検定試験に合格する③ 「学士」以上の学位があり、文化庁に認められた420時間以上の養成課程を修了する
が最短ルートです。
法務省告示日本語教育機関以外で、日本語教師として働くためには?
在留資格の1つである「留学」が付与される留学生を受け入れることができる日本語教育機関以外で日本語教師をする場合は、特に要件はありません。
● 会社で外国人の同僚に日本語を教える。
● オンラインで日本語の個人レッスンを行う。
等はどこかに届けなくても良いので、極端な話「私は、今日から日本語教師!」とすることもできます。
しかし、
△ 日本人だから、日本語を教えられる。
△ 国語が得意だったから、日本語を教えられる。
というわけではありません。
✅ 日本語そのものの知識
✅ 学習者が求めているものの知識
✅ どのように教えるかの知識
を身につけていく必要があります。
登録日本語教員の資格を取得するためには?
「日本語教育機関法」の施行にあたり、パブリックコメントが実施されています。
2023年8月21日公示分に添付されていた資料を使って、各資格取得ルートを確認していきましょう。
ファイル名:登録実践研修機関・登録日本語教員養成機関に関する省令等の案の概要
※ 使用しているのは、P13・14です。
2023年11月2日実施の「登録実践研修機関及び登録日本語教員養成機関の登録手続き等の検討に関するワーキンググループ(第5回)」で資料が更新されました。
ファイル名:登録日本語教員の資格取得に係る経過措置(案)
なお、現行制度と同じように「認定日本語教育機関」以外で日本語教師をする場合には、特に要件は設定されていません。
現職の日本語教師でない場合
「現職」とは、
平成31年4月1日(法施行5年前)~令和11年3月31日(法施行5年後)の間に法務省告示機関で告示を受けた課程、大学、認定日本語教育機関で認定を受けた課程、文部科学大臣が指定した日本語教育機関(認定を受けた日本語教育機関が過去に実施した課程)で日本語教員として1年以上勤務した者
を指しており、これに該当しない場合は、
日本語教員試験(基礎試験)に合格
↓
日本語教員試験(応用試験)に合格
↓
登録実践研修機関での実践研修を修了
というステップで登録日本語教員を目指していくことになります。
条件によって一部が免除される場合があるので、1つずつ見てみましょう。
現職でなく、登録日本語教員養成機関での課程を修了しない場合

1番右の「試験ルート」が該当します。
「登録日本語教員養成機関」とは、
日本語教育機関法の第六十一条~六十六条により文部科学省の登録を受け、登録日本語教員になるための養成課程を実施できる教育機関
のことで、「登録日本語教員養成機関」での養成課程を修了しない場合は
日本語教員試験(基礎試験)に合格
↓
日本語教員試験(応用試験)に合格
↓
登録実践研修機関での実践研修を修了
を順にクリアしていく必要があります。
現職でなく、登録実践研修機関でもある登録日本語教員養成機関での養成課程を修了する場合

1番左の「養成機関ルート」が該当します。
「登録日本語教員養成機関」での課程を修了した場合は、日本語教員試験における「基礎試験」が免除されます。
「実践研修機関」とは、
日本語教育機関法の第四十五条~六十条により文部科学省の登録を受け、登録日本語教員になるための実践研修を実施できる教育機関
のことです。
教育機関によっては
「登録日本語教員養成機関」と「登録実践研修機関」を兼ねている
ことがあります。
その場合、「応用試験」のあとに実施される「実践研修」は、養成課程の中で行われます。
(免除されるわけではありません。)
現職でなく、登録実践研修機関でない登録日本語教員養成機関での養成課程を修了する場合

真ん中の「養成機関ルート」が該当します。
先ほどと同じく、「登録日本語教員養成機関」での課程を修了しているので、日本語教員試験における「基礎試験」は免除です。
「登録実践研修機関」を兼ねていない場合は、養成課程の中で「実践研修」を実施できないので、通常通り「応用試験」のあとに実践研修を行います。
1番左の養成機関ルートでは
・大学等(26単位~)
・専門学校等(420単位時間~)
真ん中の養成機関ルートでは
・大学等(25単位~)
・専門学校等(375単位時間~)
となっていますが、これは「実践研修」の差分です。
「実践研修」自体は必須であり、それを養成講座内で実施できるかに違いがあります。
現職の日本語教師の場合
「現職」とは、
平成31年4月1日(法施行5年前)~令和11年3月31日(法施行5年後)の間に法務省告示機関で告示を受けた課程、大学、認定日本語教育機関で認定を受けた課程、文部科学大臣が指定した日本語教育機関(認定を受けた日本語教育機関が過去に実施した課程)で日本語教員として1年以上勤務した者
のことで、これに当てはまる場合は、経過措置が検討されています。
「認定日本語教育機関」で日本語教師をするためには、「登録日本語教員」である必要があります。
しかし、新制度になったからといって、いきなりすべての現職者が「登録日本語教員」になれるわけではないですよね。
最前線で頑張ってきた方々が「2024年4月1日からは、今の職場では日本語教師ができません!」だと学習者にとって不利益になってしまうことも考えられます。
…という状況を回避するために、どのような経過措置を設定するのが良いのかが検討されています。
「登録日本語教員の資格取得に係る経過措置(案)」とあるように、ここから変わっていく可能性も大いにありますが、皆さんも気になるところかと思いますので、執筆時点の情報をベースに確認していこうと思います。
現職者が登録日本語教員を目指す場合の経過措置

資料にある「必須の50項目」とは、2019年(平成31年)3月4日に文化審議会国語分科会が提出した「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)改訂版」に記載されている「日本語教師【養成】における教育内容」の項目のことです。
上記リンクのP43に一覧があるので、1度確認してみてください。
過去の教育内容との差異を見るのであれば、令和5年2月に文化庁が提出した「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律案(仮称)の検討状況について」のP19の方がわかりやすいかもしれません。
現職者に限らず、必須の50項目に対応した課程修了者(要・学士以上の学位)

まずは、Cのルートです。
このルートは、「現職者に限らず」とあるように
平成31年4月1日(法施行5年前)~令和11年3月31日(法施行5年後)の間に法務省告示機関で告示を受けた課程、大学、認定日本語教育機関で認定を受けた課程、文部科学大臣が指定した日本語教育機関(認定を受けた日本語教育機関が過去に実施した課程)で日本語教員として1年以上勤務した者
の要件を満たしているかは関係ありません。
必須の50項目を実施していることが確認できた現行告示基準教員要件に該当する養成課程等を修了し、学士以上の学位を有する者
が対象になります。
受講した養成課程が「必須の50項目」に対応しているかがポイントですね。
文化庁のHPによれば、2022年(令和5年)6月16日現在で届出が受理されている日本語教員養成研修実施機関・団体は、コースが廃止された一部を除き、必須の50項目に対応済のようです。
ファイル名:日本語教師養成研修実施機関・団体
このルートの場合、経過措置の期間内であれば
日本語教員試験(基礎試験)に合格 免除
↓
日本語教員試験(応用試験)に合格
↓登録実践研修機関での実践研修を修了 免除
となるため、「応用試験の合格」だけで登録日本語教員の資格を得ることができます。
必須の50項目には「教育実習」が含まれるので、

の1番左のルートと同等扱いですね。
また、2023年8月21日の資料にはなかった「学士以上の学位を有する者」という条件が追記されていることにも注意しましょう。


現行制度において「法務省告示日本語教育機関」で日本語教師をするためには
① 大学で日本語教育を専攻する
② 日本語教育能力検定試験に合格する
③ 「学士」以上の学位があり、文化庁に認められた420時間以上の養成課程を修了する
のいずれかに該当する必要がありましたね。
今回の資料では、③の要件に近づけた修正が行われています。
現職者のうち、必須の50項目対応前の課程修了者①②(要・学士以上の学位)

次に、D-1・D-2のルートです。
D-1・D-2の対象となるのは、
・ 現職者
・ 必須の50項目に対応する前の養成課程修了者
ですね。
養成課程の内容によって、D-1・D-2のどちらになるかが異なります。
ここからは、「現職者のうち」なので
平成31年4月1日(法施行5年前)~令和11年3月31日(法施行5年後)の間に 法務省告示機関で告示を受けた課程、大学、認定日本語教育機関で認定を受けた課程、文部科学大臣が指定した日本語教育機関で日本語教員として1年以上勤務した者
の要件を満たす必要があります。
D-1とD-2の要件の違いを見ていきましょう。
D-1ルート
必須の50項目には対応していないものの、5区分の教育内容を実施していることが確認できた現行告示基準要件に該当する養成講座等を修了
D-2ルート
必須の50項目にも・5区分の教育内容にも該当していないものの、現行告示基準要件には該当する養成講座等を修了
「必須の50項目」とは、2019年(平成31年)3月4日に文化審議会国語分科会が提出した「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)改訂版」に記載されている「日本語教師【養成】における教育内容」の項目のことです。
上記リンクのP43を見てみましょう。
「必須の教育内容」の列で
(1)世界と日本の社会と文化
(2)日本の在留外国人施策
と続いているのが「必須の50項目」です。
また、「5区分の教育内容」とは、日本語教育のための教員養成について(平成12年3月30日)日本語教員の養成に関する調査研究協力者会議における「新たな教育内容」のことです。
上記リンクのP13における
社会・文化・地域
言語と社会
言語と心理
言語と教育
言語
が該当します。
Cにも・D-1にも該当しない養成課程を修了した最終学歴が4年制大学の現職者は、D-2ルート
となるのですが、修了した養成課程がどこに該当するかはわかりにくいですよね。。
※5 (C)及び(D-1)の養成課程等については令和5年度中に文部科学省が確認を行い、それぞれの養成課程等の一覧を公開する予定。
登録実践研修機関及び登録日本語教員養成機関の登録手続き等の検討に関するワーキンググループ(第5回)(令和5年11月2日)
登録日本語教員の資格取得に係る経過措置(案)
とあり、令和5年11月6日から、各日本語教員養成課程等に対して「必須の50項目に対応しているのか?」「平成12年報告に対応しているのか?」の確認申請が開始されました。
登録日本語教員の資格取得に係る経過措置における日本語教員養成課程等の確認について
文部科学省による確認を経て
として一覧が公開されることになっています。
各日本語教員養成課程等からの申請が「令和5年11月6日~令和6年1月15日」・一覧の公開が令和5年度中(~令和6年3月31日)なので、養成課程が絡むルートの方は一覧待ちですね。
D-1・D-2ルートの場合、経過措置の期間内であれば
「必須の50項目」の満たしていない分を埋めるための「講習+講習修了認定試験」を受講・合格することで、登録日本語教員養成機関と同等の課程を修了したと見なされる
ことから「基礎試験」が免除され、
現職なので、教育実習で必要な能力は身についていると見なされる
ことから「実践研修」も免除されます。
講習+講習修了認定試験に合格
↓日本語教員試験(基礎試験)に合格 免除
↓
日本語教員試験(応用試験)に合格
↓登録実践研修機関での実践研修を修了 免除
となり、「講習+講習修了認定試験の合格」「応用試験の合格」で登録日本語教員の資格を得ることができます。
D-1・D-2の違いは、受ける講習の量です。
講習はⅠ・Ⅱに分かれているのですが、D-1ルートであれば「講習Ⅰ+講習Ⅰの講習修了認定試験」が免除されます。
また、先ほどのCルートと同様に、2023年8月21日の資料にはなかった「学士以上の学位を有する者」という条件が追記されていることにも注意しましょう。


現職者のうち、民間試験に合格した者①②

次は、E-1・E-2のルートです。
ここに記載のある「民間試験」とは、公益財団法人日本国際教育支援協会(JEES)が実施している「日本語教育能力検定試験」のことです。
「日本語教育能力検定試験」は、経過措置検討の対象に公募し、対象として選定されました。
昭和62年の第1回からずっと年1回実施されており、
令和5年度試験(2023年10月22日)までのすべての合格者
がE-1・E-2のいずれかのルートに該当します。
上記試験のうち、特に昭和 62 年度から平成 14 年度に実施されたものについては、出題範囲に 「日本語教育のための教員養成について」(平成 12 年3月 30 日日本語教員の養成に関する調査研究協力者会議)で示された 16 下位区分のうち、「⑥異文化コミュニケーションと社会」、「⑪異文化教育とコミュニケーション教育」、「⑫言語教育と情報」が含まれていないものと思われる。このため、経過措置対象者への講習及び講習修了認定試験の中で、これらの知識・技能を補うこと、又はこれらの知識・技能を有することを確認することが適当である。
登録日本語教員に係る経過措置の検討のための民間試験の選定結果について
第 120 回日本語教育小委員会(R5.7.25)
とあるように、全面的に内容が認められたわけではありません。
必須の50項目の満たしていない分を埋めるために、D-1・D-2ルートと同じく「講習+講習修了認定試験の合格」が必要になります。
他のルートと違うのは、足りない項目さえ埋まれば
言語そのものや言語教育、世界や日本の社会と文化等、日本語教育を行うために必要
令和5年度日本語教員試験試行試験 実施概要(案)
となる3領域5区分15下位区分及び50項目の必須の教育内容に含まれる基礎的な
知識及び技能を有するかどうかを測定する試験とする。
119 回日本語教育小委員会(R5.6.28)
という「基礎試験」の内容と
出題範囲が複数の領域・区分にまたがる横断的な設問により、実際に日本語教育を行
令和5年度日本語教員試験試行試験 実施概要(案)
う際の現場対応や問題解決を行うことができる基礎的な知識及び技能を活用した問題
解決能力を測定する試験とする。
119 回日本語教育小委員会(R5.6.28)
という「応用試験」の内容を両方ともカバーできていることです。
これにより、日本語教員試験における「基礎試験」「応用試験」が免除され、
現職なので、教育実習で必要な能力は身についていると見なされる
ことから「実践研修」も免除されます。
そのため、経過措置の期間内であれば
講習+講習修了認定試験に合格
↓日本語教員試験(基礎試験)に合格 免除
↓日本語教員試験(応用試験)に合格 免除
↓登録実践研修機関での実践研修を修了 免除
となり、「講習+講習修了認定試験の合格」だけで登録日本語教員の資格を得ることができます。
2023年8月21日の資料では「受験・合格した年度に関係なく同ルート」だったのが、2023年11月2日の資料では「平成14年度試験までの合格者・平成15年度~令和5年度試験の合格者の2ルート」に分解されました。


日本語教育能力検定試験は、昭和62年から年1回実施されています。
そのため、
昭和62年4月1日~平成15年3月31日の間に実施
→ 昭和62年度試験~平成14年度試験
平成15年4月1日~令和6年3月31日の間に実施
→ 平成15年度試験~令和5年度試験
ですね。
この区切りには意味があって、
上記試験のうち、特に昭和 62 年度から平成 14 年度に実施されたものについては、出題範囲に 「日本語教育のための教員養成について」(平成 12 年3月 30 日日本語教員の養成に関する調査研究協力者会議)で示された 16 下位区分のうち、「⑥異文化コミュニケーションと社会」、「⑪異文化教育とコミュニケーション教育」、「⑫言語教育と情報」が含まれていないものと思われる。このため、経過措置対象者への講習及び講習修了認定試験の中で、これらの知識・技能を補うこと、又はこれらの知識・技能を有することを確認することが適当である。
登録日本語教員に係る経過措置の検討のための民間試験の選定結果について
第 120 回日本語教育小委員会(R5.7.25)
がベースになっています。
経過措置の期間内であれば
講習+講習修了認定試験に合格
↓日本語教員試験(基礎試験)に合格 免除
↓日本語教員試験(応用試験)に合格 免除
↓登録実践研修機関での実践研修を修了 免除
となり、「講習+講習修了認定試験の合格」だけで登録日本語教員の資格を得ることができるのはE-1・E-2共通ですが、「平成15年度試験~令和5年度試験」の合格者であれば、さらに「講習Ⅰ・講習Ⅰの講習修了認定試験」も免除されます。
現職者のうち、どの条件も満たしていない者

C・D・Eのいずれにも該当しない場合は、Fのルートです。
現職なので、教育実習で必要な能力は身についていると見なされる
ので「実践研修」は免除されるのですが、日本語教員試験は「基礎試験」「応用試験」の両方に合格しなれけばなりません。
経過措置の期間内であれば
日本語教員試験(基礎試験)に合格
↓
日本語教員試験(応用試験)に合格
↓登録実践研修機関での実践研修を修了 免除
で登録日本語教員の資格を得ることができます。
日本語教員試験については、以下の記事でも解説しています。
こちらも、あわせてご確認ください。
日本語教育能力検定試験は、今後どうなるの?
公益財団法人日本国際教育支援協会(JEES)のHPに「令和6年度の実施要項は、決まり次第公表します。」と記載があるため、少なくとも次年度(令和6年度)は実施されることがわかります。
ただし、
「登録日本語教員」になるためには、「日本語教員試験」の合格が必要
現職者が「登録日本語教員」になるための経過措置の要件は、「令和5年度試験までの合格者」
なので、次年度(令和6年度)に日本語教育能力検定試験に合格しても、「登録日本語教員」になるための要件としては一切関係ありません。
「登録日本語教員」は「認定日本語教育機関」で日本語教師をするための国家資格なので、
認定日本語教育機関以外で日本語教師をするときに、「日本語教育能力検定試験の合格」がどこまで有利に働くか?
が次年度(令和6年度)の日本語教育能力検定試験を受験するか…?のポイントですね。
現状の「法務省告示日本語教育機関」がそのまま「認定日本語教育機関」にスライドするわけではないので、「全体の中で、認定日本語教育機関がどれくらいの割合になるのか」を注視していく必要がありそうです。
最後に
✅ 日本語教師の国家資格化
✅ 認定日本語教育機関・登録日本語教員とは?
✅ 登録日本語教員の資格取得ルート
✅ 現職者が資格取得するための経過措置
について、解説してきました。
また、新しい情報が公開されたら、サイト内にてお知らせしていきます。