テキスト・書籍の実物を確認しながら、アルク社のNAFL日本語教員試験対策セットを正直レビューしていきます!
独学は不安…
でも、養成課程は時間的・金銭的にしんどい…
というときの選択肢として、参考にしてみてください (*^^)v
NAFL日本語教員試験対策セットとは?
日本語教員試験に合格するためのセット型教材
NAFL日本語教員試験対策セットは、旧:NAFL日本語教師養成プログラムのものを中核としたセット教材です。
- 学習ガイド
- テキスト24冊
- CD7枚
- DVD1枚
- 『日本語教育能力検定試験 対策問題集』
- 『改訂版 日本語教育能力検定試験に合格するための用語集』
は手元にあるため、実際に内容を確認していますが、
- 勉強会動画13本
- 2024年5月から月1回開催されるオンライン勉強会 全6回
は未確認でのレビューである旨をご承知おきください。
24冊のテキスト
各テキストで学習する内容は、以下の通りです。
1 | 日本語教育の現状 |
2 | 日本語教授法Ⅰ |
3 | 日本語教授法Ⅱ |
4 | 日本人の言語行動 |
5 | 言語学の基礎 |
6 | 第二言語習得論 |
7 | 日本語の音声Ⅰ |
8 | 日本語の音声Ⅱ |
9 | 異文化理解と心理 |
10 | 日本語の文法ー基礎 |
11 | 日本語の文法ー応用 |
12 | 日本語史/日本語研究史 |
13 | 日本語の文字表記 |
14 | 日本語の語彙・意味 |
15 | 社会言語学 |
16 | 日本語の話しことば |
17 | 日英の対照研究ー付・日中、日韓の対照研究 |
18 | 日本語教育実習 |
19 | 聞き方の教育/読み方の教育 |
20 | 話し方の教育/書き方の教育 |
21 | 異文化間教育とコミュニケーション教育 |
22 | 日本語教育評価法 |
23 | 視聴覚メディアと日本語教育 |
24 | 世界と日本 |
- なぜ「NAFL日本語教員試験対策セット」なのに、日本語教育能力検定試験の内容が含まれているの?
- 日本語教育能力検定試験対策としては、使えないの?
と疑問に感じるかもしれませんが、いずれも問題ありません。
日本語教員試験・日本語教育能力検定試験は、どちらも「必須の50項目」が出題範囲です。
2024年11月17日に第1回が実施される日本語教員試験は、どのような問題が出題されるかわからないため、日本語教育能力検定試験の過去問・問題集・参考書で学習していくしかありません。
逆に、日本語教育能力検定試験用として使用するのも問題ないのですが、これだけだと記述式問題対策が不十分です。
- 日本語教員試験ではなく、日本語教育能力検定試験の受験を考えている方
- 日本語教員試験・日本語教育能力検定試験の両方の受験を考えている方
は、同アルク社の
で対策していきましょう。
記述問題対策は、この本1択でOKです。
日本語教員試験・日本語教育能力検定試験については、以下の記事で詳しく解説しています。
試験内容に不安がある方は、これらも合わせてご確認ください。
試験対策のための問題集・参考書
日本語教育能力検定試験に合格するためには、過去問演習+αが必要です。
2024年11月17日に第1回が実施される日本語教員試験も、同じ対策となるため、日本語教育能力検定試験の過去問を終えたあとは、問題集による+αの演習を行う必要があります。
過去問以外で、共通した出題範囲の「必須の50項目」に対応しているのは、この「対策問題集」のみです。
用語集は、アルク社以外に
の2冊がありますが、レベル感に差異はありません。
出版社を揃えた方が使いやすいので、NAFL日本語教員試験対策セットを申し込むのであれば、用語集もセットになっているアルク社のものを使用するのが良いですね。
こんな人は、NAFL日本語教員試験対策セットが向いている・向いていない
NAFL日本語教員試験対策セットが向いている人
基礎的な知識を体系的に学ぶには、養成課程に通うのが1番確実です。
ただし、
- 420時間の授業単位
- 平均50万円以上の授業料
- そもそも通える範囲に校舎がない…
という内容がネックになる場合も多くあります。
NAFL日本語教員試験対策セットの価格は、税込69,800円です。
平均50万円以上の養成課程と比べると安いものの、それでもポンと出せる金額でもないですね…!!
ただし、これは、税込69,800円という金額を単体で見た場合の印象です。
比較対象があると、どうでしょうか?
例えば、第二言語習得論の教科書になることが多い
は、税込4,180円です。
また、引用元になることが多い
は、もう新品で手に入れることが難しくなっています。
このように、24冊のテキストにある内容を網羅しようとすると、膨大な時間とお金がかかります。
また、すべてに入門書があるわけではないので、理解のハードルが高い分野も存在します。
その分野の専門家が基礎から解説してくれているテキストだと考えると、破格の値段設定ですね。
また、基礎的な知識を体系的に学ぶには、養成課程に通うのが1番確実なのですが、そこには落とし穴も存在します。
それは、必ずしも専門知識のある講師がその授業を担当しているわけではないということです。
養成課程は、修士以上の学位がある講師が担当する場合が多いのですが、この分野は学部時代に授業で習っただけ……とのも珍しくはありません。
もちろん、しっかりとポイントを押さえていたり、その授業を担当するために学び直していたり……もあるのですが、その分野の専門家が入門向けに書いたテキストの方がわかりやすいことも十分ありえます。
「基礎的な知識を体系的に学び、日本語教師としての土台を作りたいが、養成課程には物理的に通えない」という方には、このNAFL日本語教員試験対策セットが最善の選択肢ではないでしょうか?
NAFL日本語教員試験対策セットが向いていない人
「そもそも、体系的な知識まではいらない」という方には、NAFL日本語教員試験対策セットのレベルまでは必要ありません。
上位得点での合格!までは難しいものの、間違った勉強法にならなければ、過去問とセット教材に含まれている
で最低限の合格ラインには到達できます。
これは、日本語教員試験・日本語教育能力検定試験をゴール・スタートのどちらで捉えるかの違いです。
「すぐに日本語教師になるつもりはないが、とりあえず試験に合格しておこう」という試験=ゴールの設定であれば、その時点での土台は必要ないかもしれません。
「日本語教師としての第1歩として、試験に合格しよう」という試験=スタートの設定であれば、最初から土台を厚くしていった方が良いですね。
日本語教員試験・日本語教育能力検定試験は、いずれも受験資格の設定がないため、どちらの設定が正解……というものではありません。
あくまで、「自身にとって各試験がどのような扱いになるのか?」によって、取るべき選択肢が変わってきます。
NAFL日本語教員試験対策セットの「ここがおすすめ」ポイント
「必須の50項目」の内容を網羅的に学習できる
日本語教員試験・日本語教育能力検定試験のどちらを受験するにしても、独学で挑む場合の最大の難関が、50項目に及ぶ具体的な内容をイメージしにくい出題範囲です。
「必須の50項目」とは、2019年(平成31年)3月4日に文化審議会国語分科会が提出した「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)改訂版」に記載されている「日本語教師【養成】における教育内容」の項目のことを指しています。
平成31年3月4日
文化審議会国語分科会
「必須の教育内容」の列にある(1)~(50)の項目なのですが、これだけ見ても……何が出題されるのかイメージがつかないですよね。
この必須の50項目は、420時間の日本語教員養成課程のカリキュラムで取り扱う内容と同じです。
養成課程であれば、専用のテキストによって学習できるのですが、通える範囲に校舎がなかったり、金銭的に数十万円が難しかったりする場合は、自力でどうにかしなければなりません。
ただし、執筆時点において、市販で必須の50項目をカバーした参考書は存在しません。
あるのは、
の2冊の問題集のみです。
総合的な参考書としては、
が挙げられるのですが、令和3(2022)年度までの旧試験範囲に対応したものなので、必須の50項目の内容がすべてカバーできるわけではありません。
見識のあるSNSアカウントが手放しで独学を勧めないのは、ここが1番の理由です。
日本語教育能力試験の場合の合格率(合格者数/受験者数)は約30%ですが、養成課程の受講者・修了者の合格率は60~70%だと言われています。
また、令和5(2023)年度試験では、全体の約30%が初受験ではありません。
養成課程を経て受験している人・複数回受験している人が分母に含まれていることを考えると……独学で一発合格している人の割合は、かなり下がるのではないでしょうか?
- 仕事や家庭があるので、420時間の講座に通うのはちょっと…
- ポンと50万円以上する受講料が出せない…
- とはいえ、完全に独学で合格できる気がしない…
という場合の独学→講座受講の間を埋める選択肢として、試験範囲をカバーしているテキストを購入して学習していくのは、かなりアリなのではないかと思います。
「今、どこを勉強しているのか?」がわかりやすい
テキストは全24冊ですが、連続している
- 日本語教授法Ⅰ
- 日本語教授法Ⅱ
- 日本語の音声Ⅰ
- 日本語の音声Ⅱ
- 日本語の文法ー基礎
- 日本語の文法ー応用
以外は、順不同で進めることができます。
また、すべてのテキストを漏れなく終えなくてはならないわけでもありません。
- 苦手に感じている分野
- 実際に日本語教育能力検定試験の過去問に取り組んでみて、点数が取れなかった分野
を中心に読み進める使い方もできます。
独学や養成課程の場合は、このような柔軟な対応するのが難しいです。
独学の場合は、そもそも網羅的なテキストがないので、正しく取捨選択することができません。
常に「ここまでの内容で大丈夫かなぁ…?」を自問自答しながら学習を進めていく、心の強さが必要です。
養成課程の場合は、カリキュラムが決まっているため、
- この分野は、知っている内容が多いから、半分の時間でいいかなぁ
- この分野は、もっと時間をかけて確認していきたい
といった内容に対応することができません。
逆に言えば、プロが分野ごとに適切な時間配分をしてくれるのが、養成課程に通うメリットだとも言えます。
全24冊のテキストは、いずれも中でUNITが分かれているため、テキスト内でも学習の濃淡をつけることが可能です。
一旦このUNITは読み飛ばしておいて、あとから復習する……のような進め方も良いですね。
一覧のチェックリストを作って完了の有無や理解度を記録しておくと、
- どのテキストが終わっているのか?
- 終えたものの、不安がある部分はどの分野か?
がわかりやすくなり、着実に歩みを進めておくことができます。
学習者による音声で、誤用例を学ぶことができる
それぞれの試験における音声分野の配点は、以下の通りです。
試験全体の配点は、320点 | 日本語教員試験試験全体の配点は、240点 | 日本語教育能力検定試験
2点×50問=100点 試験全体の31.3% | 1点×40問=40点 試験全体の16.7% |
音声分野では、
- アクセント
- 音声記号
- 口腔断面図
といった音声学関連の知識だけでなく、
- 学習者がどのように発音を間違えたのか?
- 学習者のどのような表現によって、理解が食い違ったのか?
を聴きとる訓練が必要になります。
ただし、母語話者による「なんちゃって版」を聴いても、訓練にはなりません。
聴きとりやすいのは当たり前なので、「なんだか、いけそうな気がする…!!」という自己肯定感が高まるだけです。
「日本語教育能力検定試験の過去問は、訓練ではなく、問題演習用として使いたい」という場合は、訓練用音声の絶対量が不安になりますね…!!
市販のテキストで音声が含まれているものだと、
が良著なのですが、
- 出版が2008年なので、「最近は、このタイプの問題見ないなぁ」という内容もちらほら…
- 解説が多いわけではないので、訓練用であれば良いが、1から学習するのには向かない
という面もあり、現状だと全力でおススメできるものではありません。
全24冊のテキストの中では、
- 日本語の音声Ⅰ
- 日本語の音声Ⅱ
に収録されている内容が良いですね。
- 口蓋化
- 母音の無声化
などの文字で内容を見ただけでは実際の音がイメージしづらい部分を学習者による音声で聴くことができます。
また、音声を聴いた上でのアクションが
- そのまま文字化すると、どうなるか?
- 学習者の真意がそうでなかったとすれば、どう言いたかったのか?
になっているのも、個人的にポイントが高いです。
単に知識として覚えさせるのではなく、知識と実際の現場をつなぐことを意識してテキストが作られていることが伝わってきますね。
図表・年表により、具体的なイメージがつきやすい
特に、
- 「日本語教育の概要」における 日本語教育 / 国語教育 の比較表
- 「日本語史」における 文法・語彙の変遷の一覧表
- 「日本語教育史」における 日本 / アジア / 欧米諸国・英語圏 を一覧化した年表
あたりが良いですね。
人物の写真は、Wikipediaなどで簡単に調べることができるので、重要なポイントではありません。
上記のような図表・年表は、
- 知識のある人の手によって
- 起点となる部分・ほかとリンクする部分を中心に
作成されています。
これらを自身でまとめるのはハードルが高いですし、そのレベルで理解できているのであれば、そもそもまとめる作業自体が必要ありません。
広大な試験範囲を攻略する上で、ショートカットの導入は必要不可欠です。
ただし、
- 浅くなぞって、次に行く
ではなく、
- ポイントとなる部分を重点的に押さえて、次に行く
にしていけると良いですね。
養成課程の受講であれば、この辺りのコントロールをプロが行ってくれます。
養成課程を受講しないのであれば、どのようにコントロールしていくかを自身で決めなければなりません。
質の良いテキストを使用することで、
- 必要な情報を
- 必要な深さまで
取りやすくなるので、効率のコントロールがしやすくなりますね。
信頼と安心のアルク社
- 令和4(2022)年度から、日本語教育能力検定試験の出題範囲が現行の「必須の50項目」に移行
- 日本語教師の国家資格創設が検討されており、今後の日本語教育能力検定試験の取り扱いがどうなるかは不明
- そもそも国家資格取得のための別の試験が始まったら、日本語教育能力検定試験自体がなくなるかもしれない
という状況の中、令和4(2022)年度試験の受験生用に、アルク社から
が出版されました。
これは、本当に英断だったと思います。
私が当時やり取りしていた受験生の中にも、この対策問題集に救われた方が数多くいました。
執筆時点においても、過去問以外で「必須の50項目」に対応した問題集は、これしかありません。
今後、後続してくる出版社はあるかもしれませんが、1番必要なタイミングで受験生の声に応えた企業として、私はアルク社を推しています。
NAFL日本語教員試験対策セットの「これもあればなぁ」ポイント
言語学の基礎内容がもう少しほしい…
日本語教員試験・日本語教育能力検定試験は、どちらも必須の50項目が出題範囲です。
この必須の50項目は
- 社会・文化・地域
- 言語と社会
- 言語と心理
- 言語と教育
- 言語
の5つに分かれていて、特に「言語と心理」「言語」の2分野から多く出題されています。
24冊のテキストでも、この2分野の割合が大きいです。
具体的なページ数の公開は控えますが、テキストの厚み・冊数が違います。
そのうちの1つ、「言語」分野のスタートとなるのが「言語学の基礎」です。
ラング・パロールや、言語の記号性・恣意性などの基礎的な内容から、形態論・統語論・意味論・語用論といった各論のに移っていく構成になっており、概要レベルとしては必要十分な範囲をカバーしています。
著者の町田健先生は、最近の本だと
を目にした方が多いのではないかと思います。
ソシュールから改めて学び直すときの
も良著で、新書で概要を掴んでから新訳へ……という読み方も良いですね。
他社の出版物を紹介することになって難しい点があるとは思いますが、知見があるアルク社だからこそできる「この分野を深く学習していくには、●●や▲▲の本がおすすめ!」という内容が+αであると、より良くなると思います。
テキスト24冊をカバーした索引がほしい…
セット教材に
が含まれているので、過去問や対策問題集で「あれ、この用語なんだっけ…?」となったときに、
- どの分野の
- どのような内容か?
を調べること自体は簡単です。
ただし、さらに24冊のテキストの中から該当箇所を探したい場合は、用語集でわかった分野名から「どのテキストに書いてあるか?」のあたりをつけなければなりません。
これは、テキスト内での索引はあるものの、24冊のテキスト全体をカバーした索引がないためです。
学習が進んでくれば、
- ●●は、第二言語習得論の分野の用語だ
- ▲▲は、日本語教授法Ⅰ・Ⅱのどちらかに載っていそうだ
となっていくので問題ないのですが、総索引があると、学習初期から効率を上げていけるのではないかと思います。
最後に
- 市販のテキストを揃えて、独学で試験に合格する
- 養成課程に通う
という従来の2択に加えて、
- 質の良いテキストを購入して、独学+αで試験に合格する
という選択肢を検討できるようになりました。
日本語教員試験は、「どこから出題されるか」はわかっているものの、「どのように出題されるか」はわかっていません。
現段階で有効だと言えるのは、「必須の50項目」を丁寧に押さえていくことです。
NAFL日本語教員試験対策セットは、そのための有効な選択肢なのではないかと思います。
どのような戦略をとろうか迷っている方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
学習についての不明点・学習の進め方の不安解消について、個別対応も実施しています。
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