令和2年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅲ 問題14
の解説です。
お手元に、問題冊子をご用意の上でご確認ください。
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問1 ウチ・ソト
その答えになる理由
ビジネスにおいて、ウチの人のことをソトの人に言うときには、敬語を用いません。
たとえ上司であっても、呼び捨て・敬語なしの表現です。
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1は、ウチの人である課長に対して、「お~になる」という尊敬語が使われていますね。
これは、適切な表現ではありません。
2は、ウチの人である課長に対して、「いらっしゃる」という尊敬語が使われていますね。
これは、適切な表現ではありません。
3は、ウチの人である課長に対して、「~れる」という尊敬語が使われていますね。
これは、適切な表現ではありません。
4は、ウチの人である課長に対して、呼び捨てかつ敬語なしの表現になっています。
これが正解です。
問2 ボールド・オン・レコード・ストラテジー 直言
解説 フェイス
他者に近づきたい・好かれたいという「ポジティブ・フェイス」と、他者と離れていたい・立ち入られたくないという「ネガティブ・フェイス」に分類されます。
解説 ポライトネス・ストラテジー
解説 ボールド・オン・レコード・ストラテジー(直言)
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1は、詳細を省いていることから、他者に踏み込まれたくないというネガティブ・フェイスに配慮していますね。
これは、ネガティブ・ポライトネス・ストラテジーの内容です。
2は、誇張して褒めていることから、他者に踏み込まれたくないというネガティブ・フェイスに配慮していますね。
これは、ネガティブ・ポライトネス・ストラテジーの内容です。
3は、直接的に誘っていないことから、他者に踏み込まれたくないというネガティブ・フェイスに配慮していますね。
これは、ネガティブ・ポライトネス・ストラテジーの内容です。
4は、情報伝達を優先していることから、相手のフェイスには配慮していないですね。
これは、ボールド・オン・レコード・ストラテジー(直言)の内容です。
問3 敬語の指針
まずは敬語の種類を確認しておきましょう。
敬語の指針では、敬語を以下の5つに分類しています。
解説 尊敬語
いらっしゃる
お忙しい
~られる
などが該当します。
解説 謙譲語Ⅰ
申し上げる
伺う
(立てる相手への)お手紙
などが該当します。
解説 謙譲語Ⅱ(丁重語)
参る
申す
いたす
などが該当します。
解説 丁寧語
です
ます
などが該当します。
解説 美化語
お料理
お手紙
などが該当します。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
行為者や所有者を立てるために使われるのは、美化語ではなく、尊敬語ですね。
1は、間違いです。
立てるべき人物の行為には、
先生がいらっしゃった。
のように、通常尊敬語が用いられますが、
先生が来ました。
のように、丁寧語が使えないわけではありません。
2は、間違いです。
選択肢の内容通り、謙譲語Ⅱ(丁重語)は、 自分側の行為・ものごとなどを話や文章の相手に対して丁重に述べるものとして用いられます。
3が正解です。
日本語では、立てるべき人物は固定的ではなく、場面や状況によって変わります。
4は、間違いです。
問4 尊敬語
その答えになる理由
全て「お+名詞」ですが、敬語の種類が違いますね。
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1は、自分の話について、「お+名詞」が用いられています。
自分側から相手側または第三者に向かう行為・ものごとについて、その向かう先の人物を立てて述べるものなので、謙譲語Ⅰです。
2は、相手のものについて、「お+名詞」が用いられています。
相手側または第三者の行為・ものごと・情態などについて、その人物を立てて述べるものなので、尊敬語です。
3は、「魚」を丁寧に述べるために、「お+名詞」が用いられています。
ものごとを美化して述べるものなので、美化語です。
4は、自分が書くものについて、「お+名詞」が用いられています。
自分側から相手側または第三者に向かう行為・ものごとについて、その向かう先の人物を立てて述べるものなので、謙譲語Ⅰです。
問5 待遇表現
解説 待遇表現
「待遇表現≠敬語」なので、混同しないように注意しましょう。
待遇表現には、相手を高める敬語表現のほか
お前
のように、相手を低く扱う軽卑表現や
俺様
のように、自身を高く扱う尊大表現などが含まれます。
その答えになる理由
○ 先生、私が黒板を消します。
× 先生、私が黒板を消してあげます。
× 先生、私が黒板を消してさしあげます。
のように、「てさしあげる」は、相手や場面によっては差し出がましい印象を与えることがあります。
1が間違いです。
言語表現としては間違っていなくても、踏み込み過ぎた内容など、相手への配慮を踏まえた内容面の指導も必要ですね。
2は、間違っていません。
一文での言語表現としては間違っていなくても、前置きが必有無など、談話レベルでの指導も必要ですね。
3は、間違っていません。
「名前+先生」は特に難しい表現でもないので、最初からその呼び方をさせた方が良いですね。
4は、間違っていません。