令和4年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅰ 問題3A
の解説です。
お手元に、問題冊子をご用意の上でご確認ください。
前の問題はこちら
(1)並列助詞
その答えになる理由
助詞は、名詞や動詞などについて様々な働きをする活用のない品詞です。
- 名詞などについて述語との文法関係を表す「格助詞」
- 主節と従属節をつなげる「接続助詞」
- 文末についてモダリティなどを表す「終助詞」
- 文の成分に特別な意味を付け足す「とりたて助詞」
- 対等な関係で語と語を結ぶ「並列助詞」
- 名詞によって名詞を修飾するときに間に入る「連体助詞」
に分類されます。
3が正解です。
助詞の種類については、以下の記事で詳しく解説しています。
こちらもあわせてご確認ください。
(2)格助詞
解説 格助詞
この問題自体は、上記を覚えていれば解けてしまうのですが、せっかくなので少し深掘りしておきます。
「格助詞」の「格」とは、名詞と述語の間に成り立つ意味関係を表す文法的手段のことです。
名詞の「格」は、基本的に格助詞「が・を・に・へ・と・から・より・で・まで」で表します。
例えば…
日本語教育能力検定試験の合格が本当にうれしい。
→ 「合格」は、述語「うれしい」の【対象】という意味関係にある。
いつもより早く学校に着いた。
→ 「学校」は、述語「着いた」の【着点】という意味関係にある。
のようなイメージです。
名詞や名詞句などについて、述語との意味関係を表していますね。
格助詞については、以下の記事で詳しく解説しています。
こちらもあわせてご確認ください。
その答えになる理由
格助詞は、「が・を・に・へ・と・から・より・で・まで」の9つでしたね。
1 に
2 と
3 も
4 より
上記に含まれない3が正解です。
3の「も」は、とり立て助詞です。
すでに雨などが強い状況の中、風も強くなってきた…のように、文の成分に意味を追加しています。
3以外の選択肢も確認しておきましょう。
1の「に」は、述語「行く」の【移動の目的】が「迎え」であるという意味関係を表しています。
2の「と」は、述語「同じ」の【基準としての相手】が「昔」であるという意味関係を表しています。
4の「より」は、述語「好きだ」の【比較対象】が「電子辞書」であるという意味関係を表しています。
並列助詞の場合もある「と」などが出題されると難易度が高めになるのですが、今回は格助詞に該当するものは何かを知っている・知らないだけでしたね。
「と」で問題を作るのであれば、以下のイメージです。
① Aさんと図書館で勉強した。
② AさんとBさんに勉強を教えた。
①の「と」は、格助詞です。
「Aさん」は、述語「勉強した」の【相手】という意味関係にあります。
②の「と」は、並列助詞です。
「Aさん」と「Bさん」の2人を列挙しています。
格助詞の用法については、以下の記事で詳しく解説しています。
こちらも合わせてご確認ください。
(3)接続助詞
その答えになる理由
例文を作って考えてみましょう。
1 天気が良くないから、傘を持っていこう。
2 天気が良くないが、イベントは決行した。
3 雨天中止と告知しておきながら、イベントは決行された。
4 天気が良くないものの、イベントは決行した。
2・3・4は【逆接】ですが、1は傘を持っていく【原因・理由】を表しています。
1が正解です。
(4)終助詞
その答えになる理由
例文を作って考えてみましょう。
1 1番になるのは当然さ。
2 せっかくなら、1番を目指そうぜ。
3 そんなことでは、1番になれないぞ。
4 やはり、彼が1番だよね。
1の「意向形」とは「なろう」の形のことです。
「さ」で例文を作るのは難しそうですね。
2の「命令形」は「なれ」の形のことです。
「ぜ」で例文を作るのは難しそうですね。
3の「否定形」は「ならない・なれない」の形のことです。
「ぞ」で例文にできています。
4の「疑問詞疑問文」は「なぜ…なるのか」「どのように…なるのか」の形のことです。
「よね」で例文を作るのは難しそうですね。
3が正解です。
(5)複合助詞(複合格助詞)
解説 複合助詞(複合格助詞)
① Aさんと図書館で勉強した。
② Aさんと一緒に図書館で勉強した。
①の「と」は格助詞、②の「と一緒に」は複合助詞(複合格助詞)です。
①よりも②の方が、意味がわかりやすくなっていますね。
このように、複合助詞(複合格助詞)は述語との意味関係をより明確にする役割を持っています。
その答えになる理由
選択肢が例文になっているので、それぞれ見ていきましょう。
1の述語「難しい」と評価しているのは、「私」ですね。
評価を行う人や立場を表せているので、1は間違いです。
2の「10時間にわたって」の「10時間」は、時間的な範囲を表しています。
前半は合っているので、後半の「空間的な範囲は表せない」を見ていきましょう。
「日本全国にわたって、インフルエンザが流行している」のように、「~にわたって」を使い「空間的な範囲」も表せていますね。
2は間違いです。
3の「~によって」が表すのは、原因または手段です。
「無理な運動によってケガをしてしまった」であれば「原因」、「運動を継続することによって、ケガをしにくくなる」であれば「手段」を表しています。
「センサーによって…」の例文だと「手段」の用法ですね。
選択肢にある「物事の変化に合わせて…」の内容が該当するのは、「~によって」ではなく「~につれて」「~に伴い」などではないかと思います。
台風が近づくにつれて、波が高くなっていった。
大学進学に伴い、一人暮らしを始めた。
3は間違いです。
4の「~につれて」は、「春になる」という進展とともに「暖かくなる」という他の事態の進展する…という意味関係を表しています。
これが正解です。