令和4年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅰ 問題2
の解説です。
お手元に、問題冊子をご用意の上でご確認ください。
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(1)
その答えになる理由
【 】内では、「かならず」とすべきところが「かだらず」になっています。
[n] 有声歯茎鼻音
[d] 有声歯茎破裂音
のように、調音法が置き換わる誤用です。
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1は、「こども」とすべきところが「ころも」になっています。
[d] 有声歯茎破裂音
[ɾ] 有声歯茎弾き音
のように、調音法が置き換わる誤用です。
2は、「にせんえん」とすべきところが「にせんねん」になっています。
不要な子音[n]が挿入される誤用です。
3は、「きれいな」とすべきところが「きねいな」になっています。
[ɾ] 有声歯茎弾き音
[n] 有声歯茎鼻音
のように、調音法が置き換わる誤用です。
4は、「からい」とすべきところが「かだい」になっています。
[ɾ] 有声歯茎弾き音
[d] 有声歯茎破裂音
のように、調音法が置き換わる誤用です。
2だけ誤用の種類が違いますね。
これが正解です。
(2)
その答えになる理由
【 】内では、「こわれません」とすべきところが「こわれられません」になっています。
「不要な『れる/られる』が挿入されている!」と思った方は、イイ線いっています。
正確には、「可能形にできるのは『意志動詞』のみなので、『壊れる』という無意志動詞は『れる/られる』を接続して可能形にできない」です。
自動詞・他動詞の区別ではないので、注意しましょう。
1の「落ちる」は無意志動詞なので、「れる/られる」を接続して可能形にすることができません。
【 】内と同様の誤用です。
2の「倒れる」は無意志動詞なので、「れる/られる」を接続して可能形にすることができません。
【 】内と同様の誤用です。
3の「乗る」は意志動詞なので、「れる/られる」を接続して可能形にできます。
「れる/られる」はどちらも動詞の未然形に接続することは変わりないのですが、「れる」は五段・差段動詞に、「られる」は上一段・下一段・サ変動詞につくという違いがあります。
「乗る」は五段動詞なので、接続するのは「られる」ではなく「れる」ですね。
接続する助動詞を混同しています。
4の「収まる」は無意志動詞なので、「れる/られる」を接続して可能形にすることができません。
【 】内と同様の誤用です。
3だけ誤用の種類が違いますね。
これが正解です。
(3)
その答えになる理由
【 】内では、「読むこと」とすべきところが「読みこと」になっています。
後続が「こと」なので、連用形ではなく連体形が正しいですね。
活用の誤用です。
1は、「行くので」とすべきところが「行きので」になっています。
後続が「の」なので、連用形ではなく連体形が正しいですね。
活用の誤用です。
2は、「聞きながら」とすべきところが「聞くながら」となっています。
後続が「ながら」なので、連体形ではなく連用形が正しいですね。
活用の誤用です。
3は、「返さなければ」とすべきところが「返しなければ」となっています。
後続が「ない」なので、連用形ではなく未然形が正しいですね。
活用の誤用です。
4は、「写すべきではありません」とすべきところが「写さないべきです」となっています。
否定の位置が異なることによる誤用です。
4だけ誤用の種類が違いますね。
これが正解です。
(4)
その答えになる理由
【 】内では、「帰宅したら」とすべきところが「帰宅すれば」になっています。
例文のような2つの事態の因果関係を表す文を条件文といい、その従属節を条件節といいます。
仮説条件文をつくるときには「ば」「たら」「と」「なら」を用いますが、主節が行為要求・勧誘のモダリティをもつ場合、条件節には「たら」「なら」は現れるが「ば」「と」は現れないという制約があります。
【 】内の例文は、主節が「~しなさい」という行為要求なのに「ば」が用いられているという誤用だ!…と思ったのですが、選択肢はどれも主節が行為要求・勧誘ですね。。
もう少し細かく見ていかなければいけなそうです。
【 】内で用いられている「ば」には、主節が行為要求や希望・意志の表現の場合、従属節の述語が状態性の場合は用いることができるが、動作性の述語場合には用いることができないという制約があります。
【 】内も、1~4の選択肢も主節が動作性の述語ですね。
このことから、例文・選択肢ともに「ば」は誤用であることがわかります。
それでは、「たら」「と」「なら」のどれであれば誤用でない文になるかを考えてみましょう。
1 入ったら
2 欠席するなら
3 行ったら
4 提出したら
2だけ「たら」が使えないですね。
これが正解なのですが、せっかくなので、なぜ使えないかまで解説していきます。
注目すべきは、時系列です。
「ば」「たら」「と」は、従属節の成立のあとで主節の事態が成立するという関係しか表すことができません。
一人暮らしをすれば、自立心が芽生えるだろう。
大学生になったら、一人暮らしをしてみたい。
大学生になると、自然と交友関係が広がった。
一方、「なら」は従属節の事態と主節の事態が同時に成立するとき・従属節の事態が主節の事態よりもあとに成立するときの両方を表すことができます。
選択肢を改めて確認すると…
1 従属節:部屋に入る → 主節:会話NG
2 主節:事前連絡 → 従属節:授業を欠席
3 従属節:北海道に行く → 主節:スキーをしたい
4 従属節:卒業論文提出 → 主節:休もう
のように、2だけ主節と従属節の時系列が違いますね。
長くなってしまいましたが、まとめると…
主節の述語が動作性なので、従属節に「ば」が使えないという誤用
↓
2だけ主節→従属節の時系列なので、「なら」しか使えない
という問題でした。
(5)
その答えになる理由
【 】内では、「うれしそうです」などとすべきところが「うれしいです」になっています。
第三者の感情なので、断言ではなく、「うれしそうです」「うれしいようです」「うれしがっていました」のようにしないと不自然ですね。
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1は「タイ料理が」とすべきところが「タイ料理を」になっています。
格助詞の誤用です。
2は、「買いたいそうです」などとすべきところを「買いたいです」としています。
第三者の感情を断言してしまっている誤用です。
3は、「痛いそうです」などとすべきところを「痛いです」としています。
第三者の感情を断言してしまっている誤用です。
4は、「思っているそうです」などとすべきところを「思います」としています。
第三者の感情を断言してしまっている誤用です。
1だけ誤用の種類が違いますね。
これが正解です。