令和4年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅰ 問題7
の解説です。
お手元に、問題冊子をご用意の上でご確認ください。
前の問題はこちら
問1 学習者オートノミー
解説 学習者オートノミー
その答えになる理由
下線部Aよりも後ろにある下線部Bが、「学習者オートノミー」の内容そのままですね。
- 学習者自身が
- 目標設定、計画、実効、評価というサイクルを繰り返す
が「=学習者が自分自身の学習を管理する能力」なので、4が正解です。
問2 独習
その答えになる理由
学習者オートノミーとは似ているが厳密には異なり、教師の指導を受けずにテキストなどで学習するものが答えです。
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1の「演習」とは、教師の指導のもとで行われる実施型の教室活動のことです。
2の「独習」とは、指導者の教えを受けずに知識・技術を自分で学ぶことです。
ほぼ同じ意味の言葉に「独学」があります。
3の「探求学習」とは、学習するテーマを自身で見つける学習形態の1つです。
4の「暗示的学習」とは、入ってくる言語情報に対して、ほぼ無意識に規則を見出していくインプット処理のことです。
第二言語習得の分野で出てくる用語ですね。
「学習者オートノミーとは似ているが厳密には異なり、教師の指導を受けずにテキストなどで学習するもの」と考えると、2が最も適当ですね。
これが正解です。
問3 メタ認知能力
その答えになる理由
下線部Bは、「学習者オートノミー」の内容ですね。
学習者自身が、目標設定→計画→実行→評価という学習のサイクルを管理しています。
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
「学習者オートノミー」の場合、1人で学習サイクルを回していくため、ほかの方法よりも学習自体における「コミュニケーション能力」の優先度が下がります。
1は間違いです。
この場合の「バリエーション能力」は、言語変異(language variation)と言語変種(language varieties)の違い…のような小難しい内容ではないですね。
文字通り、「バリエーションの運用能力」という捉え方で良さそうです。
何にせよ、「学習者オートノミー」に直結する用語ではありません。
2は間違いです。
「学習言語能力(CALP)」とは、教科学習など、抽象的な思考や高度な思考技能が必要とされる場で必要な力のことです。
文脈から切り離された低コンテクストな状況で認知的な負担が大きいため、習得には5年以上必要だとされています。
対になる語は「生活言語能力(BICS)」です。
生活場面で必要とされる言語能力で、抽象的な概念や高度な思考を伴う言語活動ではないため、2年程度で習得可能だとされています。
「学習者オートノミー」ができるレベル(=自身で学習を計画から評価まで完結できるレベル)は、「学習言語能力(CALP)」が習得できたレベルよりも、さらに高い位置にありますね。
3は間違いです。
「メタ認知能力」とは、自身の認知活動(考える・感じるなど)を客観的に観察できる力のことです。
「学習者オートノミー」のような自己管理のためには、この「メタ認知能力」が必要になります。
4が正解です。
問4 学習日誌
その答えになる理由
今回のポイントは、単なる学習日誌についてではなく、「学習者オートノミー」における学習日誌の運用だということです。
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
「学習者オートノミー」は、自律学習です。
学習者自身が「毎日、教師に提出してフィードバック受ける」という評価方法を選択しない限り、教師への提出義務はありません。
1は間違いです。
「学習者オートノミー」は、自律学習です。
学習日誌に記載する内容(=振り返る内容)も学習者自身で決定します。
- 学習のことだけを学習日誌に書く。
- 日常生活のことも学習日誌に書く。
のどちらでもOKですね。
2は間違いです。
「学習者オートノミー」が上手くいくかどうかは、学習サイクルがきちんと回せるかがポイントになります。
特に、最初の「計画」と最後の「評価」の部分が重要です。
学習日誌で自身の問題点を発見することができれば、次回の計画に活かして、より良いサイクルにしていくことができますね。
3は正しいです。
「学習者オートノミー」は、自律学習です。
周囲に頼る必要がなければ自己完結でも構わないので、学習日誌への記載も目標言語でなくても良いですね。
4は間違いです。
問5 学習オートノミーを育てるために教師が行う工夫
その答えになる理由
「学習者オートノミー」は、自立学習です。
学習順序の決定権は学習者側にあるため、教師側で学習の順序まで決めた教材を用意することはありません。
1が不適当です。
ただし、「学習者オートノミー」は自律学習であるものの、学習者に何から何まで丸投げ…というわけではありません。
学習者が自身で進めやすいような環境づくりは、教師側で行う必要があります。
2~4は、その具体例として適当です。