
令和4年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅲ 問題8
の解説をしていきます。
お手元に、以下をご用意の上で読んでいただければ幸いです。
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前の問題はこちら
問1 文化の氷山モデル
解説 文化の氷山モデル
「文化の氷山モデル」では、文化とは氷山のように表面に見えるものと見えないものがあるという考え方です。
見える文化(表層文化)には、食べ物・音楽・衣服・建築物などがあり、見えない文化(深層文化)には、価値観・考え方・言葉の意味・行動の意味・信仰などがあります。
また、見えない文化は、見える文化よりもずっと大きく、その文化を持つ人のアイデンティティに影響を与えているとされています。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
「ジェスチャー」は、表面に見えるものですね。
「見える文化(表層文化)」に該当するので、1は間違いいです。
「服装」は、表面に見えるものですね。
「見える文化(表層文化)」に該当するので、2は間違いです。
「建築物」は、表面に見えるものですね。
「見える文化(表層文化)」に該当するので、3は間違いです。
「思考法」は、表面には見えないものですね。
「見えない文化(深層文化)」に該当するので、4が正解です。
問2 レアリア(生教材)
解説 レアリア(生教材)
「レアリア(生教教材)」とは、母語話者向けに書かれた文章や、母語話者の会話などを加工・編集せずに、そのまま使用した教材のことです。
「レアリア」と「生教材」を区別することもあります。
その場合、「レアリア」のなかでも、特にその本当の物に含まれている情報に注目して利用するときにのものが「生教材」です。
日本語で書かれている新聞は「レアリア」、その新聞の文面などの情報は「生教材」に当たります。
その答えになる理由
今回の問題では「レアリア」と「生教材」は区別されていないですね。
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
「レアリア(生教材)」は、単に言葉で説明するよりも、学習者に関心を持ってもらうことができます。
1は「レアリア」に関する記述として適当です。
「レアリア(生教材)」は、学習者が実際に使うものほど、関心を持ってもらえます。
紙幣・硬貨などは、学習者にとって身近&国によっても種類が大きく違うので、違いを実感してもらうのに良いですね。
2は「レアリア」に関する記述として適当です。
「レアリア(生教材)」は、母語話者向けに書かれた文章や、母語話者の会話などを加工・編集せずに、そのまま使用した教材のことです。
長さの違った様々な色の棒は、母語話者には関係ないですね。
3は「レアリア」に関する記述として不適当です。
母語話者向けのニュース映像を「レアリア(生教材)」として使う場合など、そこに書かれている表現を練習として使ったり、そこに書かれている内容を読み取る教室活動として使ったりすることができます。
4は「レアリア」に関する記述として適当です。
問3 「ロールプレイ」を取り入れた授業の例
解説 ロールプレイ
「ロールプレイ」とは、会話の目的・状況等を設定し、与えられた役割に沿って会話を進める練習のことです。
●与えられた状況に限定して会話をする
●役割だけ与えて、自由に会話させる
など、学習者のレベルに応じて様々なやり方を取ることができます。
その答えになる理由
「ロールプレイ」は、与えられた役割に沿って会話を進める練習をすることで、導入した文型の定着を図ったり、自文化との違いを学習者に考えさせたりすることができます。
3だけ、会話練習になっていないですね。
これは「ロールプレイ」の活動ではなく、「レアリア(教材)」を使った授業の例です。
問4 ビジターセッション
解説 ビジターセッション
「ビジターセッション」とは、言語教育の現場に母語話者を招いたり母語話者のコミュニティを訪れたりするなどして、実際に母語話者との会話の中で目標言語を使用させる活動のことです。
その答えになる理由
「ビジターセッション」を実施する目的は、学習者・母語話者のどちらかによる一方的な発話だけでなく双方向にコミュニケーションを取ることで、目標言語の運用能力を高めることにあります。
1が上記の内容そのままですね。
これが正解です。
他の選択肢も見ておきましょう。
2は「教師は介入しない」が間違いです。
母語話者とのコミュニケーションは、未習語彙が出てきたり、学習者にとって難しい内容が出てきたりすることもあるので、必要に応じて教師が介入してサポートします。
3は「ビジターが事前に調べてきた情報を…」が間違いです。
このような一方的な情報提供ではなく、双方向のコミュニケーションを重視するのが「ビジターセッション」の特徴の1つです。
4は「ビジター個人の意見や気持ちを…」が間違いです。
教科書的な内容ではなく、実際に母語話者と会話することで生の情報を得ることができるのが「ビジターセッション」の特徴の1つです。
問5 ポートフォリオ
解説 ポートフォリオ
「ポートフォリオ」とは、ファイルなどに個人の活動記録や成果(作文や個人のスピーチを録音したもの等)を集めたものを言います。
それらの資料を学習者自身が教師と共同で評価することを「ポートフォリオ評価」と言い、数値化が難しい学習者の活動や作品を質的に見ることで、学習意欲の向上や自律的学習につなげることができます。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1は「数値化して…」が間違いです。
テストで測れるような数値以外で評価できるものを集めたのが「ポートフォリオ」です。
2のように、授業の前の状態・授業後の状態がわかるように「ポートフォリオ」として保存することで「何ができるようになったか」「どの部分の考え方が変わったのか」をわかるようにすることができます。
これが正解です。
3は「母語の使用は禁止する」が間違いです。
「ポートフォリオ」で大切なのは「そのときの状態を保存すること」ですが、特に初級レベルだと目標言語だけで記述するのは難しいですね。
4は「学習に対する姿勢は…」が間違いです。
学習に対する姿勢のような、テストで測ることができない内容を把握するのが「ポートフォリオ」の役割だと言えます。