【令和5年度 日本語教育能力検定試験 過去問】試験Ⅰ 問題9の解説!

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令和5年度 過去問解説

令和5年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における

 試験Ⅰ 問題9

の解説をしていきます。

お手元に、問題冊子をご用意の上で読んでいただければ幸いです。

※ 執筆時点では、公式からの解答は出ていません。参考程度にご確認ください。

前の問題はこちら

問1 第二言語習得における子どもと大人の特徴の違い

その答えになる理由

選択肢を1つずつ見ていきましょう。

「認知能力」とは、IQやテストの点数などの数値で表すことができる能力のことです。
大人は子どもよりも認知能力が発達しているので、第二言語習得で文法を理解する初速は、大人>子どもだと言えます。
1が正解です。

日本でも幼児の英語教育が注目されていることからわかるように、発音の身につけやすさは、子ども>大人です。
だからといって、大人だと十分な伝達能力を身に付けるのは難しい…は言い過ぎですね。
きちんと訓練すれば、大人・子どもに関係なく、発音や伝達能力を習得することは可能です。
2は間違いです。

子どもよりも大人の方が母語が身に付いているので、母語のフィルターが強いのも、大人>子どもですね。
3は間違いです。

第二言語習得には、複数の要素が影響します。
年齢であったり、言語適性であったり、周りにどれくらいその言語を話す人がいるかだったり、その言語と母語の類似性であったり…●●よりも▲▲!と言い切るのは難しいですね。
4は間違いです。

問2 敷居(閾)仮説

解説 敷居仮説 閾仮説 敷居理論

「敷居仮説」とは、カミンズが提唱した「バイリンガルの二言語それぞれの言語習熟度と認知的能力との関係」を説明したものです。
以下の3つに分類されます。

● 均衡バイリンガル
2つの言語習熟度が十分なレベルに達しており、バイリンガルであることが認知的にプラスに働く状態

● 偏重バイリンガル
十分な言語習熟度に達しているのが母語のみのため、バイリンガルであることが認知的にプラスにもマイナスにも働いていない状態

● 限定的バイリンガル
どちらの言語習熟度も十分とは言えず、バイリンガルであることがマイナスに働いている状態

解説 相互依存仮説

「相互依存仮説」とは、カミンズが提唱した「第一言語の能力が発達しているほど第二言語も発達しやすく・第一言語の能力が低いと第二言語も発達しにくい」と説明したものです。

以下の「二言語基底共有仮説(氷山説)」の考え方がベースになっています。

解説 二言語基底共有説 氷山説 共有基底言語能力モデル CUP

これに限らずなのですが、外国語の論文を翻訳する中で日本語表記が複数ある用語があります。
私は、共有基底言語能力モデル(氷山説)で覚えていました。

「二言語基底共有説(氷山説)」とは、「バイリンガルが2つの言語を習得・使用する場合に、別々に機能しているように見えたとしても、根幹部分は共有している部分がある」という考え方を指します。
片方の言語で抽象度の高い取り組みができたときに、他方の言語でも近しい取り組みが実現できるイメージです。

この「抽象度の高い取り組み」とは、問3で解説している「学習言語能力(CALP)」が該当します。

解説 風船説 分離基底言語能力モデル SUP

用語を覚えるときは、対になるものも一緒に整理してしまいましょう。

「分離言語基底分離説(風船説)」とは、「バイリンガルが2つの言語を習得・使用する場合に、それぞれで培った知識は別々に機能する」という考え方を指します。
脳全体の容量には限界があるため、一方ができるようになると、もう一方が縮小されるイメージです。

その答えになる理由

選択肢を1つずつ見ていきましょう。

1は、「発達相互依存仮説」の内容です。
2は、「敷居(閾)仮説」の内容です。
3は、「分離基底言語能力モデル(風船説)」の内容です。
4は、「二言語基底共有説(氷山説)」の内容です。

2が正解です。

問3 生活言語能力(BICS)・学習言語能力(CALP)

解説 学習言語能力 CALP

「学習言語能力(CALP)」とは、教科学習など、抽象的思考や行動な思考技術が必要な能力のことです。
用語だけ見ると小難しいのですが、以下の「生活言語能力」の対になるものだと考えるとイメージがしやすくなります。
実際の場面と完全一致はしないため、文脈から推測するのが難しかったり、背景知識の習得が必要になったりで比較的習得に期間が必要です。

解説 生活言語能力 BICS

「生活言語能力(BICS)」とは、その名の通り、生活場面で必要とされる言語能力のことです。
文脈の支えがあることが多く、身近な事柄でもあるため「学習言語能力」よりも早く身に付けることができます。
※ 特に低年齢の言語教育の場合、「生活言語能力」がついたからといって「学習言語能力」が身に付いたとは限りません。

解説 カナル&スウェインによるコミュニケーション能力(伝達能力)の分類

カナル&スウェインは、コミュニケーション能力(伝達能力)の下位分類として、以下の4つを挙げています。

解説 社会言語能力

「社会言語能力」とは、カナル&スウェインが唱えたコミュニケーション能力(伝達能力)を構成する能力の1つで、場面に応じて適切な表現を使用できる力のことです。

解説 文法能力

「文法能力」とは、カナル&スウェインが唱えたコミュニケーション能力(伝達能力)を構成する能力の1つで、語彙や文法を正確に使用できる力のことです。

解説 ストラテジー能力

「ストラテジー能力」とは、カナル&スウェインが唱えた伝達能力を構成する能力の1つで、コミュニケーションを円滑に行うための力のことです。
伝達が上手くいかなった際の対応の仕方などが含まれます。

解説 談話能力

「談話能力」とは、カナル&スウェインが提唱したコミュニケーション能力(伝達能力)を構成する能力の1つで、発話を理解し構成する力のことです。
会話の切り出し方や、発話の順番の取り方などが含まれます。

その答えになる理由

選択肢1・2で出てくる「語用論的能力」とは、カナル&スウェインによるコミュニケーション能力の分類の中の「社会言語能力」に当たります。

コミュニケーションではなく第二言語習得の内容なので、入るのは「学習言語能力(CALP)」と「生活言語能力(BICS)」ですね。

「学習言語能力(CALP)」と「生活言語能力(BICS)」で習得に時間がかかるのは、「学習言語能力(CALP)」です。

「生活言語能力(BICS)」文脈の支えがあることが多く、身近な事柄でもあるため早く身に付けることができるのですが、「学習言語能力(BICS)」は実際の場面と完全一致はしないため、文脈から推測するのが難しかったり、背景知識の習得が必要になったりで比較的習得に期間が必要だと言われています。

(ア)が「生活言語能力(BICS)」
(イ)が「学習言語能力(CALP)」
ですね。

4が正解です。

問4 学齢期の子どもが第二言語として日本語を学習する際の特徴

その答えになる理由

選択肢を1つずつ見ていきましょう。

第二言語学習において、会話は重要ですが、だからといって読み書きを学ぶ必要がないわけではありません。
1は間違いです。

2は何も問題ありません。
これが正解です。
多くの第二言語習得論で幼児の母語習得過程が研究されているのも、この考え方がベースになっています。

就学前だと「私、●●語を話せるようになりたい!」のように自分の意志で第二言語学習をスタートすることがありますが、学齢期だと「学校で●●語の授業が始まったから」のように自分の意志でない学習スタートも増えていきますね。
3は間違いです。

「ある程度、第一言語の能力が身に付いてから第二言語へ」はあるかもしれませんが、あえて教科だけ・第二言語だけにする必要はないですね。
学齢期であれば、同時進行が基本になると思います。
4は間違いです。

問5 内発的動機づけ

解説 内発的動機づけ

「内発的動機づけ」とは、興味がある・面白いといった自分の内側から湧きおこる動機づけのことです。

解説 外発的動機づけ

「外発的動機づけ」とは、ほめられたい・見返りが欲しいといった何らかの報酬を得ることが目的である動機づけのことです。

その答えになる理由

1は「内発的動機づけ」・2~4は「外発的動機づけ」の内容ですね。
1が正解です。

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