令和6年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅰ 問題3B
の解説です。
執筆時点では、正式解答は公表されていません。
参考の1つとして、ご確認ください。
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(6)補助動詞
解説 補助動詞
【本動詞】
窓のそばにAさんがいる。
Bさんが教室に来た。
【補助動詞】
Aさんが本を読んでいる。
Bさんが走って来た。
その答えになる理由
1が補助動詞の説明そのままですね。
これが正解です。
(7)「てみる」
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
可能動詞とは、
走れる
読める
などの1語で可能の意味を表すことができる動詞のことです。
○ 100メートルを6秒で走れる。
× 100メートルを6秒で走れてみる。
のように、可能動詞単独では問題ないですが、「てみる」とともに用いると不自然ですね。
1は、間違いです。
意志動詞とは、
走る
読む
などの主体の意志によって行われる動作を表す動詞のことです。
反対に、主体の意志に関係なく行われる動作を表す動詞を「無意志動詞」と言います。
【意志動詞】
○ 全力で走ってみる。
○ 辞書なしで英語の本を読んでみる。
のように、意志動詞に「てみる」とともに用いることができますが、
【無意志動詞】
× 雑草が茂ってみる。
× 季節が移ろってみる。
のように、無意志動詞は「てみる」とともに用いることができないですね。
2は、正しいです。
○ 全力で走ってみた。
○ 辞書なしで英語の本を読んでみた。
のように、「てみる」を過去形で用いることもできます。
3は、間違いです。
○ 全力で走ってみたら、自己ベストを更新できた。
○ 辞書なしで英語の本を読んでみたが、あまり理解できなかった。
のように、「てみる」を従属節で用いることもできます。
4は、間違いです。
(8)縮約形
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
ここにカバンを置いていくね。
↓
ここにカバンを置いてくね。
のように、「ていく」の縮約形は、末尾ではなく、語中の「い」の音の脱落によって生じます。
1は、間違いです。
外を走っているのがAさんです。
↓
外を走ってるのがAさんです。
のように、「ている」の縮約形は、語中の母音の「い」の脱落によって生じます。
2は、間違いです。
【非過去形】
窓ガラスを割ってしまう。
↓
窓ガラスを割っちゃう。
【過去形】
窓ガラスを割ってしまった。
↓
窓ガラスを割っちゃった。
のように、「てしまう」の縮約形は、非過去形・過去形のいずれでも用いることができます。
3は、正しいです。
【非過去形】
ここに本を置いておくね。
↓
ここに本を置いとくね。
【過去形】
ここに本を置いておいたよ。
↓
ここに本を置いといたよ。
のように、「ておく」の縮約形は、非過去形・過去形のいずれでも用いることができます。
4は、間違いです。
(9)「動きの持続や、結果の維持・残存」の用法
その答えになる理由
Aさんが外で走る。
だと、動きを表していますが、
Aさんが外で走っている。
だと、その動きが1つの状態として取り上げられ、動きの継続(進行中の状態)を表すことができます。
また、
部屋の明かりが消える。
だと、動きを表していますが、
部屋の明かりが消えている。
だと、「消える」という変化の結果の維持・残存(結果の状態)を表すことができます。
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
歌を歌う。
だと、動きを表していますが、
歌を歌っている。
だと、その動きが1つの状態として取り上げられ、動きの継続(進行中の状態)を表すことができますね。
1は、「動きの持続や、結果の維持・残存」の用法に当てはまります。
エアコンが壊れる。
だと、動きを表していますが、
エアコンが壊れている。
だと、「壊れる」という変化の結果の維持・残存(結果の状態)を表すことができますね。
2は、「動きの持続や、結果の維持・残存」の用法に当てはまります。
鍵が掛かる。
だと、動きを表していますが、
鍵が掛かっている。
だと、「掛かる」という変化の結果の維持・残存(結果の状態)を表すことができますね。
3は、「動きの持続や、結果の維持・残存」の用法に当てはまります。
計算能力が優れる。
は、状態を表しており、これは
計算能力が優れている。
でも同様です。
4は、「動きの持続や、結果の維持・残存」の用法に当てはまる内容ではありません。
これが正解です。
「優れる」は、金田一春彦の動詞分類における「第4種の動詞」に分類されるものの1つです。
通常「ている」とともに用いられ、常に状態を表しています。
解説 金田一春彦の動詞分類
① 状態動詞
- 「~ている」をつけなくても状態を表す動詞
- 「いる」「ある」「動詞の可能形」など
② 継続動詞(動作動詞)
- 「~ている」とともに動きが進行中であることを表す動詞
- 「話す」「走る」など
③ 瞬間動詞(変化動詞)
- 「~ている」とともに動きの結果を表す動詞
- 「消える」「死ぬ」など
④ 第4種の動詞
- 必ず「~ている」とともに状態を表す動詞
- 「そびえる」「きわだつ」など
(10)自他のペアのある動詞に後接する場合
その答えになる理由
ドアが開く(あく)。
だと、動きを表していますが、
ドアが開いている(あいている)。
だと、「ドアが開く」という動きの結果がそのままになっていることを表しています。
自動詞のため、行為者は含意されていません。
また、
ドアを開ける。
だと、動きを表していますが、
ドアを開けてある。
だと、「ドアを開ける」という行為の結果がそのままになっていることを表しています。
他動詞のため、自然な動きではなく、行為者がいることが含意されていますね。
自動詞の「開いている(あいている)」は、
- 行為者が含意されていない動きの結果
他動詞の「開けてある」は、
- 行為者が含意されている動きの結果
を表しているので、4が正解です。