令和6年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅲ 問題13
の解説です。
執筆時点では、正式解答は公表されていません。
参考の1つとして、ご確認ください。
前の問題はこちら
問1 様々な意味・機能を持つ依頼の文型
その答えになる理由
例文で考えてみましょう。
明日はデートなので、晴れてほしいなあ。
を1人でつぶやくのであれば、「てほしい」は単なる願望ですが、
明日はデートなので、駅まで車で送ってほしいなあ。
を相手に伝えるのであれば、「てほしい」が願望を使った依頼の表現になりますね。
1は、正しいです。
この文型の使い方について、ご教示ください。
のように、「ください」は、依頼を表す表現であり、意向の意味はありません。
意向を使った依頼の表現であれば、
この文型について、例文を使って紹介しましょう。
のように、「しましょう」などが良いですね。
2は、間違いです。
部屋に入ってもいいですか?
のように、「てもいいですか(てもよいですか)」は、許可を表す表現であり、恩恵的行為を求める意味はありません。
3は、間違いです。
約束の時間を1時間遅らせていただくことはできますか?
のように、「ていただくことはできますか」は、可能・不可能を表す表現であり、許可を求める意味はありません。
4は、間違いです。
問2 日本文化で見られる他の文化とは異なる謝罪の特徴
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
納品が遅れる可能性について、事前にメールでお送りしていましたが、メールを見たかの確認をしていませんでした。
のように、自己の非について事細やかな釈明・弁解をするよりも、
納品が遅れてしまい、申し訳ございません。
のように、まず謝罪することが多いですね。
「自己の非について事細やかな釈明や弁解をせず」とまでは言い切れない気がしますが、1が最も適当です。
先日の納品が遅れた件では、ご迷惑をおかけしました。
のように、その場限りでの完結ではなく、別の機会に謝罪を繰り返すこともありますね。
2は、間違いです。
この度は、世間をお騒がせしてしまい、申し訳ございませんでした。
のように、事の是非に関わりなく謝罪することもありますね。
3は、間違いです。
弊社の納品遅れにより、御社のスケジュールが後ろ倒しになってしまい、大変申し訳ございません。
のように、自分が与えた被害について言及して謝罪することもありますね。
4は、間違いです。
問3 褒めやねぎらいの日本語
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
ご苦労様です。
は、上の立場の人が下の立場の人に使う表現です。
選手がコーチへのねぎらいとして使うのであれば、
お疲れ様です。
の方が良いですね。
1は、間違いです。
目上の立場の人の能力・行為・容姿などに対して、
良かったですよ。
と褒めるのは、失礼になる場合がありますね。
2は、間違いです。
お疲れ様でした。
は、上の立場の人に対しても、下の立場の人に対しても用いることができる表現です。
同僚に対してなので、適切な表現ですね。
3は、正しいです。
2と同じように、目上の立場の人の能力・行為・容姿などに対して、
いい●●ですね。
と褒めるのは、失礼になる場合がありますね。
4は、間違いです。
問4 スピーチレベルシフト
解説 スピーチレベルシフト
その答えになる理由
「丁寧さを示すスピーチレベルが会話の中で切り替えわり得ること」なので、スピーチレベルシフトの内容ですね。
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
A 「このあと、どうする?」
↓
B 「外が真っ暗だね。」
↓
A 「もう帰ろうか?」
のような普通体が基調の会話で、出来事をそのまま描写する発話である
B 「外がもう真っ暗だね」
を
B 「外がもう真っ暗ですね」
のような丁寧体にすると、不自然ですね。
1は、間違いです。
A 「歳いくつ?」
↓
B 「20歳」
↓
A 「え!私も20歳だよ!」
のような普通体が基調の会話で、話し手と聞き手の心的距離を近づける発話である
A 「え!私も20歳だよ!」
を
A 「え!私も20歳ですよ!」
のような丁寧体にすると、不自然ですね。
2は、間違いです。
A 「今、お時間ありますか?」
↓
B 「大丈夫ですよ」
↓
A 「この資料を見ていただきたいんですが…」
のような丁寧体が基調の会話で、依頼や勧誘等の聞き手に対して働きかける発話である
A 「この資料を見ていただきたいんですが…」
を
A 「この資料を見てほしいんだけど…」
のような普通体にすると、不自然ですね。
3は、間違いです。
A 「先日の案件、失注してしまいました」
↓
B 「そうなんですか?」
↓
A 「すごく悔しい…。次は頑張ります」
のような丁寧体が基調の会話で、話し手の心情をそのまま表明する独和的な会話は、普通体で現れることがあります。
4は、正しいです。
問5 談話標識として機能する慣用的な表現
解説 談話標識(ディスコースマーカー)
「すみません」
「あの…」
のような会話の切り出しや、
「でも…」
「しかし…」
のような反対意見の表明、
「うん」
「へえ」
のような相槌などが該当します。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1の
久しぶりですね。
は、単なる挨拶であり、「これから●●の話が始まる」という合図ではないですね。
1は、談話標識として機能していません。
2の
別の話ですが…
は、「これから●●とは違う話が始まる」という合図になっていますね。
2は、談話標識として機能する慣用的な表現として適当です。
3の
失礼します。
は、単なる挨拶であり、「これから●●の話が始まる」という合図ではないですね。
3は、談話標識として機能していません。
4の
ごちそうになります。
は、単なる挨拶であり、「これから●●の話が始まる」という合図ではないですね。
4は、談話標識として機能していません。