令和6年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅲ 問題2
の解説です。
執筆時点では、正式解答は公表されていません。
参考の1つとして、ご確認ください。
前の問題はこちら
問1 並列助詞「と」「や」「か」
解説 並列助詞
AさんとBさんとCさんが教室にいる。
AさんかBさんを呼んできてください。
結びつける名詞は、2つでも3つ以上でも構いません。
解説 並列助詞の例
【全部列挙型(すべて挙げる)】
「と」
ナスとピーマンと玉ねぎが苦手です。
【一部列挙型(一部を挙げる)】
「や・やら・だの・とか」
ナスやピーマンが苦手です。
【選択列挙型(選択的に挙げる)】
「か・なり」
煮るなり焼くなり好きにしてください。
【累加列挙型(重ね加えて挙げる)】
「に」
江戸時代の三大都市は、大坂に京に江戸だ。
その答えになる理由
「と」は、
ロックバンドだと、UNISON SQUARE GARDENとTHE KEBABSが好きです。
のように、該当するものをすべて挙げる「全部列挙型」の並列助詞です。
「や」は、
UNISON SQUARE GARDENの曲だと、Invisible Sensationや10% roll, 10% romanceが好きです。
のように、該当するものの一部を挙げる「一部列挙型」の並列助詞です。
「か」は、
次のライブで、摂食ビジランテかメカトル時空探検隊をやってほしいなあ。
のように、該当するものを選択的に挙げる「選択列挙型」の並列助詞です。
- 「と」 全部列挙
- 「や」 一部列挙
- 「か」 選択列挙
ですね。
3が正解です。
並列助詞を含む助詞全般については、以下の記事で詳しく解説しています。
こちらも、あわせてご確認ください。
問2 「XといいYといい」のような複合的な表現
その答えになる理由
例文を作って考えてみましょう。
○ 忙しいやらお金がないやらで、旅行できていない。
のように、「XやらYやら」の後に助詞「で」を付けることができていますね。
1は、間違いです。
○ 煮るなり焼くなり、好きにしてください。
のように、「XやらYやら」の文末に依頼のモダリティ形式を用いることができていますね。
2は、間違いです。
○ 忙しいだの何だのと言い訳ばかりしないで。
× 何だの何だのと言い訳ばかりしないで。
のように、「XだのYだの」のXとYに同一の疑問詞を列挙することができないですね。
3は、間違いです。
○ 自分やるのであれ人に依頼するのであれ、結果に責任を持ちなさい。
のように、「XであれYであれ」のXとYに「動詞+の」を列挙することができていますね。
4は、正しいです。
問3 スタイルによる並列の表現の使い分け
その答えになる理由
例文を作って考えてみましょう。
【くだけた表現】
ロビーと控室は、飲食禁止です。
【硬い表現】
ロビー及び控室は、飲食禁止です。
のように、「と」の硬い表現として「及び」を使うことがあります。
1は、間違いです。
【くだけた表現】
ロビーとか控室で、大きな声で話さないでください。
【硬い表現】
ロビーや控室で、大きな声で話さないでください。
のように、「や」のくだけた表現として「とか」を使うことがあります。
2は、正しいです。
「と」は、
私は、ナスとピーマンが苦手です。
のように、該当するものをすべて挙げる「全部列挙型」の並列表現です。
一方「または」は、
水曜または金曜なら、予定が空いています。
のように、該当するものを選択的に挙げる「選択列挙型」の並列表現です。
表せる内容が違うため、スタイルによって両者を使い分けることはできません。
3は、間違いです。
「や」
この会議には、部長や課長が出席します。
のように、該当するものの一部を挙げる「一部列挙型」の並列表現です。
一方「並びに」は、
この会議には、部長並びに課長が参加します。
のように、該当するものを重ねて挙げる「累加列挙型」の並列表現です。
表せる内容が違うため、スタイルによって両者を使い分けることはできません。
4は、間違いです。
問4 「~たり~たり」を用いた文
その答えになる理由
例文を作って考えてみましょう。
○ 一緒に勉強したり、買い物に行ったりしよう。
のように、「~たり」を用いた従属節を含む場合に、主節に勧誘の表現を伴うことができます。
1は、正しいです。
○ 私が家事をしたり、育児をしたりしているときに、スマホばかり触っていないで。
× 私は家事をしたり、育児をしたりしているときに、スマホなかり触っていないで。
のように、「~たり」を用いた従属節内では、主題の「は」を用いることができません。
2は、間違いです。
○ 一緒に勉強したり、買い物に行ったりしました。
× 一緒に勉強しましたり、買い物に行ったりしました。
のように、主節の文末が丁寧体の場合に「~たり」の前で丁寧体を使うことはできません。
3は、間違いです。
仕事をしたり、遊びに行ったりの毎日です。
のように、「~たり~たり」の後に「の」を伴って名詞を修飾することができます。
4は、間違いです。
問5 並列を表すテ形と連用形の文に共通するルール
その答えになる理由
例文を作って考えてみましょう。
【テ形】
図書館に行って、本を借りた。
↓
○ 図書館に行ってね、本を借りた。
【連用形】
図書館に行き、本を借りた。
↓
× 図書館に行きね、本を借りた。
のように、テ形の直後に「ね」を後接することはできますが、連用形の直後だと不自然ですね。
1は、間違いです。
【テ形】
図書館に行って、本を借りた。
【連用形】
図書館に行き、本を借りた。
のように、連用形に比べて、テ形の方が話し言葉的ですね。
2は、間違いです。
【テ形】
姉は医者になって、妹は弁護士になった。
【連用形】
姉は医者になり、妹は弁護士になった。
のように、いずれも従属節と主節の主語が違っていても問題ないですね。
3は、間違いです。
【テ形】
姉は医者になって、妹は弁護士になった。
↓
○ 妹は弁護士になって、姉は医者になった。
【連用形】
姉は医者になり、妹は弁護士になった。
↓
○ 妹は弁護士になって、姉は医者になった。
のように、主節と従属節を入れ替えても意味が変わらないですね。
4は、正しいです。