令和6年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅲ 問題3
の解説です。
執筆時点では、正式解答は公表されていません。
参考の1つとして、ご確認ください。
前の問題はこちら
問1 「と」や「って」以外の引用形式
解説 引用節
先生から、過去問を重点的に取り組むように言われた。
私は、文法の中でも「形態論」が1番面白いと思っている。
引用節で述語にくるのは、
- 言う
- 伝える
- 感じる
- 思う
- 指示する
などです。
また、引用節の部分は、
先生から、「過去問を重点的に取り組む」ように言われた。
私は、「文法の中でも『形態論』が1番面白い」と思っている。
のように「 」で示されることがあります。
その答えになる理由
日本語教育能力検定試験に合格するには、過去問を攻略することが重要だと言われている。
を話し言葉的にしたものが
日本語教育能力検定試験に合格するためには、過去問を攻略することが重要だって言われている。
です。
この「と」「って」以外に引用節を作れるものがどれかを見ていきましょう。
述語部分に
- 言う
- 伝える
- 感じる
- 思う
- 指示する
などが使われ、発言などとして「」でくくることができるのが引用節です。
「試験に合格す」べく一生懸命勉強した。
「べく」は、文自体は自然ですが、「」をつけてみると引用節ではないことがわかります。
1は、引用形式として不適当です。
「あたかも自分が正しい」みたいに振る舞っている。
「みたいに」は、文自体は自然ですが、「」をつけてみると引用節でないことがわかります。
2は、引用形式として不適当です。
先生に「教室で静かに待っている」ように言われた。
「ように」は、「」をつけてみると先生の発言をそのまま書き写した引用節であることがわかります。
3は、引用形式として適当です。
もっと「上級生」らしくしなさい。
「らしく」は、文自体は自然ですが、「」をつけてみると引用節でないことがわかります。
4は、引用形式として不適当です。
引用節を含めた補足節の種類については、以下の記事で詳しく説明しています。
こちらも、あわせてご確認ください。
問2 直接引用と間接引用の区別
解説 直接引用
「明日は、修学旅行です。しっかりと荷物を確認をして、早く寝るようにしましょう」と先生が言っていた。
解説 間接引用
明日は修学旅行に向けて、荷物を確認して、早く寝るように先生が言っていた。
その答えになる理由
例文を作って考えてみましょう。
「私が責任者の田中です」と男性が名乗った。
「私が後の処理をします」と田中さんが発言した。
のように、直接引用の引用節内で、「です/します」などの敬体表現を使うことができますね。
1は、間違いです。
「早く寝ろ」と父に言われた。
「早く寝なさい」と父に言われた。
のように、直接引用の引用節内で、「しろ/しなさい」などの命令文を使うことができますね。
2は、間違いです。
「明日は学校が休みだよ」と友だちが言っていた。
「明日は学校が休みだね」と友だちが言っていた。
のように、直接引用の引用節内では、「よ/ね」などの対人表現を使うことができますが、
明日は学校が休みだと友だちが言っていた。
のように、間接引用の引用節内では、これらが省略されますね。
3は、正しいです。
Aさんに「明日は祝日で学校が休みだね。どこかに行くの?」と聞かれた。
のように、「だ/する」は、直接引用の引用節内でも
Aさんに、明日の祝日の休みにどこかに行くのかを聞かれた。
のように、間接引用の引用節内でも使うことができます。
4は、間違いです。
問3 述語動詞によっては引用節が必須でない場合
その答えになる理由
「引用節が必須ではない場合」なので、引用節部分を削って文が成り立つかを見ていきましょう。
× 学生は、打ち明けた。
動詞「打ち明ける」の補語がなくなり、文が成立しないですね。
1は、引用節が必須です。
○ 花子は、泣き出した。
動詞「泣き出す」は、自動詞のため、補語である引用節がなくても文が成立しますね。
2は、引用節が必須ではありません。
これが正解です。
× 先輩は、語った。
動詞「語る」の補語がなくなり、文が成立しないですね。
3は、引用節が必須です。
× 太郎は、思った。
動詞「思う」の補語がなくなり、文が成立しないですね。
4は、引用節が必須です。
問4 「と言っている」と伝聞の「そうだ」 の使い方の比較
その答えになる理由
例文を作って考えてみましょう。
Aさんが「Bさんがミスをした」と言っている。
では、発言の主体「Aさん」が主語として明示されていますね。
1は、正しいです。
Aさんが「彼が犯人だ」と言っている。
では、引用節内で人称代名詞「彼」が使われていますね。
2は、間違いです。
○ Aさんが「Bさんがミスをして部署全体が残業になったんだ」と言っている。
のように、「言っている」では、発話された形式を聞いたとおりに伝えることができます。
一方、
× Aさんが「Bさんがミスをして部署全体が残業になったんだ」そうだ。
のように、「そうだ」では、発話された形式をそのまま記載すると不自然になってしまいますね。
3は、間違いです。
○ 明日は、天気が良いそうだ。
のように、「そうだ」は情報源を明示しなくても、使うことができます。
4は、間違いです。
問5 「と聞く。」と「と思う。」の人称の制約
その答えになる理由
例文を作って考えてみましょう。
× 「私は野球が得意だ」と聞く。
のように、「と聞く。」の場合は、一人称主語を「は」で明示することができません。
一方、
○ 「私は野球が得意だ」と思う。
のように、「と思う。」の場合は、一人称主語を「は」で明示することができます。
また、
○ 「彼は野球が得意だ」と聞く。
○ 「彼は野球が得意だ」と思う。
のように、「と聞く。」「と思う。」ともに、三人称主語を「は」で明示することができます。
2が正解です。