現職の日本語教師が経過措置を受ける場合、「登録日本語教員」取得のために必要な基礎試験が講習に置き換えられる場合があります。
この記事では、どのような人が対象で・どのような講習を受けるのかについて解説しています。
そもそも登録日本語教員って…?という場合は、まずこちらからご確認ください。
国家資格「登録日本語教員」の創設で現職の日本語教師はどうなる?資格取得の経過措置・移行期間を徹底解説!
登録日本語教員の「経験者講習」とは?
経験者講習は、現職者が新制度に移行するための「経過措置」の1つ
現職者がスムーズに「登録日本語教員」の資格取得が行えるようにするための「経過措置」の1つとして、「経験者講習」が設定されています。
令和6(2024)年4月1日に「日本語教育機関認定法」が施行され、認定日本語教育機関で日本語を教えるためには、国家資格「登録日本語教員」が必要になります。
基本的には、
にあるように、
基礎試験+応用試験
というステップを踏まなければなりません。
ただし、制度が変わったからといって、日本語学校のような法務省告示日本語教育機関やそれに準ずる機関で日本語教師をしている現職者へ「ゼロから登録日本語教員を目指してくださいね☆」だと…あまりに酷ですよね。
制度移行にあたり、現職者がスムーズに「登録日本語教員」の資格取得が行えるように経過措置が設定されており、「経験者講習」はその1つです。
経験者講習の対象となる「現職」とは?
経験者講習などの経過措置の対象となる「現職」は、
平成31年4月1日(法施行5年前)~令和11年3月31日(法施行5年後)の間に法務省告示機関で告示を受けた課程、大学、認定日本語教育機関で認定を受けた課程、文部科学大臣が指定した日本語教育機関(認定を受けた日本語教育機関が過去に実施した課程)で日本語教員として1年以上勤務した者
に該当する人のことです。
- いつ:平成31(2019)年4月1日~令和11(2029)年3月31日の間に
- どこで:法務省告示日本語教育機関またはそれに準ずる日本語教育機関で
- どれくらい:1年以上日本語教師をしていた者
が対象ですね。
この「1年以上」は、
Q158. 経過措置の要件のうち、現職者の要件である「1年以上日本語教育課程
日本語教育機関認定法 よくある質問集【令和5年12月28日公開版】
を担当した経験」とは1年のうちにどの程度勤務した実績が必要ですか。
A 「1年以上日本語教育課程を担当した経験」については、要件を満たす日本語教育機関において1年以上の雇用期間がある場合でも、平均して週1回以上授業を担当していたものが該当します。ただし、主任教員として日本語教育課程の編成や管理の業務を主たる業務としていた場合には、平均して週1回以上授業を担当していなかった場合でも経験に含めることができます。これに該当することについては、雇用主が在職証明書により責任を持って証明いただきます。なお、複数の日本語教育機関での経験を合計して1年以上となる場合でも要件を満たします。
にあるように、
- 平均して週1回以上授業を担当していれば該当
- 複数の日本語教育機関での経験であっても、合計して1年以上であれば該当
となります。
なぜ、経験者講習を実施する必要があるのか?
経験者講習は、当時学んだ教育内容と現在の教育内容のギャップを埋めるために実施されます。
平成以降の日本語教師養成において、大きなポイントになるのは、
です。
これらは、日本語教育能力検定試験でも頻出の分野であり、令和5(2023)年度試験では、どのように変わってきたかがガッツリと出題されました。
日本語教師として求められている内容の変遷を把握することができるので、ぜひ各報告の内容そのものを確認するようにしましょう。
経験者講習は、
- 学んだ当時の教育内容になく
- 現状(平成31年報告)では追加されている教育内容
を中心に、知識のギャップを埋めることを目的として実施されます。
経験者講習で学ぶ内容・研修時間
経験者講習の区分
経験者講習は、講習Ⅰ・講習Ⅱに分かれており、それぞれで学習する内容が異なります。
各ルートについては後述しますが、修了した養成課程・合格した日本語教育能力検定試験が
- 「平成12年報告」の教育内容をクリアしていない。
→ 講習Ⅰ・Ⅱの両方を受講しなければならない。 - 「平成12年報告」の教育内容はクリアしているが、「平成31年報告」の教育内容はクリアしていない。
→ 講習Ⅱだけ受講すればOK。
という内容になっています。
講習Ⅰで学ぶ内容
講習Ⅰは、平成12年報告で新たに追加された内容を中心に構成されています。
研修時間は、90分×5コマ+講習修了認定試験です。
登録日本語教員の経験者講習について
平成12年報告から、現在の教育内容である
- 社会・文化・地域
- 言語と社会
- 言語と心理
- 言語と教育
- 言語(旧:言語一般)
の5区分になりました。
平成12年報告で追加されたのが「社会・文化・地域」「言語と心理」の2区分です。
講習Ⅰでは、この2区分に含まれる各項目を学習していきます。
講習Ⅱで学ぶ内容
講習Ⅱは、平成31年報告で追加された内容および近年の情勢等の変化が大きい内容を中心に構成されています。
研修時間は、90分×10コマ+講習修了認定試験です。
登録日本語教員の経験者講習について
平成31年報告から、
- 日本語教師の資質・能力
- 日本語教育とICT
- 著作権
が教育内容として新たに追加されました。
また、時事的な知識や「日本語教育の参照枠」などの知識のアップデートが必要な項目が追加され、(1)~(50)の「必須の50項目」として提示されています。
講習Ⅱでは、これらの新しく追加された各項目を学習していきます。
経験者講習の対象となる現職者
経験者講習の対象となるのは、「必須の50項目」を履修していない現職者
経験者講習の対象となるのは、「必須の50項目」を履修していないD-1・D-2・E-1・E-2の現職者です。
登録日本語教員の資格取得に係る経過措置(案)
「必須の50項目」とは、平成31年報告に記載されている「日本語教師【養成】における教育内容」の項目のことです。
上記リンクのP43に一覧があるので、1度確認してみてください。
経験者講習は、当時学んだ教育内容と現在の教育内容のギャップを埋めるために実施されます。
この「現在の教育内容」に当たるのが、「必須の50項目」です。
D-1ルートの現職者
登録日本語教員の資格取得に係る経過措置(案)
D-1ルートの対象者は、
- 現職要件を満たす
- 修了した養成課程が「平成12年報告」の教育内容をクリアしている
(平成12年報告の教育内容はクリアしているが、平成31年報告の教育内容はクリアしていない) - 学士以上の学位を持っている
ですね。
「平成12年報告の教育内容はクリアしているが、平成31年報告の教育内容はクリアしていない」ので、受講するのは講習Ⅱのみです。
D-2ルートの現職者
登録日本語教員の資格取得に係る経過措置(案)
D-2ルートの対象者は、
- 現職要件を満たす
- 修了した養成課程が「平成12年報告」の教育内容をクリアしていない
(平成31年報告だけなく、平成12年報告以降の教育内容をクリアしていない) - 学士以上の学位を持っている
ですね。
「平成31年報告だけなく、平成12年報告以降の教育内容もクリアしていない」ので、講習Ⅰ・Ⅱ両方の受講が必要です。
E-1ルートの現職者
登録日本語教員の資格取得に係る経過措置(案)
E-1ルートの対象者は、
- 現職要件を満たす
- 平成14(2002)年度までの日本語教育能力検定試験に合格している
(平成31年報告だけなく、平成12年報告以降の教育内容をクリアしていない) - 学歴要件なし
ですね。
「平成31年報告だけなく、平成12年報告以降の教育内容もクリアしていない」ので、講習Ⅰ・Ⅱ両方の受講が必要です。
E-2ルートの現職者
登録日本語教員の資格取得に係る経過措置(案)
E-2ルートの対象者は、
- 現職要件を満たす
- 平成15(2003)年度から令和5(2023)年度までの日本語教育能力検定試験に合格している
(平成12年報告の教育内容はクリアしているが、平成31年報告の教育内容はクリアしていない) - 学歴要件なし
ですね。
「平成12年報告の教育内容はクリアしているが、平成31年報告の教育内容はクリアしていない」ので、受講するのは講習Ⅱのみです。
E-1・E-2ルートは、「いつの日本語教育能力検定試験に合格したか?」によって分かれています。
日本語教育能力検定試験は、昭和62年から年1回実施されているので、
- E-1ルート
昭和62(1987)年4月1日~平成15(2003)年3月31日の間に実施
→ 昭和62(1987)年度試験~平成14(2002)年度試験での合格 - E-2ルート
平成15(2003)年4月1日~令和6(2024)年3月31日の間に実施
→ 平成15年(2002)度試験~令和5年(2023)度試験での合格
です。
この区切りには意味があって、
上記試験のうち、特に昭和 62 年度から平成 14 年度に実施されたものについては、出題範囲に 「日本語教育のための教員養成について」(平成 12 年3月 30 日日本語教員の養成に関する調査研究協力者会議)で示された 16 下位区分のうち、「⑥異文化コミュニケーションと社会」、「⑪異文化教育とコミュニケーション教育」、「⑫言語教育と情報」が含まれていないものと思われる。このため、経過措置対象者への講習及び講習修了認定試験の中で、これらの知識・技能を補うこと、又はこれらの知識・技能を有することを確認することが適当である。
登録日本語教員に係る経過措置の検討のための民間試験の選定結果について
第 120 回日本語教育小委員会(R5.7.25)
がベースになっています。
- E-1ルートの期間に実施された日本語教育能力検定試験は、平成12年報告の教育内容をクリアしていない
- E-2ルートの期間に実施された日本語教育能力検定試験は、平成12年報告の教育内容はクリアしているが、平成31年報告の教育内容はクリアしていない
ということです。
養成課程で学んだ場合と同じく、平成31年報告での教育内容である「必須の50項目」とのギャップを埋める形で講習が実施されます。
経験者講習が始まるのはいつから?
経験者講習は、令和6(2024)年の夏頃からの実施が予定されています。
(実施時期)
登録日本語教員の登録申請の手引き 【令和5年12月28日公開版】
講習は、令和6年の夏頃からの実施を予定しており、具体的な申し込み方法については令和6年度以降にお知らせいたします。
文化庁国語課
経験者講習の実施方法
経験者講習は、オンデマンドで実施
経験者講習は、受講機会確保の観点から、自宅等で受講できるオンデマンドで実施されます。
決められた日に、大学や貸会議室にて…ではなく、インターネット上でのオンデマンド開催です。
経過措置が終わる令和11(2029)年3月31日までは、任意のタイミングで受講することができます。
視聴するだけではNG!講習修了確認試験の合格が必要
講習修了確認試験が実施され、講習内容定着の確認をもって講習修了となります。
当たり前ではありますが、規定時間の講座を視聴しただけではダメ!ということです。
講習Ⅰでは50問程度・講習Ⅱでは100問程度の修了試験が実施されます。
経験者講習の受講料
登録日本語教員の資格取得に係る経過措置(案)
講習Ⅰの受講料が8,800円・講習Ⅱの受講料が17,600円です。
どの経過措置ルートに該当するかによって、講習Ⅰの受講要否が異なります。
1つずつ確認してきましょう。
D-1ルートの場合の受講料
D-1ルートの場合の受講料は、講習Ⅱの17,600円です。
「平成12年報告の教育内容はクリアしているが、平成31年報告の教育内容はクリアしていない」ので、受講するのは講習Ⅱのみです。
D-2ルートの場合の受講料
D-2ルートの場合の受講料は、講習Ⅰ・Ⅱの26,400円です。
「平成31年報告だけなく、平成12年報告以降の教育内容もクリアしていない」ので、講習Ⅰ・Ⅱ両方の受講が必要です。
E-1ルートの場合の受講料
E-1ルートの場合の受講料は、講習Ⅰ・Ⅱの26,400円です。
「平成31年報告だけなく、平成12年報告以降の教育内容もクリアしていない」ので、講習Ⅰ・Ⅱ両方の受講が必要です。
E-2ルートの場合の受講料
E-2ルートの場合の受講料は、講習Ⅱの17,600円です。
「平成12年報告の教育内容はクリアしているが、平成31年報告の教育内容はクリアしていない」ので、受講するのは講習Ⅱのみです。
最後に
- 登録日本語教員の「経験者講習」とは?
- 経験者講習で学ぶ内容・研修時間
- 経験者講習の対象者
- 経験者講習が始まるのはいつから?
- 経験者講習の実施方法
- 経験者講習の受講料
について、解説してきました。
これ以外にも、一次情報をベースにした登録日本語教員の記事を多数掲載しています。
ぜひ、あわせてご確認ください。
-
【日本語教員施行試験】サンプル問題の解説!
-
アルク社の「NAFL日本語教員試験対策セット」ってどうなの?実際にテキストを見てレビューします!
-
未経験者は、どのように国家資格「登録日本語教員」を取得すべき?各資格取得ルートのメリット・デメリットを徹底解説!
-
登録できるのは、いつから?国家資格「登録日本語教員」の最新スケジュールを徹底解説!
-
国家資格「登録日本語教員」の創設で現職の日本語教師はどうなる?資格取得の経過措置・移行期間を徹底解説!
-
日本語教師の国家資格「登録日本語教員」とは?最新情報を徹底解説!
-
【2024(令和6)年11月17日実施】日本語教員試験とは?合格するための最新情報を徹底解説!