今回は、
✅ 全部否定・部分否定の解釈の基本
✅ 基本的な否定が部分否定を表す場合
✅ とりたて助詞「は」による部分否定
について、一緒に勉強していきましょう。
この記事以外にも、文法の記事を数多く掲載しています。
ぜひ、以下をブックマークしてご確認ください。
例文で学ぶ 日本語文法
前の記事はこちら
否定文の基礎
肯定・否定とは?
事態の成立を表すことを「肯定」・事態の不成立を表すことを「否定」と言います。
否定文は、基本的に述語に「ない」「ません」をつける否定形で表されます。
今から、学校に行く。
日曜なので、学校に行かない。
否定を表す基本的な形式
【動詞文】
走る ⇔ 走らない
走ります ⇔ 走りません・走らないです
【イ形容詞文】
美しい ⇔ 美しくない
美しいです ⇔ 美しくありません・美しくないです
【ナ形容詞文】
素敵だ ⇔ 素敵で(は)ない
素敵です ⇔ 素敵で(は)ありません・素敵で(は)ないです
【名詞文】
先生だ ⇔ 先生で(は)ない
先生です ⇔ 先生で(は)ありません・先生で(は)ないです
普通体の否定の場合、述語の種類に関わらず、「ない」を含む形で表されます。
丁寧体の否定の場合、動詞述語だと「ません」「ないです」、イ形容詞・ナ形容詞・名詞述語だと「ありません」「ないです」によって表されます。
全部否定・部分否定の解釈の基本
全部否定・部分否定とは?
全数量を表す語を全面的に否定するものを「全部否定」・部分的に否定するものを「部分否定」と言います。
① すべて正しくない。
② すべて正しくないのではない。
どちらも「すべて」という全数量を表す語が含まれていますが、表している内容は異なります。
①は100%間違いですが、②の間違いの割合は100%未満ですね。
①が「全部否定」・②が「部分否定」です。
ほかの例文も見てみましょう。
① 全員間に合わなかった。
② 全員間に合ったわけではない。
どちらも「全員」という全数量を表す語が含まれていますが、表している内容は異なります。
①は全員遅刻ですが、②は時間通りに来ることができた人もいますね。
①が「全部否定」・②が「部分否定」です。
「のではない」「わけではない」による否定
「のではない」「わけではない」が含まれる否定文は、「すべて・全員」のような全数量を表す語があっても部分否定の解釈となります。
「のではない」「わけではない」については、以下の記事で解説しています。
なぜ、「のではない」「わけではない」を含むと部分否定になるかを考えていきましょう。
学校に行かない。
この絵は美しくありません。
のような「ない」「ません」が付くだけの基本的な否定は、述語の表す事態の不成立を表しています。
↑の例文であれば、「行く」「美しい」の否定です。
すべて正しくないのではない。
全員間に合ったわけではない。
「のではない」の「の」・「わけではない」の「わけ」には、前部のひとかたまりを名詞化する働きがありました。
ひとかたまりになっているので、否定の作用も「正しい」・「間に合った」だけでなく、「すべて正しい」「全員が間に合った」にまで及んでいます。
否定の作用が複数の語にあるので、どこが特に否定されているかを見てみると…
すべて正しくないのではない。
全員間に合ったわけではない。
「すべて」「全員」の部分ですね。
全数量を表す語が特に否定されることで、「すべてではない」「全員ではない」という解釈をすることができます。
このような否定の作用が及ぶ範囲のことを「スコープ」・その中で特に否定される部分を「フォーカス」と言います。
以下の記事で解説しているので、あわせてご確認ください。
とりたて助詞「は」による部分否定
① すべて正しくない。
② すべて正しくないのではない。
① 全員間に合わなかった。
② 全員間に合わなかったわけではない。
のように、「のではない」「わけではない」が含まれると部分否定になることを解説してきました。
それでは、↓は全部否定・部分否定のどちらでしょうか?
すべて正しくはない。
述語に「ない」「ません」が付く基本的な否定の形式で、「すべて」という全数量を表す語が含まれています。
ただし、内容を見てみると…
正しいものは100%未満なので、「部分否定」ですね。
この例文が部分否定になる原因は、取り立て助詞の「は」です。
すべて正しくない。
であれば、「正しい」だけを否定していますが、
すべて正しくはない。
だと、否定のスコープが「すべて正しく」まで広がります。
その中でも、
すべて正しくはない。
「すべて」が特に否定されていますね。
この部分がフォーカスです。
このように、取り立て助詞「は」を含むことでスコープが広がるため、「ない」「ません」といった基本的な否定の形式であっても部分否定として解釈することができます。
また、取り立て助詞「は」は
すべて回収はしない。
何から何まで美しくはない。
のように述語部分に含まれることもあれば、
すべては回収しない。
何から何までは美しくない。
のように全数量を表す語に付くこともあります。
こちらの方が「すべて」「何から何まで」が取り立てられているので、部分否定であることがわかりやすいですね。
参考書籍
今回は、
✅ 全部否定・部分否定の解釈の基本
✅ 基本的な否定が部分否定を表す場合
✅ とりたて助詞「は」による部分否定
について、解説してきました。
を主に参考にしています。
さらに詳しく勉強したい方は、ぜひ手に入れてみてください。
また、この記事以外にも、文法の記事を数多く掲載しています。
ぜひ、ブックマークしてご確認ください。