令和元年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅰ 問題6
の解説です。
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問1 制限作文アプローチ
解説 制限作文
「制限作文」とは、既習項目の定着・正確な運用を目的として、特定の文型や表現を使って書かせる作文のことです。
この「制限作文」を用いる指導法を「制限作文アプローチ」と言います。
何が書かれているかという内容面よりも、文型や表現が正しく使われているかという形式面が重視されます。
フリーズが提唱した「オーディオ・リンガル・メソッド」の考え方がベースになっています。
解説 グアン・メソッド (サイコロジカル・メソッド)
「グアン・メソッド」とは、文法訳読法への批判から始まったナチュラル・メソッドのうちの1つです。
●発達心理学を理論背景とし、幼児の母語習得過程を外国語教育に適応させていること
●シリーズと呼ばれる連続した動作を示す文によって課が構成されること
が特徴です。
「サイコロジカル・メソッド」とも言います。
解説 オーディオ・リンガル・メソッド
「オーディオ・リンガル・メソッド」とは、フリーズが提唱した、「行動主義心理学」「アメリカ構造主義言語学」を理論背景とする教授法のことです。
●音声言語を優先すること
●語彙数を制限して、音韻と文法の習得に重点を置くこと
●入門期から話すことを重視すること
●「ミニマム練習」や「パターン・プラクティス」など、反復や言語形式の操作のための練習を多く取り入れたこと
などが特徴です。
日本では「オーラル・アプローチ」の名称で使われることもあります。
解説 コミュニカティブ・アプローチ
「コミュニカティブ・アプローチ」とは、コミュニケーション能力の獲得・養成を目標として外国語教授法の総称です。
文法や文型の反復練習中心である「オーディオ・リンガル・メソッド」への批判から発展しました。
解説 ナチュラル・アプローチ
「ナチュラル・アプローチ」とは、
●意味に焦点を当てた聴解
●学習者が自然に話し出すまでは発話を強制しない
●学習者の発話に誤りがあっても不安を抱かせないために直接的な訂正は行わない
などの特徴を持った「成人」のための外国語教授法です。
その答えになる理由
「制限作文アプローチ」は、特定の文法や文型を使わせる作文指導法です。
音声や言語形式を正確にするために反復練習を行う「オーディオ・リンガル・メソッド」の影響を受けています。
2が正解です。
問2
その答えになる理由
設問では、
「AとBは両者とも…」と共通点を述べつつ、「…という点からみると」とある観点から見た「比較・対照」を行っています。
2が正解です。
ちなみに、3の「前方照応」の「照応」とは、物事や文章などで2つのものが互いに対応することを言います。
代名詞の説明でよく出て来ます。
「この方が佐藤さんです。彼女は、小学校の先生をしています」
のように前に出てきたものを指すのが「前方照応」、
「こんなことがあるなんて驚きました。直前に覚えた単語がテストで出てきたんです」
のように後ろに出てきたものを指すのが「後方照応」です。
問3 プロセス・アプローチ
解説 プロセス・アプローチ
「プロセス・アプローチ」とは、学習者が作文を仕上げていく過程を重視した作文指導法のことです。
書く行為においては、推敲・修正の繰り返しが思考を深め、新たな発見を促し、それが文章の再構築を生み出すという考え方に基づきます。
その答えになる理由
「推敲を繰り返し」がポイントですね。
3が正解です。
問4 引用
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1は、引用部分には誤りはありません。
「学校教育における重要な点は、子供たちに学習を押し付けないことだ」のように、述語部分に不足があります。
2は、引用部分には誤りはありません。
「川崎市は、重工業が発展した地域にとして知られているということである」のように「とって」と「として」の混同が見られます。
3は、引用部分には誤りはありません。
「日本人は自分の意見をうまく表す、そういう機会が少なかったのだと思われる」のように「ああいう」と「そういう」の混同が見られます。
4は、引用部分に誤りがあります。
「山口によれば、『専門家になるためには大学時代が重要だ』と指摘している」のように引用部分の指導が必要です。
問5 ピア・レスポンス
解説 ピア・レスポンス
「ピア・レスポンス」とは、学習者が作文の内容を教師に見てもらうだけでなく、学習者同士で意見を言い合い推敲していく学習法のことです。
「制限作文アプローチ」などが学習者の考えよりも文の形式を重視していたことへの批判から生まれました。
その答えになる理由
1がそのままですね。
これが正解です。