令和元年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅲ 問題6
の解説です。
お手元に、問題冊子をご用意の上でご確認ください。
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問1 「~ていく」の用法
解説 「~ていく」の用法
「~ていく」は、話し手の発話時の位置から離れていく「遠心的方向性」を持つ動作・出来事に使います。
反対に、話し手の発話時の位置の方へ向かってくる「求心的方向性」を持つ動作・出来事に使うのは「~てくる」です。
「~ていく」「~てくる」は、前に来る動詞の声質によっていくつかの用法に分類できます。
① 「着る」「履く」などの動詞に接続する場合
「着ていく」であれば、「着る」という動作の結果の状態を伴って移動することを表します。
「雨だったので、長靴を履いていった」
「寒かったので、コートを着ていった」
※ 「持っていく」「連れていく」もこの用法であると考えられます。
② 「買う」「食べる」などの一般的な動作を表す動詞に接続する場合
「買っていく」であれば、「買う」などの動作の後に生じた移動を表します。
「お土産を買っていった」
③ 「増える」「変わる」などの変化動詞に接続する場合
「人口が増えてきた」であれば、段階的に変化が起きていることを表します。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1 「散っていく」は、③「段階的な変化」の用法です。
2 「増えていく」は、③「段階的な変化」の用法です。
3 「連れていく」は、①「動作の結果の状態を伴っての移動」の用法です。
4 「食べていく」は、②「動作の後に生じた移動」の用法です。
「持っていく」は、①「動作の結果の後に生じた移動」の用法のため、3が正解です。
問2 自己評価
その答えになる理由
「授業の目標を再確認し、目標が達成できたかどうかチェックリストで自己評価をする」とあります。
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
学習者が自身の学習達成度を把握することはできますが、他の人と比べているわけではないので、他者との達成度の違いは認識できません。
1が間違いです。
チェックリストにより、学習者自身がまだ十分できていない点を認識し、今後の学習目標の構築につなげることができます。
2は間違っていません。
チェックリストにより、学習者が自身の学習成果を把握し、学習動機を高めることができます。
3は間違っていません。
授業の目標を再確認することで、学習者自身が学習に責任感を持つ習慣ができます。
4は間違っていません。
1が正解です。
問3 教案作成上の留意点
その答えになる理由
明らかに3が違いますね。
これが正解です。
すべてを事前に考えておくのは難しいですが、できる限り学習者の発話の内容は想定しておくべきです。
問4
その答えになる理由
本文中に答えが書いてあります。
③の活動が花見を計画する会話の聴解になっていることまでは合っています。
ただ、それだけでスキーマが活性化しない…は極論かと思います。
1は間違いです。
④の中では「~ていく」のみで「~てくる」を教えているかは読み取れません。
ただ、それだけで文法の理解が深まらない…は極論かと思います。
2は間違いです。
⑤の活動の中でモデル会話を覚えさせています。
3は間違いです。
4がその通りです。
⑦で自己評価で終わってしまっており、授業中にインターアクションの機会が作れていません。
問5 改善方法
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
複数の考え方は、積極的に取り入れていくべきかと思います。
1は間違いです。
取り組むべき課題は絞った方が、具体的な解決方法を考えることができます。
2は間違いです。
社会や言語教育観の変化には、敏感になっておくべきかと思います。
3は間違いです。
4は何も問題ありません。
これが正解です。