「日本語教育能力検定試験なんて、役に立たない!」という主張は、昔から一定数見られます。
どこまでが妥当なのか?を具体的に確認していきましょう。
日本語教育能力検定試験は、何の役に立たないのか?
実際に授業をする上では、日本語教育能力検定試験の合格は役に立たない?
この主張は、そもそもの論点がズレていることが多いです。
日本語教育能力検定試験の目的は、「日本語教員となるために学習している方・日本語教育に携わっている方に必要とされる基礎的な知識・能力を検定すること」です。
日本語教育能力検定試験の合格は、あくまで入り口であり、即戦力の証明ではありません。
実際に日本語を教えるために、教科書の内容・文型や表現の違い・生徒への具体的な指導方法などの理解などが必要なのは、間違いないでしょう。
ただし、これらの内容を試験内容で測ることができない=日本語教育能力検定試験は無意味!ではありません。
基礎知識がなければ、新しい知識を身につけたり、各種理論を理解して実践したりするハードルがグッと上がります。
変化に対応していくことが求められる日本語教師にとって、知識⇔実践の両輪を動すことの重要性は言うまでもありません。
実際に授業をする上で、日本語教育能力検定試験を受ける中で身につけた知識を「そのまま」使う機会は少ないかもしれませんが、
- 知識のベースがあることで、新しい知識・理論を身につけやすくなる
- 知識のベースがあることが、日本語教師同士の共通言語になりうる
- 知識のベースがある方が、そのクラス・その学校でしか通用しない汎用性の低い日本語教師になりにくい
ことなど、日本語教育能力検定試験に合格している・していないであれば、前者の方が日本語教師としての伸びしろが大きくなるであろうことは、大きなメリットだと言えます。
日本語教師の資格としては、日本語教育能力検定試験の合格は役に立たない?
2024年度からの新制度で、文部科学省による認定を受けた「認定日本語教育機関」で日本語を教えるためには、国家資格「登録日本語教員」の取得が必要です。
この登録日本語教員の資格取得には、「日本語教員試験」の合格が必要であり、日本語教育能力検定試験の合格は資格要件に含まれていません。
現職者がスムーズに資格取得できるように設定されている経過措置においても、考慮されるのは「2023(令和5)年度試験」の合格までです。
2024(令和6)年度以降に日本語教育能力検定試験に合格しても、国家資格「登録日本語教員」を取得する上では関係ありません。
しかし、資格要件としての価値がゼロになるかというと、そうではないのではないかと思います。
もともと、日本語教育能力検定試験の合格は、法務省告示機関で日本語を教えるためにいずれかをクリアしなければならない要件の1つでした。
法務省告示機関とは、在留資格「留学」による留学生を受け入れることができる教育機関のことです。
「留学」以外の教育機関で日本語を教える分には特に要件がないのですが、法務省告示機関だけは
- 大学で日本語教育を専攻する
- 日本語教育能力検定試験に合格する
- 学士以上の学位があり、文化庁に認められた420時間以上の養成課程を修了する
のいずれかを満たさなければなりません。
最終学歴が4大卒以外であったり、独学で臨まなければならない場合であったりの唯一の選択肢が「日本語教育能力検定試験の合格」です。
ただし、法務省告示機関以外でも、日本語教師の募集要項にこれらの条件が含まれていることがあります。
法務省告示機関は、新制度において順次「認定日本語教育機関」に変わっていきます。
そのため、留学生相手に日本語を教えたい場合には、資格要件として「日本語教員試験」の合格が必要です。
「留学」以外の「生活」「就労」分野では、認定日本語教育機関になることへの強制度が「留学」ほど高くありません。
新制度で認定日本語教育機関になる場合もあれば、ならない場合もあります。
- 認定日本語教育機関になる場合 → そこで日本語を教えるのに「日本語教員試験」の合格が必要
- 認定日本語教育機関にならない場合 → そこで日本語を教えるのに必要な要件は、各自異なる
ので、認定日本語教育機関にならないのであれば、日本語教育能力検定試験の合格がないと応募できない可能性もありうるということです。
ポイントは、「どこで日本語を教えたいか?」ですね。
認定日本語教育機関で日本語を教えるための「登録日本語教員」を取得するのであれば、これから日本語教育能力検定試験に合格しても、資格要件には関係ありません。
認定日本語教育機関以外で日本語を教える上では、これまで通り、日本語教育能力検定試験の合格が応募の要件に含まれる可能性があります。
結局、日本語教育能力検定試験は受けた方が良いの…?
2023(令和5)年12月10日に、新制度における「日本語教員試験」の試行試験が実施されました。
試行試験の結果を踏まえて内容がブラッシュアップされていきますが、2024(令和6)年から実施される本試験でいきなり「これだ!」という内容になるのは、なかなか難しそうです。
そうなると、「基礎知識がある」ことの証明としての日本語教育能力検定試験の価値は、まだなくなっていかないのではないでしょうか?
また、日本語教育能力検定試験は、現行の法務省告示日本語教育機関で日本語教師になるための資格要件の1つですが、法務省告示日本語教育機関以外でも「日本語教育能力検定試験の合格」を募集要項に挙げている場合があります。
資格要件としての価値が完全になくなるのは、まだまだ先になりそうですね。
大切なのは、試験のための学習にしないこと
意識するのは、役に立たないと言われてしまうような学習方法を取らないことです。
試験のためだけの学習は、知識を活かした授業につなげることができないだけでなく、何よりも学習自体が楽しくありません。
また、どの業界でもあることなのですが、日本語教育能力検定試験においても、良い・悪いの判断ができない段階の初学者をターゲットにして、内容の薄いコンテンツ購入させたり、再生回数で広告料を稼いだりといったビジネスが存在します。
これらの情報は限られた問題では役立つこともありますが、多くの場合は本質から外れているので、後々活きてくることがほとんどありません。
怪しげなアカウントの発信は、鵜呑みにしないようにしましょう。
最後に
この記事では、
- 日本語教育能力検定試験は、何の役に立たないのか?
- 結局、日本語教育能力検定試験は受けた方が良いの…?
- 日本語教育能力検定試験の学習で大切なこと
について、解説してきました。
これ以外にも、日本語教育能力検定試験の記事を多数掲載しています。
ぜひ、あわせてご確認ください。
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