令和4年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅰ 問題4
の解説です。
お手元に、問題冊子をご用意の上でご確認ください。
前の問題はこちら
問1 コース設計
解説 コース設計(コース・デザイン)
さまざまなやり方がありますが、
ニーズ/レディネス調査・分析
コースの目標設定
シラバス・デザイン
カリキュラム・デザイン
といった流れで計画を立てていくことが多いです。
解説 ニーズ調査・分析
- どのような場面で使う日本語を学びたいか?
- どのレベルまでの習得を目指したいか?
- 4技能(読む・聞く・書く・話す)のうち、特に必要とされるのはどれか?
などを把握することを目的としています。
解説 レディネス調査・分析
外的条件 | 学習者の国籍や母語 学習者の時間的・経済的制約 など |
内的条件 | 外国語学習の経験有無 既習者に対しての学習総時間数 など |
を把握することを目的としています。
その答えになる理由
コース設計において、まず最初に行うのは「スタート時点で学習者がどのような状態から、どうなりたいのか」を把握することです。
「どのような状態か」を把握するための作業が「レディネス調査」、「どうなりたいか」を把握するための作業が「ニーズ調査」です。
次に、調査で得た情報を基にして「目標言語が母語話者にどう使われているか?」を調査します。
該当するのは、「目標言語調査」です。
「なぜ、目標言語の調査が1番最初ではないの…?」となるかもしれませんが、それは「学習者のニーズと合致している部分」のように限定しないと調査量が非常に膨大になってしまうからです。
「レディネス調査」「ニーズ調査」のあとに行う方が現実的ですね。
ここまでの情報が出揃うと、ようやく「コースの最終ゴール」を決めることができます。
いわゆる「到達目標」です。
- 「レディネス調査」により、学習者の状況を把握
- 「ニーズ調査」により、学習者の求めている内容を把握
- 各調査により、現実的な範囲に限定して「目標言語調査」を実施
- 諸々の情報を基にして、「到達目標」を設定
という流れですね。
ここまでできたら、あとは細かい部分の設定です。
「シラバス・デザイン」にて具体的な教授項目を、「カリキュラム・デザイン」にて学期・月・週などを単位にして学習時間・学習内容の配分を決めていきます。
学習者がどのような状態で・どうなりたいか?
目標言語が母語話者にどう使われているか?
そのコース終了時に、学習者がどうなっているか?
具体的にどのような項目を教えるか?
学期・月・週などを単位にして学習時間・学習内容をどう配置するか?
選択肢を見ると、2が最も適当ですね。
これが正解です。
問2 到達度テスト(アチーブメント・テスト)
解説 到達度テスト(アチーブメント・テスト)
中間テスト
期末テスト
などが該当します。
その答えになる理由
4が「到達度テスト(アチーブメント・テスト)」の内容そのままですね。
これが正解です。
ほかの選択肢でよく出てくるのは、2の内容です。
クラス分けを目的として、既習者を対象に学習者の言語能力を測定するテストを「プレースメント・テスト」と言います。
問3 標準偏差
解説 標準偏差
データのばらつきが大きいと標準偏差も大きく、ばらつきが小さいと標準偏差も小さくなります。
令和4年度の日本語教育能力検定試験の結果だと、
試験区分 | 標準偏差 |
試験Ⅰ | 11.9 |
試験Ⅱ | 5.6 |
試験Ⅲ | 7.8 |
なので、
- 試験Ⅱは、標準偏差が小さいので、点数のばらつきも小さい。
- 試験Ⅰは、標準偏差が大きいので、点数のばらつきが大きい。
ということがわかりますね。
その答えになる理由
1が「標準偏差」の内容そのままですね。
これが正解です。
問4 潜在的カリキュラム(隠れたカリキュラム)
解説 潜在的カリキュラム(隠れたカリキュラム)
この学校に通っている自分たちはエリートだ。
この学校に通っている自分たちは落ちこぼれだ。
のような意識が根付いている場合に、「●●の潜在的カリキュラムがある」といった使い方をされます。
日本語教育に限定されず、教育学全般(特に教育社会学)」で使用される用語です。
その答えになる理由
学校が決めたルールや学習内容などは「潜在的カリキュラム(隠れたカリキュラム)」に該当しません。
1・2・4は不適当ですね。
3が正解です。
問5 各授業の教案を作成する際の留意点
その答えになる理由
来ました!サービス問題です!
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1のような取り組みを行うことで、教師側でのもたつきを減らすことができます。
授業進行をスムーズにするための内容なので、1は適当です。
2のような取り組みを行うことで、やりきれなくて次の授業に持ち越し…といった事態を避けることができます。
授業進行をスムーズにするための内容なので、2は適当です。
3のような取り組みを行うことで、学習者が教室活動に入るまでの時間を短縮することができます。
授業進行をスムーズにするための内容なので、3は適当です。
4は、前半は合っていますが後半が間違いです。
学習者の能力差に対応するためには、「抽象的」ではなく「具体的」な表現にした方が良いですね。
これが不適当な例です。